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GoogleがIaaS/PaaS市場を完全制覇できない理由

ReadWrite Japan 6月30日(木)22時30分配信

Googleには未来像がある。彼らの夢の実現には、「大変多くの努力と献身的な働きが必要だが不可能ではない」とGoogle Cloudのチーフ、ダイアン・グリーン氏は考えている。

しかし、本当に実現すべき彼らの夢は「どうしようもなく退屈な会社になる」ことだろう。

「Googleは企業と真剣に向き合っている」とグリーン氏はいう。だが彼女は、自身が以前勤めていたVMwareと同じ観点で企業のことを理解しているに違いない。クラウドにおける覇権を狙うGoogleにとって問題なのは、そもそもここでいう企業がGoogleについて真剣に考えていないということと、その状況が変わる様子もないことである。


■なぜGoogleは負け続けているのか

本来であれば、GoogleはIaaSやPaaS市場を完全に制覇しているはずだった。他のメジャーな競合他社と異なり、Googleはクラウドから出発しているからだ。OracleやIBMと違って過去の遺物となるデータセンターを持たず、Microsoftと違ってサーバーベースのソフトがらみで多額の資金を取られることもない。また、Amazon Web Servicesとも違い、Googleは日々のオペレーションを支えるための最も洗練されたクラウドをすでに稼働させている。

しかし、それでもGoogleはIaaSやPaaSだけでなく、クラウドでも覇権を握るに至っていない。それどころか、Forresterの計算によれば、クラウドの収益においてGoogleは最下位なのだ。

公平を期すために言うと、Googleは追いかける側からのスタートだった。Amazon Web Servicesは2006年から公式にスタートし、2007年には20万の開発者を抱えるに至った。それに対して、Google App Engineのローンチは2008年4月、Google Cloud Storageが加わったのは2010年(AWSのS3が登場してから4年後になる)だ。AWSが既存のサービスの改善を続けつつ、立て続けに新しいサービスを繰り出す中、Googleは少しずつ遅れをとり続けているのである。

AWSより後に開始したMicrosoft Azure(発表されたのは2008年10月だがリリースは2010年2月だ)にも同じことがいえる。Microsoftの出足はGoogleよりも鈍く、2011年のAzureのドキュメントはコメンテータから「わけがわからない」とさえも評されたが、それでもGoogleより多くの顧客を集めることに成功している。

そして2016年現在、Microsoft Azureは明らかにAWSの対等な競合となっており、2015年のプラットフォーム収益は150億ドル以上にも上った。これは(もちろんAWSを除いた)同業他社の倍にあたり、Googleと比較するとその差は5倍にもなる。Morgan Stanleyが弾きだした数字をみてみても、AWSが80億、Azurが11億、Googleが5億となっており、Googleの道程はまだ遠い。


■Googleと勝ち組の差の理由

グリーン氏は、Google I/Oで「我々の企業向けサービスの準備は万全だ」と語ったが、これはまだ額面通りに受け取れる言葉ではない。

MicrosoftにはRedmond譲りの企業のDNAがあり、開発者たちにクラウドでも覇権を握ると信じさせる必要がある。そして、止まらない進歩と優れたCEO達の存在により、Microsoftは実際に開発者たちの取り込みに成功している。

Amazonは、『suit』を提唱し、ご存知の通り人々の期待に応えられるよう様々な取り組みを現在進行形で行っている。AWSのジェネラルマネージャー、マット・ウッド氏は、「”ハイブリッドクラウド”で満足しようという目論見が多く垣間見られるようになってきたものの、これもエンタープライズを完全にパブリッククラウドに移行させるためのものだ」と言う。AWSは、人々のパブリッククラウドに対する性能やセキュリティへの期待をいい意味で裏切るだけでなく、カスタマーサポートに対する期待にも応えるために、テクノロジーと人材に巨額の投資を行っている。

対して、Googleにはこういった取り組みが一つもない。

Googleクラウドの懇談会『GCP Next』で、Gエンタープライズに深くかかわっている顧客の名前を引き合いに出し、チェアマンのエリック・シュミット氏は「うんざりする」といったような単語を持ちだして注目を集めた。「クラウドはうんざりするような細かいことを自動化し、人々に力を与える...」といったような具合である。こんな話を聞かされる方がうんざりする。

