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力強さ欠く鋼材需要 7―9月生産は低迷した前年並み-急激な円高にも警戒感広がる

日刊工業新聞電子版 6月30日(木)13時17分配信

 間もなく2016年度も第2四半期(7―9月期)入りするが、鋼材需要は力強さを欠いたまま。鉄鋼各社の生産活動も6月までの水準からやや上向く程度にとどまりそうだ。国内の在庫調整の進展など好材料も見受けられるが、ここに来て、もう一段の急激な円高がユーザーの生産活動に響きかねず、業界関係者は先行きを危ぶんでいる。(編集委員・大橋修)

【全く読めない】
 「英国のEU(欧州連合)離脱でこの先、どうなるのか全く読めない。とにかく見守るだけ」。業界関係者は先週末の大きなニュースと、これに伴う円高急進で一様に戸惑いを隠せないでいる。日本の鉄鋼業界にとって、今や円高は大きなマイナス要因。鋼材の輸出競争力が落ち込む上、主要ユーザーである輸出産業の生産が落ち込み、鋼材の需要をへこませてしまうためだ。

 日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は「英国がEUを離脱することとなったことは極めて残念」とコメント。同時に、16年の粗鋼生産量を15年比横ばいとする想定も「円高が進むと、がらっと変わってしまう」と危惧する。

 かねて、鋼材の需給環境は4―6月期を底に反転するとの見方が大勢だった。中国の鋼材市況に底入れの兆しが出始め、国内の在庫水準も「調整の方向に進んでいる」(進藤鉄連会長)など好材料もそろってきた。それでも出だしの足取りは重い。国内では東京五輪・パラリンピックや都市圏の再開発などによる需要増も見込まれている。

【実需は秋以降】
 だが、電炉大手の東京製鉄は「市中の話でも東京五輪で仕事が厚くなるのは17年から18年と聞いている。そうなると、鋼材の実需が出てくるのは秋以降ではないか」(今村清志常務)と慎重だ。全国小棒懇談会の飯島敦会長(新日鉄住金常務執行役員)も「秋から想定通りの需要が出てくることを願って、7、8月は慎重な生産に徹するしかない」と覚悟する。

 こうしたことから、7―9月期の粗鋼生産量は減産が続いていた前年同期並みにとどまりそう。鉄鋼大手では新日鉄住金が単独ベースで1100万トンに届くかどうか、JFEスチールは同じく700万トン前後が見込まれる。両社とも最適操業となる水準にまだ数%届かない見通しだ。

【ダメージ深刻】
 本格的な反転は10―12月期以降にずれ込むことになるが、今の円高局面が長引けば、そのダメージがより深刻化してくる恐れがある。すでに国内の自動車向けでは想定より弱気の見方も出始めている。経済産業省は「円は対ドルやユーロ、ポンドだけでなく、アジア通貨に対しても切り上がっている。しっかりアンテナを立ててほしい」(山下隆也金属課長)と、アジア向け輸出にも注視するよう警鐘を鳴らしている。

最終更新:6月30日(木)13時17分

日刊工業新聞電子版