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合区で政治が遠くなる 村を覆う不安 参院選

日本農業新聞 6月29日(水)12時1分配信

 「1票の格差」是正に向けて今回の参院選から導入される「合区」。隣接する「鳥取・島根」と「徳島・高知」の選挙区を一つにまとめる、憲政史上初めての試みだ。合区の対象となった県は、いずれも過疎化が進む農山村を抱える。現場からは、選挙区選出の政治家が減ることで「農村の声が届きにくくなる」と不安の声が上がっている。

過疎地の声 託す人なく 島根県津和野町

 農協が初めて病院をつくった農村医療発祥の地として知られる島根県津和野町の旧日原町。1919年、産業組合の大庭政世組合長が「貧しい農山村にこそ医療が必要」との理念で診療所を設立。その精神が厚生連として全国に広がった。

 この地で一人暮らしをする元農家の賀屋孝子さん(80)は「農協の病院はなくなり、農協改革は進み、次は合区。農村の声は国政にどんどん届かなくなっている気がする」と感じている。

 農村医療を担ってきたJA石西厚生連は2008年末に自己破産。「聖域なき構造改革」を掲げて小泉政権が01年から断行した医療改革の影響を受け、破産に追い込まれた。現在は同町が出資した法人が病院を運営している。

 賀屋さんは夫と共に米作りをしてきたが、20代で先立たれ、幼子2人を抱えて県外から同町に移住、苦労しながら子どもを育てた。JAの病院が閉鎖となり、懇意にしていた医師が代わってしまい、現在は町外の病院に列車で通っている。

 今回、合区となった鳥取市までは同町から約300キロ離れている。「合区はやむを得ない判断かもしれないけれど、この地の暮らしを見捨てるような政策はやめてほしい」。賀屋さんは願う。

 町の高齢化率は45%。最近は少しずつ移住する若者が目立ってきた。耕作をやめた農家から農地を利用権設定で預かっている「フロンティア日原」は、若者を受け入れてマルシェなどを企画する。

 代表で農家の斉藤宜文さん(40)は「ここは、政治の動向によって当たり前の医療さえ守れないような過疎地。地域を元気にしたいと奮闘しても、このままではますます意見を聞いてもらえなくなるのではないか」。合区の結果、現場の思いをくみ取った政策ができるのかを問う。

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最終更新:6月29日(水)12時1分

日本農業新聞