ここから本文です

怒りで爆発寸前の欧州──どうなるEU?

The Telegraph 6/30(木) 10:00配信

【記者:Peter Foster】
 英国の欧州連合(EU)からの離脱が英経済と連合王国体制に持つ意味をめぐって混乱と臆測が広がる中、当然ながら欧州でも英国の決断がEUに与える影響について緊迫した議論が展開されている。

 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は事態の深刻さをはぐらかすことなく、世界第5位の経済大国であり、北大西洋条約機構(NATO)の主要加盟国である英国の離脱は、欧州統合プロセスにとって見過ごすことのできない「打撃」だと率直に認めた。

 英国との「離婚」交渉という細かい問題はさておき、欧州が直面するより深い課題は、先週英国民がきっぱりと突きつけた民主主義的な抗議に対し、いかに意味のある対応をするかということだ。

 というのも、最近行われた複数の世論調査結果が示しているように、欧州で人々が望む繁栄が実現されず民主主義的な説明責任も果たされていないことに不満を募らせているのは、決して英国民だけではないからだ。欧州はうんざりしている。そしてその怒りは爆発寸前になっている。

 かつて繁栄していたもののグローバルな経済に取り残されてしまった低~中度の熟練労働者は余りに多い。このことによって社会に生じた傷を癒やすにはいっそう努力が必要だということを欧州の指導者たちは理解している。

 欧州統合をもっと進めようという「モア欧州(more Europe)」という姿勢では問題は解決しないという理解は広まっている。現実を直視しようとしない欧州連邦主義者もまだ残っているが、欧州の指導者の大多数は「連邦主義の船」はもう港を出てしまったと認めている。代わりに掲げられているのが、「モア欧州ではなくベター欧州(より良い欧州)」というスローガンだ。

 欧州では航空自由化が進み、携帯電話の通話料金も確かに安い。だが繁栄を享受する知識階級と都市住民を除く人々は経済的、政治的な泥沼の中にいる。

 EU離脱という英国の決断は、一国の新しい国内政治情勢が、欧州統合の大望に勝りつつあるという紛れもない現実を示した。

 今後12か月のうちに欧州では選挙が相次いで行われる。そのいずれも脱EUを唱える政治勢力を勢いづかせる可能性がある。

 10月にはハンガリーで、同国に課された難民の受け入れ割り当て拒否の是非を問う国民投票が実施される。現在東欧と西欧を分断している宗教的寛容と多文化主義をめぐる価値観のずれが強調されるのは必至だ。さらに同月イタリアで予定されている国民投票では、マッテオ・レンツィ(Matteo Renzi)首相が辞任に追い込まれかねない。レンツィ首相が辞任すれば、中道勢力にとってはさらなる大打撃になる。

 来年3月にはオランダで総選挙が実施される。世論調査では、反イスラム・反欧州を掲げるヘールト・ウィルダース(Geert Wilders)氏率いる極右の自由党が優勢だ。来年4月に行われるフランス大統領選でも、極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首が決選投票に進むとみられている。

 今年5月にはオーストリアで、得票率にして1%にも満たない小差で極右大統領就任という事態を回避した欧州。今後予定されている欧州各国の選挙を英国のEU離脱というフィルターを通して見ると、実体より大きな脅威の色彩を帯びてくる。

 統一体としての欧州が自らを統治する能力は、国家主義的で反グローバル化の動きが台頭し続ける中で弱まっていくだろう。今やポピュリズム(大衆主義)は欧州の統治のあり方を常時揺るがすものになっている。人々の生き方と暮らしにも影響を与えるだろう。

 人口動態や経済、地政学の面でグローバル化がもたらした課題は、大規模で集団的な対応を要するものがあまりにも多いが、各国の国内情勢がそういった対応を取ることを難しくしているため、欧州を待ち受けている未来は厳しいと思われる。

 グローバル化が続く中、貿易シェアやイノベーション能力、人口の面で欧州が世界の他の地域と比べて縮小していくのは避けられない現実だ。

 欧州が今直面している危機は、人々を夢中にさせるポピュリズム的言辞といかに闘っていくかということにある。同時に(EUではなく)欧州が、世界から取り残されたり地政学的に時代遅れになったりしないよう、改革を断行していかなければならない。【翻訳編集】AFPBB News

最終更新:6/30(木) 10:00

The Telegraph