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氷室京介6年間に密着したドキュメンタリー、言葉の真意に触れる/コラム

MusicVoice 6月30日(木)15時48分配信

 日本テレビの山崎大介氏が6年に渡り密着した、氷室京介のドキュメンタリー『DOCUMENT OF KYOSUKE HIIMURO “POSTSCRIPT”』が7月1日から2週間限定で公開される。それに先駆けて、マスコミ向けに試写会がおこなわれ、小媒体記者も鑑賞。表舞台に現れなかった氷室の真意に触れた。

同ドキュメンタリーは、氷室を、2010年からの6年間を追ったもの。取材を続けてきた山崎氏(同映画の脚本・監督)が、氷室のインタビューや密着映像を交えて回想する、氷室の生き様に迫ったファンへの“追伸”となっている。

 一切のテレビ出演はしない氷室。50歳に際し、全国50公演をめぐる『KYOSUKE HIMURO TOUR2010-11 BORDERLESS 50×50 ROCK'N'ROLL SUICIDE』のリハーサルに密着するところから始まった山崎氏の取材はその後、様々な歴史的ドラマを捉えていくことになる。

 50歳の節目、東日本大震災、ライブ活動からの卒業…。氷室はあの時、何を思い、何を考え、行動に移してきたのか。そうした、氷室の裏側、本音、真意が映し出された内容となっている。

■短い言葉に凝縮された思い

 大概は、結果だけで物事を判断したがる。時には適切なことではあるが、その背後にある“重要なメッセージ”を見落としがちだ。結果でみる―。歌詞もその中の一つと言える。限られた文字数やリズムとの適合性のなかではめていく言葉は、人によっては捉え方が異なることもある。しかし、その言葉には作り手の色んな思いが凝縮されている。試行錯誤の上に選んだ限られた言葉である。

 人はしばしば、後悔をする。「あの時…」「なぜ気付けなかったんだ…」。それは致し方ない事だ。本人は常に、最高の形で届けられるよう自身、そしてライブや作品に対峙してきた。理想と現実のギャップに打ち砕かれることもあろう。しかし、表情、言葉、行動ではそれを見せようとしない。それはプロフェッショナルだからだ。そうした姿にファンは憧れを抱く。同業者のファンが多いこともそれを物語る。

 氷室は感銘を受けた言葉に「是非に及ばず」を挙げた。天下統一目前で家来の明智光秀に討たれた織田信長が謀反を知って語った有名な言葉だ。「現状を受けれ今の事態にあたる」、あるいは「自身の運命にを受け入れる」という意味がある。氷室は素直に「運命を受け入れる」という心境に達するまで常に全力で走ってきた。それ故に後悔はないのである。

 そして、過去のライブで何度も口にしてきた「無様でもやり続ければそれは生き様になる」。その姿はラストツアー『KYOUSUKE HIMURO LAST GIGS』でも見られた。それは、幾つものの矢に討たれながらも微動だにせず死してなおも立ち続けた弁慶に重なる。

 「キング・オブ・ロック」――。氷室京介という完璧な存在を疑いもせずにその背中をみてきた。氷室が作る音楽への、いわゆるラウンジロックやオルタナティブロックというジャンルの括り、音楽的分析などは不要。彼ら作るモノ全てをヒムロックとして受け入れる。疑いもしない。

 しかし、密着映像に映るのは、ミュージシャンである前に人間であること、そして、究極を追求する姿勢は父の影響であること、年齢と向き合いながら歩んできた姿であった。

 50歳を迎え、天命を知るということで始まった密着は、この間、様々な運命的な瞬間に立ち会うのである。そして、氷室はその時節に起きるあらゆる課題に対し、真摯に向き合ってきた。それは彼が何度も口した「ピュア」という言葉にも表れている。

 かつて、プロ野球・巨人、米大リーグのパイレーツで活躍した元投手の桑田真澄さんは肘の手術を受け、球を投げれない間、グランドの外野を毎日黙々と走り続けた。芝だった地面は次第に剥げていき、一つの道が出来ていた。それを桑田ロードと呼ぶ。

 「道なき道に道を作り続ける」。それはどの世界にも通じることだ。その世界の頂点に立ったものが語ることができる言葉。我々はそうした道なき道、言葉なき言葉に耳を傾ける必要があるのではないか。作品一つひとつ、言葉一つひとつ。命の一つひとつ。表を支える柱。その存在にじっくり耳を傾ける。

 この作品は、人によって捉える視点や感じるところは様々だ。先に記したことは小生の私感である。ただ、この映画に映る氷室の言葉や背中はきっと心を震わすことであろう。いずれにせよ。表に出なかった氷室の真意が垣間見える作品で、「やっぱり俺たちは氷室京介を卒業できない」ということを再認識するのである。氷室の生き様を自身の人生に転化していくことぞ、氷室の本望と言えよう。(取材・木村陽仁)

■作品情報

『DOCUMENT OF KYOSUKE HIMURO “POSTSCRIPT”』THEATER EDITION
監督:山崎大介
製作:日本テレビ放送網 東宝
協力:BeatNix Corporation of America
制作プロダクション:Picture-L
配給:東宝映像事業部
(C)NTV, distributed by 「POSTSCRIPT」FILM PARTNERS
公式サイト:kyosukehimuro-postscript.jp
公開表記:2016年7月1日(金)~7月14日(木)2週間限定公開

最終更新:6月30日(木)15時55分

MusicVoice