だが、Googleにそのような”つまらない停滞”は許されず、技術の未来に没頭することが求められている。

ジャック・クラーク氏によると、Googleは社内のオペレーションに外部の人間がアクセスできるようにしたいと考えているが、その強烈な内部システムは他のデータセンターのやり方とはあまりに異なるため売り物にならないとのことだ。言葉を変えると、Googleは周りに合わせてレベルを下げる必要があるのだ。

だが、Googleはこの必要を常に見落としている。GCP Nextで、Googleはマシンラーニングや他の最先端のアプリケーションを発表したが、これは聴衆をインスパイアしたというよりも身構えさせてしまったのではないだろうか。元Netflixのクラウドチーフ、エイドリアン・コクロフト氏は、「Googleは新しいサーバレスコンピューティングやマシンラーニングの活用において非常に興味深いストーリーを持っている。しかし、これらは現在AWSに移行されているようなメインストリームアプリケーションにとっては魅力的なものではない」と記している。

Googleが顧客をステージに上げるとき、彼らが得意とする分野、つまり、メディアや広告から選ぶ傾向があるのはこういった点によるものではないだろうか。AWSならGEをステージに上げるところ、GoogleはDisneyを上げた。どちらも素晴らしいブランドだが、前者のほうが主流の企業に訴えかける何かがある。その苦悩は理解できるものだ。

一方、Googleは『NoOps』について提唱し続けてきた。これは、まだ引退を考えていない多くの企業のIT系人材にとって呪いの宣告のようなものだ。


■技術より深い問題

もしも、これがマーケティングやテクノロジーだけに関する話であったなら、Googleにとって何も問題はなかったはずだ。たとえばコクロフト氏がいうように、GoogleがAWSやAzureに対して追いつくどころか離されていっているとしても、だ。

問題は結局のところ人に行き着く。Googleのクラウドビジネスは並外れて出来のいい人たちばかりが関わっているが、そこにはエンタープライズが信頼を置くであろう安定や自重といった企業のDNAが欠けているように思われる。

Googleが今のような状況にある理由は、その過去にいくつも見受けられる。同社はこれまで、いくつものプロダクトをβ版のような状態にしたままであり、またカスタマーサポートもあってないようなものだ(私自身、Gmailや他のGoogleサービスの問題に対応してもらう際にオペレータに行き着くまで大変な思いをしたことがある)。

Googleの歴史というものは、めまぐるしい試行錯誤、ユーザが使い慣れたサービスの打ち切り、そして適当な名前の新サービスの登場の繰り返しだ。熱狂的なペースでイノベーションを続けるインパクトのある企業だが、エンタープライズの顧客を掴むための方向性としては正しくない。

つまり、Googleは「退屈な企業」になることを学ばなければならないということだ。


■待ち受けるのは時間との戦い?

残念ながら、彼らに時間はあまり残されていない。コクロフト氏が指摘するように、すべてのデータセンターは閉鎖され、AWSに取って代わられている。企業がより多くの作業負荷をパブリッククラウドに任せていることから、その成長率は20倍という数字を叩きだし、プライベートクラウドの成長率3倍を大きく引き離している。現在、それらビジネスの多くを掴んでいるのがAWSであり、成長を続けるMicrosoftは二番手につけている。

Amazonはエンタープライズにおけるやり方を再定義し、Microsoftは従来の環境と新しい環境の境目にいる層を捕まえている。これは技術的な特性によるところもあるが、企業文化によるところでもあるのだ。

Garnerのアナリスト、リディア・レオン氏によると、「MicrosoftはAWSと比べてテクノロジーのラインナップが見た目に劣るにもかかわらず、契約を勝ち取っている。Azureの技術的評価はたいていAWSにかなわないのだが、それでも契約が取れる。つまり、ビジネスには技術面だけではなく企業文化も関わるといえるだろう。」

Googleの場合、時代に先駆けすぎたというか、思ったような顧客が現れるには登場が早すぎたと言えるのかもしれない。

ReadWrite[日本版]編集部

最終更新:6月30日(木)22時30分

ReadWrite Japan

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