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英国の EU離脱で、失業52万人増の予想も

ニュースソクラ 6月30日(木)12時10分配信

フィンランド、オランダでも国民投票か

 EU(欧州連合)からの離脱の是非を巡る6月23日の英国の国民投票は僅差で、離脱が過半数となった。

 事前の予想では52:48で残留派が上回るという世論調査が出ていて、NY株価が戻り高値を記録していただけにマーケットに驚きが広がった。投票結果の分かった24日午後の日経平均は1,286円安で1万5千円を割ってしまった。為替相場も円ドルが一瞬100円の大台を切り、英ポンドは前日比20円安の130円台まで突っ込んだ。

 なぜ、英国民は経済的には損失が大きいとされるEU離脱を選択したのか、と多くの日本人が不思議に思うところである。以前の寄稿でも触れたところであるが、英国の知識層にとって経済的な損得という頭(head)で考える問題ではなく、国家主権の侵害、大英帝国の矜持、といった心(heart)の問題であることが大きい。

 増殖を続けるブラッセルのEU官僚組織による過剰規制にも反感を募らせていた。EU予算で第三位の拠出シェアであるのに、東欧、南欧に支出が集中しており、その拠出を止めれば国民医療サービス(NHS)への支出を賄えるといった議論も巻き起こった。

 大衆感情としてはポーランド、ハンガリーなど東欧の優秀な移民が自分たちの雇用機会を脅かし、また財政面でも移民に対する低家賃の公営住宅供給、移民子弟に対する子供手当の給付なども連日テレビで放映されて離脱派の勢いを増す方向に動いた。

 こうした国民の反発を前にキャメロン首相は2月のEU改革でもEUより「社会保障給付を4年間制限する緊急停止ブレーキ条項」を勝ち取った。本来、移民に社会保障で差別的取り扱いをするのはEU条約違反であるので緊急措置として妥協を図った。それにも拘らず、一度火の点いた国民の反移民感情を抑制することは出来なかった。

 EU離脱となれば、英国政府、国際機関が英国経済には多大の悪影響が及ぶと、試算している。英国財務省の発表では二年後にGDPは3.6%(最大で6.0%)減少して、失業は52万人増加する、住宅価格は(国内需要の減少と外人の投資が減るため)10%下がる、英ポンドは12%減価する、との予想である。

 勿論、英国民に残留票を投じてもらいたいとのプロパガンダもあるが、IMFなどの国際機関もほぼ同様の見通しを発表しており、英国経済はかなりの苦境に陥るであろう。また英国は英語が通じるので多くの企業にとって欧州拠点として選ばれてきたが、その地位は揺らぐ。

 EUに属していてヒト、モノ、カネの自由な移動を保証するいわゆる「パスポート」があっただけに英国を本拠にして欧州大陸に進出していた。EU離脱によりこうした特典が失われると、本拠地をパリ、フランクフルトなどに移す検討も進むであろう。ちなみに日本企業は金融保険業97社、全産業で875社が英国に進出している。

 政治面ではEU残留を強く叫んできたキャメロン首相、オズボーン蔵相の辞任は避けられない。キャメロン首相は10月にでも首相の座を去ると声明した。保守党議員330名のうち百名以上は離脱派であり、その慰撫のために仕掛けた国民投票で失敗した以上、首相に止まることは党内事情が許さない。

 離脱派の代表格であるボリス・ジョンソン下院議員(前ロンドン市長)はキャメロン後継の有力候補として躍り出ることになる。

 また欧州では英国の離脱を見て、フィンランド、オランダなどでEU離脱の国民投票を求める声が強まるとの見方が多い。EU予算では歳入の配分負担だけ多くて農業国、弱小国への歳出に回ってしまうことに反発が強かった。そのうえ、リーマンショック後の金融危機、ギリシャ危機などの場面でいつも北欧、ベネルクス諸国は支援を求められて嫌気がさしているからだ。

 6月26日のスペイン総選挙などにも大きな影響を及ぼそう。ローマ市長選挙で五つ星の候補者が当選するなど欧州は極左、極右の勢力が増していて、EU離脱の声がさらに強まる可能性も大きい。

 いずれにせよ、今後はEU条約第50条に基づき、EU離脱交渉の手続きを開始することになる。EU離脱成立まで協定上2年間あるいは実態的にはそれ以上の期間を要する。それまで英国はEU加盟国である。EUとの貿易新協定の締結など難問を抱えており今後の交渉は難航しそうである。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:6月30日(木)12時10分

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。