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政策対応は時間との戦いになっている

ZUU online 7/1(金) 11:00配信

5月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.4%と、4月の同-0.3%から下落幅が拡大し、3ヶ月連続のマイナスになった。これまでの原油価格下落の影響がまだ残り、コアを大きく押し下げている。5月のコアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)も+0.6%と、4月の同+0.7%から上昇幅が縮小し、昨年11月の同+0.9%からの減速が明確になっている。

■物価上昇は下方修正しながらも、下押し局面はすでに脱出

2014年の消費税率引き上げ後の需要の停滞、そしてグローバルな景気・マーケットの不安定感による株価低迷などで消費者心理は悪化しており、消費活動の弱さが物価の上昇を抑制していることも明らかになっている。日銀も6月の金融政策決定会合で、物価は「当面小幅のマイナスないし0%程度で推移する」と判断を下方修正している。

7月の金融政策決定会合の展望レポートでは、2016年度のコアCPIの予想が+0.5%から大幅に下方修正される可能性が高い。弊社は-0.2%と若干の下落を予想している。内閣府の試算では2016年1-3月期に需要不足がGDP対比1.1%程度(5.5兆円程度)あると推計されている。7月の参議院選挙後にまとめられる2016年度の補正予算による景気対策は、最低限10兆円程度の規模は確保され、この需要不足を埋め、年後半には需要不足は解消の方向に向かっていくと考えられる。

失業率が賃金上昇が始まる水準である3.5%程度をしっかり下回り、労働需給がかなり引き締まってきていることも、物価の持ち直しを支えると考える。労働需給の引き締まりが、日銀が「物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていく」と考えている根拠となっている。原油価格も持ち直してきた。製造業の在庫調整がグローバルに物価の下押し圧力になる局面は、既に脱しつつあると考えられる。

■物価は夏場まで停滞?

夏場までは現状程度のマイナスの水準で、コアは底這う可能性が高い。秋から冬にかけて持ち直し、2016年の前半には+0.5%程度ま回復していくだろう。その後、製造業の在庫調整がグローバルに物価の下押し圧力になる局面を脱し、低水準の失業率と総賃金が拡大していることで、1%程度の物価上昇の中期的なトレンドは継続すると考えられる。しかし、日銀が目指している「2017年度中」の2%の物価目標の達成は困難である。

イギリスのEU離脱問題などで、グローバルな景気・マーケットの不安定感が続き、FEDの年内の再利上げ観測も遠のいた。ドル・円が100円を下回る円高となるリスクも高まり、企業の値下げのニュースも聞こえ始め、デフレ期待の再燃も危ぶまれている。7月の金融政策決定会合で、日銀は「2018年度中」へ物価目標の達成時期を更に先送りし、追加金融緩和に踏み切る可能性がある。

6月の東京都区部のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.5%と、5月(同-0.5%)に続き大きめの下落幅となった。原油価格の持ち直しの影響が出始めているとみられるが、それを上回る需要の弱さに起因する下落圧力が、足元の物価の弱さにつながっているとみられる。財政政策による需要下支えが急務であることを示してる。

■企業の積極的な雇用拡大に見合う需要と収益が鍵

5月の失業率は3.2%と4月から変化はなかった。4月の新年度入り後、強い人手不足を感じている企業の採用活動は強さを増している。更に、今年のゴールデンウィークは曜日並びがよく連休を取りやすい形であったため、行楽需要により雇用は拡大した。就業条件の改善が労働力人口を増加させているが、順調に就職につながり、失業率は3ヶ月連続で3.2%という低い水準となった。

求職者に対して求人の増加の方が強く、5月の有効求人倍率は1.36倍と、4月に1.34倍に大幅に改善した後も(3月は1.30倍)、更なる改善を見せ、更に改善に勢いがついている。失業率は賃金上昇が始まる平均的な水準である3.5%を明確に下回り始めている。賃金上昇が1%程度の物価トレンドに結びつく形は既に完成していると考える。しかし、政府・日銀が目指す2%の物価上昇が安定的になるためには、失業率が3%を下回り、2.5%を目指す展開になっていかなければならないだろう。

物価の安定を1%程度とみれば自然失業率は3.5%前後、2%程度まで加速を許せば自然失業率は2.5%前後になると考えられる。失業率の低下は順調であるが、グローバルな景気・マーケットの不透明感が強い中で、2014年の消費税率引き上げ後の内需の回復も遅く、企業の業況感には悪化がみられる。5月の鉱工業生産指数も前月比-2.3%とかなり弱く、4-6月期も上昇に転じることができない可能性が高まっている。

これまでの企業の積極的な雇用拡大に見合う需要と収益がついてこなければ、これからの労働市場の持続的な改善は見込めない。グローバルな景気・マーケットの不透明感の解消と、7月の参議選挙後にまとめられる大規模な財政による景気対策の効果が、企業のリストラが再発するまでに見られるか、時間との戦いになってきている。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:7/1(金) 11:00

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