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映画『ウォークラフト』のダンカン・ジョーンズ監督を直撃! ゲームの世界観を忠実に再現して人間とオークのどちらにも共感できる視点で描いた

ファミ通.com 6月30日(木)18時2分配信

文・取材:編集部 古屋陽一

●ゲームスタジオに在籍していたジョーンズ監督ならではの方法論とは?
 2016年7月1日に全国東宝系で公開予定の映画『ウォークラフト』。ファミ通.comでは、同作にてメガホンを取ったダンカン・ジョーンズ監督に電話インタビューを敢行した。ゲームのファンだったというダンカン・ジョーンズ監督だが、映画に込めた思いは?

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■ゲーム体験をそのまま映画でも味わえるように
――ダンカンさんはゲーム『ウォークラフト』のファンとのことですが、どのような点がお好きなのですか?

ダンカン とにかく世界観が壮大なところですね。私は『World of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)』を20年以上にわたってプレイしているのですが、いちプレイヤーとして言わせていただければ、いろいろな人がいろいろなところからやってきて“砂場で遊ぶ”といったコミュニティーの感覚がすごく楽しくて。最初は少人数でプレイしていって、徐々に拡大していったのですが、最初のころのオリジナルメンバーとは、ものすごく結束感が固いですね。仲間意識があります。そういう楽しさが、プレイヤーとしては格別です。

――20年間も遊んでいらっしゃるんですね。そこまで長きにわたってプレイされている理由は?

ダンカン 日本の『ファイナルファンタジー』とかといっしょで、つねに物語が進化し続けているところですね。同じ話をくり返すのではなくて、つぎなる冒険が待っているんです。どんどんキャラクターや新しい物語が展開していくので、飽きさせない。そんな楽しさがあるので、ずっとプレイしています。

――それだけのファンだったら、映画版の監督に決まったときの喜びもひとしおだったのでは?

ダンカン もちろん大興奮しましたし、それだけプレッシャーもかかりました。ただ、私は長年ゲームを遊んでいましたので、『ウォークラフト』の世界観を知り尽くしていたんですね。そういう意味ではやりやすい部分はありました。その点では自信がありました。“ゲーム体験をそのまま映画でも味わえるようにする”というのは、基本の目標でした。そのうえで、私が映画版『ウォークラフト』で目指したのは、ゲームを楽しんでいるファンの皆さんに対しては、大きなスクリーンを見ることで、ゲームプレイとはまたひと味違った新しい喜びを提供すると同時に、ゲームをご存じでない一般の映画ファンに対しては、“壮大な一大ファンタジー巨編”としての楽しみをお届けできるような作品にしないといけないと思っていました。

――ゲーム『ウォークラフト』の魅力を、どのように映画に落とし込もうと思われましたか?

ダンカン ゲーム最大の特徴であり魅力は、壮大かつユニークな世界観だと思っています。ストーリーそのものよりも、環境やバックグラウンド。自分たちが中にいる世界というものを、そのままスクリーンに移し替えるとことにいちばん気をつけました。日本はゲーム文化が根付いているので、多くの監督がビデオゲームを遊んで育ったようで、“ゲーム作品の映画化”にも慣れているという印象があります。ゲーム化された映画の成功率が高いと思うんです。それが、アメリカ人はあまりそこまでゲームには慣れていなくて、その点で非常に難しかったりするのですが、本作では自分自身の『ウォークラフト』に対する知識を活かして、それをそのままスクリーンにもってこられるようにしました。

――さきほど、“ゲーム体験をそのまま映画でも味わえるようにする”とおっしゃっていましたが、具体的にはどのような取り組みを?

ダンカン ゲームと映画がまったく違ったメディアであるということは、私自身とてもよく理解しています。何しろ、私自身映画監督になる前は、ゲームの開発会社で勤めていましたので。

――あら! そうだったのですか?

ダンカン ゲームがインタラクティブである反面、映画というものは一方的で固定されたものを提供するということで、“ゲーム体験をそのまま再現する”というのは、無理なことだとは思っています。そういった意味で、ゲームの仕掛けや作り、アクションや展開などよりも、環境や世界というものを大きなスクリーンでリアルにきっちり再現することで、ファンの皆さんに満足していただく。「ああ、自分たちがよく知っている世界に、自分たちが入っていったんだ」というような、没入型の体験を、ゲーマーには提供したかったんです。それと同時に、1本の独立した映画として、一般の方に楽しんでいただくということが、両立できるのではないかと思いました。

――環境の構築という点でいうと、ゲームファンだったら納得してもらえるような細かいディテールにこだわることで、世界観を緻密に構築すると?

