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【千葉魂】 どんな場面でも全力疾走を デスパイネが見せた懺悔

千葉日報オンライン 6/29(水) 11:51配信

 打撃練習を見守る指揮官のところに、おもむろに駆けつけた。帽子を取ると、頭を下げた。その瞬間、伊東勤監督は困惑した。巨体のデスパイネ外野手が体を小さくして、神妙な表情で自分の前で立ち尽くしている。通訳が終わると、やっと状況を理解した。そして笑顔で握手を求めた。

 「オレも長いこと、プロ野球の世界にいて、監督もやっているけど、初めての経験だったなあ。外国人選手があのプレーで自分から謝りに来るなんてね」

 デスパイネがどうしても謝罪をしたかった場面。それは浅いファウルフライを打ち、明らかにファウルゾーンで打球が処理され、アウトとなった状況。誰もが、ファウルフライアウトと思ったとはいえ、そこで諦めてしまい、全力疾走を怠った自分が許せなかった。何よりも指揮官が若手野手などにいつも全力プレーを求め、厳しく接していることを知っていた助っ人は、チームの主砲である自分が、模範となるべき姿を見せることができなかったことを悔やみ、責めた。だから、一夜明け、グラウンドに顔を出すや謝った。「二度とあのような態度はとらない。申し訳なく思う。たとえ、どんな打球であれ、諦めずに全力疾走をしなくてはいけない」と頭を下げ、自らに言い聞かせるように誓った。

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 「打球としては完全なファウルゾーンでのファウルフライ。だから、責めるつもりは全くなかった。でも、そうやって、わざわざ自分から言ってきてくれた心意気がうれしかったね。彼は本当に真面目だし、チームのことを考えてくれている。いろいろな面で気を抜くことはないし、いつも全力でチームプレーに徹してくれている。心強い存在だよ」

 伊東監督はそう言って目を細めた。試合前のアップを一生懸命に取り組む背番号「54」の背中を頼もしそうに見つめた。交流戦明けの試合のない練習日に、こんなこともあった。「疲れもあると思うから、別メニューで調整してもいいよ」。そう声を掛けた指揮官に、デスパイネは首を横に振った。そして、ナバーロ内野手と二人、率先して全体練習に加わるとアップから最後のメニューまで全力で取り組んだ。

 それは、伊東野球が外国人選手を含めたチーム全体に浸透をしている証なのかもしれない。いつも助っ人選手たちとのコミュニケーションには人一倍、気を使っているからこそ、培われた土壌。それは韓国の斗山ベアーズのヘッドコーチ時代に自らが感じた体験があるからだ。

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 「異国の地で仕事をするのは本当に大変だよ。みんなが思っている以上につらい。言葉は通じない。文化、考え方の違いも当然、ある。そうなると、ふとした時に寂しさを感じる時がある。その時の経験があるから、オレはちょっとした会話でいいから声を掛けるようにしているんだ。お互いの考え方を理解したいと思っている」

 だからこそ、ちょっとした会話を大事にする。食事はどうか?グラウンド外でどのように過ごしているか?家族は元気か?ストレッチなどをしている合間を見つけては、そっと声を掛ける。指揮官はそんな小さな時間を大切にしている。来日、まもなく日本の野球に戸惑うナバーロを監督室に呼んで、アドバイスをしたこともあった。

 「デスパイネもナバーロも本当によくやってくれている。打線を活性化させてくれている。これからも厳しい戦いは続くし、これからホークスを追い抜くためには、どうしても彼ら外国人選手たちの力は必要になってくる。チーム全員で一つになって、束になってぶつかっていきたい」

 ペナントレースは精神と肉体を消耗する夏場のヤマ場へと向かって進んでいる。その中でマリーンズは「逆転のロッテ」と呼ばれるように諦めない野球で攻め続け、数多くの逆転勝ちを手中に収めてきた。どんな場面でも全力疾走を怠らない。そのような小さなことが徹底され、積み重ねられていることこそが、今のマリーンズの強さの証でもある。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:6/29(水) 11:51

千葉日報オンライン