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3Dプリンターで“マイ農機具”! アイデア形に、不器用でもOK

日本農業新聞 6/30(木) 12:01配信

 樹脂や金属で立体を作る「3Dプリンター」を活用して、農家自らが理想の農機具を開発できる時代がやって来た。パソコンで設計図を描けば、高い精度の部品ができる。面倒な溶接や削り出しなどの作業もいらない。部品を加工する道具や技術のない農家でも、アイデアさえあれば夢を形にできるようになった。

除草、見回りロボ 思い立ったら即製作

 大阪府熊取町のトマト農家、蒲谷直樹さん(56)も、除草ロボットや圃場(ほじょう)内を見回るロボットなどの農業用機械を3Dプリンターで開発する。使いたい部品をその場ですぐに作れるため、開発のスピードが上がるという。

 見回りロボットの充電部分も、3Dプリンターで製作。半日から1日で部品が完成し、すぐに試験ができた。大きさにもよるが、材料費は「1部品当たり数百円」(蒲谷さん)と経済的だ。いったん部品の設計図を作成してしまえば、あとはコピーするだけで量産できる。蒲谷さんは「欲しい部品を手に入れるのに、時間がかからなくなった」と評価する。

 設計図さえあれば、インターネットを通して開発した農機具を世界に発信することも可能だ。既に作成した3Dプリンター用の設計図をネットに投稿して、公表するホームページが相次いで登場。特許の面で課題はあるが、他人がデザインした品物を誰もが自由に製作できるようになった。これまで農家が個人的に利用していた農機具を、全国の農家が使える環境が整ったというわけだ。

 北海道農業研究センターの若林勝史主任研究員は「うまく使いこなせば、不器用でも思い通りの農機具を作れる」とメリットを強調する。

キャベツ種子選別機 発芽そろい収量向上

 北海道芽室町でキャベツを生産する高橋光男さん(63)は、農研機構・北海道農業研究センターと共に、3Dプリンターでキャベツの種子選別機を作った。金属製の棒を2本並べてレールを作り、その隙間に種子を伝わせる。3ミリほどの小さい種子は隙間から落下し、大きい種子だけが選別されて容器に入る仕掛けだ。

 これまで高橋さんは、キャベツの苗の大きさをそろえるため、コーティング種子を選別しようとしてきた。だが、コーティングをしていても種子は小さいもので3ミリ、大きくて4ミリとばらばら。このわずか「1ミリ」の差で発芽時期が大きく変わってしまうという。

 これまで通常のふるいで選別しようとしたが「うまくいかなかった」(高橋さん)。このため農機具を開発した経験がなくても、種子を簡単に選別する機械を自作できないかと模索。たどり着いたのが3Dプリンターだった。2014年、同センターに提案し、開発を始めた。

 パソコン上なら、初心者には難しい等間隔の穴開けや、0.2ミリ単位の設計もお手の物。オリジナルの種子選別機は、つまずくことなく2カ月ほどで完成した。樹脂代を除いたコストは、モーターや制御盤、金具などで「6500円」(同センター)でできた。

 高橋さんは15年に1号機、今年は改良を加えた2号機を開発、実際に活用している。5000粒の種子選別が7分ででき、近隣の農家から依頼があった分を含めて計15ヘクタール分の種子を選別した。苗の大きさがそろったことで機械で一斉収穫ができ、収量も増えたという。

 高橋さんは「手作業での選別では、絶対にできなかった。引き続き使いながら改良を加えたい」と3Dプリンターに可能性を見いだす。(吉本理子)

<ことば> 3Dプリンター

 パソコンで作成した設計図を基に、樹脂などを層状に重ねて立体の物を作り出す装置。パソコンのソフトで設計し、積み木のように組み合わせて作る。既に医療分野では患者の臓器模型、工業分野では新製品の試作に使われている。近年は1台数万円と価格を抑えた機種が登場、一般家庭でも普及が進んでいる。

日本農業新聞

最終更新:6/30(木) 12:01

日本農業新聞