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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第31回:穴埋め実り甲府の壁に(明治大DF小出悠太)

ゲキサカ 6月30日(木)19時1分配信

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 その日の朝、ヴァンフォーレ甲府への来季入団が発表されたディフェンダーは、スタンドから試合を見守っていた。明治大のDF小出悠太は、2日前の試合で脳震盪を起こして休養中だった。2週間はプレーができない。現在開催中のアミノバイタルカップ(総理大臣杯、関東予選)で3回戦以降は応援に回っている。2回戦を勝ち上がった段階で全国大会出場が決まっており、活躍の機会は先延ばしとなった。

 小出は、FWだった小学生の頃に地域選抜で守備を任され、インターセプトの楽しさに気が付いてから、DFとして成長を遂げてきた。市立船橋高の2年次には全国高校選手権で優勝。抜群のボール奪取力を誇り、明大に進学後も1年次から出場経験を得た。しかし、2年次に先発から外れた。栗田大輔監督は「試合結果を左右するようなミスが多かった」と振り返る。周囲が先輩ばかりで他人に頼り、判断が遅れた。攻撃のビルドアップでもたつき、パスを相手FWに奪われて決定的なピンチとなる場面もあった。

 ただ「ひどい」の後に「すごい」プレーもあった。決定的なミスで奪われても1対1で奪い返したり、高校時代も失点に絡んでは、セットプレーで点を取り返したりということが珍しくなかった。プレーに安定感が生まれたのは、大学3年から。小出は「いくら守備で頑張っても、大きなミスで信頼は一瞬にして崩れる。1つのミスをよく分析して繰り返さないように気を付け、練習から仲間と多く話して、試合中に迷いが生まれないようにした」と改善を図った。

 地道な努力を重ねながら、真面目な性格に強い責任感が加わり、頼もしい選手になった。この日もプレーこそできなかったが、試合前にはロッカールームを出る選手全員を1人ずつ激励する姿があった。首位に立つ関東大学1部リーグや夏の全国大会など、負傷から復帰した後のプレーが注目されるが、進路先でも活躍が楽しみだ。プロ入り発表後、小出は抱負を語った。

「ここからがスタート。甲府は守備重視で、自分の持ち味が合うと思った。練習参加のときの雰囲気も良く、ほかのオファーを待たずに決めた。得意としているインターセプトで攻撃につなげたり、一番好きなゴールカバーでピンチを救ったりしたい。それから、チームを引っ張っていける選手になりたい」

 就職活動にも注力して内定を得ていたが、サッカーで生きていく決断をした。プロの世界でも鉄壁の門番として活躍するため、小出は、またコツコツと努力を重ねていく。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

最終更新:6月30日(木)19時1分

ゲキサカ