ダンカン そうですね。まったくゲームのことを聞いたこともないような、一般の方にも楽しんでいただけるような内容でなければいけないので、ファンの皆さんのことばかり考えて、細かいところにばかりこだわってはいけないという思いはありました。もちろん、ファンだからこそ気づいていただけるような細かいディテールもたくさんありまして、それはたくさん盛り込んでいます。まあ、そこにばかり目がいって気が散らないように……ということは注意しましたけれど。

――せっかくの機会なので、こだわりポイントの一例を教えてください。

ダンカン いいですよ(笑)。ふたつほどお教えしましょう。ゲームの中でプレイヤーがいっしょに旅に出る前に集まる“ミーティングストーン”という場所があるのですが、それが前半のバトルが行われるエルヴィンホレストのシーンで忠実に再現されています。あともうひとつはカドガーがレベルアップするときの音とエフェクトがゲームとまったく同じです。そこを楽しんでいただければ……と。

――それは、遊び心ですね(笑)。ちなみに、とても気になるのですが、どこのゲームメーカーに所属していたのですか?

ダンカン (笑)。ロンドンを拠点にしたエレクシアというスタジオです。当時のボスはデニス・ハザビスといいまして、このあいだ囲碁の世界チャンピオンに勝ったAIの“アルファ碁”をデザインした人なんですよ。

――それはすごい!

■『シェンムー』を映画化してみたい
――では、映画の内容について少しお聞かせください。本作では、人間の視点とオークの視点の半分半分で描かれていますが、あえてオークの視点も盛り込んだ構成にした理由をお教えください。

ダンカン 脚本の第1稿が上がったときに、まったくダメな内容で、私は納得がいかなかったんですね。なぜかというと、完全にありきたりな善と悪の対立になっていたからです。アゼロス(人間)サイドが善で、オークやほかの種族は悪という感じで、きっぱりと分かれていたんです。これでは、なぜ『ウォークラフト』というコンテンツが世界中で愛されているかのゆえんの魅力も伝わらない。自分がプレイヤーとして『ウォークラフト』にもっとも惹かれるのは、両サイドの視点に立って、どちら側からでもプレイできて、どちら側でも共感できるという部分だったんですね。本作は、大枠で言えば“戦争映画”なのですが、それが敵対する両軍ともに見た人が共感できる。両軍とも勝ってほしいと応援できる映画にしたかったんです。ですので、自分がいちから書き直しました。

――ダンカンさんがとくに共感を覚えるキャラクターは? その理由も合わせてお教えください。

ダンカン そのときの気分によりけりみたいなところもありますね。映画作りは長い過程を要するので、作っている過程で、いちばん共感できるキャラクターは推移していったりもします。いっときは、ガーディアンやメディブといったキャラクターに共感しました。多くの者を犠牲にして民を守らなければいけないという姿勢に共感するところもありました。でも、やっぱり自分にとっていちばん共感できるのはデュロタンですね。個人的な体験とも重なっているのですが、映画の冒頭でデュロタンと妻のドゥラカのあいだにベイビーが生まれるんですね。「赤ちゃんが生まれてくるのに、戦争が始まってしまって……」ということで戦いに巻き込まれてしまうのですが、私もあと数週間で子どもが生まれるんですね。そういったところも含めて、個人的に共感してしまいました。

――なんと! それはおめでとうございます。本作の続きが気になるのですが、続編の構想などはあるのでしょうか?

ダンカン じつは、もともとは三部作にしたいという構想で始まったものなんです。これから世界で公開されてヒットされるかどうかにかかっていると思うのですが、皆さんが本作を気に入ってくださったら、2本目、3本目……と続けていきたいです。すでにストーリーも頭の中ではできあがっているんです。さきほどお伝えした、デュロタンとドゥラカのあいだの赤ちゃんが、2作目では重要な役割を担うことになります。ぜひ、三部作を完成させたいです。

――20年来の『ウォークラフト』仲間は、この映画に対してどのような感想を?

ダンカン プレイに留まらず、仲間たちを集めてギルドを作って、私は組合長みたいな立場にもいまして。じつは、その仲間たちのためだけに、映画に盛り込んだ要素もあります。劇中にカドガーが寝泊まりしている宿があるのですが、その宿にギルドの名前をつけてしまいました(笑)。それに気付くのは、ギルドの仲間だけなので、みんな喜んでいました。

――あはは。職権乱用ですね(笑)。あと、ゲームファンということでお伺いしたいのですが、今後映画化したいゲームなんてあります?

ダンカン いくつかありますよ。日本ではPCよりも家庭用ゲーム機のほうが人気だということは知っているのですが、家庭用ゲーム機だと、少し前のゲームになるのですが、セガの『シェンムー』かな。やってみたらおもしろそう。あと、いまハマっているのが『XCOM 2』ですね。あのタイトルも映画化してみたいですね。

――『シェンムー』ですか! それは、ぜひとも見てみたいなあ。では、最後に映画を心待ちにしている日本のファンに向けて、ひと言お願いします。

ダンカン 今回公開に合わせて日本に行きたかったのですが、妻の出産間近ということで、かなわず残念でした。日本は私が大好きな国です。本作は、ゲームを遊んだ方はもちろん喜んでいただけると思いますが、ゲームをご存じない方でも、エキサイティングで壮大な物語は楽しんでいただける映画になっています。ぜひ、この映画を楽しんでみてください。

最終更新:6月30日(木)18時2分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。