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今後10年間の電力需給予測、全国10地域で予備率5%以上に

スマートジャパン 7月1日(金)11時25分配信

 4月に小売全面自由化を実施して初めての夏を迎えた。これまで夏と冬の電力需給の見通しは電力会社10社の報告をもとに国の委員会がとりまとめてきたが、今年度からは国全体の電力需給の調整役を担う電力広域的運営推進機関(広域機関)が電力会社以外の計画を含めて一元的に集約して予測する。

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 広域機関が6月29日に経済産業大臣に提出した2016年度の供給計画によると、今年度の電力需給状況は年間を通して安定した状態が続く。夏と冬の需要が増える時期でも、需要に対する供給力の余力を表す「予備率」は国全体で10%を超える見通しだ。地域ごとに予備率が3%を切ってしまうと大規模な停電の可能性が生じるが、今年度は安定した電力供給を維持できる。

 全国各地の送配電ネットワークは10地域の電力会社によって分かれているため、需要と供給のバランスは地域単位で調整する必要がある。10地域の中では東北・東京・中部の3地域で、月によって予備率が7%台まで低下する。それでも危険な水準の3%は大きく上回る。需要がピークになる時間帯に大規模な発電所のトラブルが重複して発生しない限り、供給力が不足することはない。

 注目すべきは長期の需給予測だ。広域機関は2016~2025年度の10年間にわたって、電力の需要が最大になる8月の予備率も算出している。まず国全体では予備率が最低になる年でも9%台を維持できる。しかも需要が増え続けることを前提にしている。今後10年間にGDP(国内総生産)が年率1%で拡大し続けて、夏の電力需要も増加すると想定した。

 現実には2011年3月の東日本大震災を機に企業と家庭の双方で節電対策が広がり、電力の需要は減少傾向にある。今後も省エネ技術が進展して電気製品の消費電力が減る一方、国の規制によってビルや住宅の省エネが一段と進んでいく。たとえGDPが拡大しても電力の需要が増える状況にはない。そう考えると広域機関の予測よりも予備率が高くなって、国全体で10%を切ることはなさそうだ。

 しかし地域別では極端なバラつきが出ている。驚くべきことに、東京電力の管内では6年後の2022年の夏に予備率が3%を切って2.2%まで低下してしまう。関西電力の管内でも5年後の2021年の夏に3.1%まで下がる。東日本大震災後に予備率が3%以下になったことは一度もないのだが。

原子力の比率は10年後も0.4%にとどまる?

 広域機関が想定する今後の電力需要は年率0.5%で増えていく。国全体では2015年度に最大で1億5630万kW(キロワット)の需要だったのに対して、2025年度には1億6541万kWへ拡大する。その差は911万kWである。大規模な原子力発電所の9基分に匹敵する。電力会社から見ても、かなり楽観的な予測だろう。

 さらに年間に消費する電力量は2015年度の8857億kWh(キロワット時)から、2025年度には9446億kWhまで増加する想定だ。増える589億kWhは一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると1600万世帯分にもなる。これから電気自動車など新たな需要が拡大しても、さまざまな節電効果が加わることによって、現実には2025年度の消費電力量は2015年度とさほど変わらない水準に収まると考えるのが妥当だ。

 電力需要が増え続ける楽観的な予測に対して、供給力はどうなるのか。電力会社10社と小売電気事業者276社が計画している電力の調達先を電源別に分けると、最大の供給源はLNG(液化天然ガス)による火力発電である。今後10年間を通じて25%前後を維持する。その一方で太陽光発電が拡大して、2025年度には22%を占める見込みだ。次いで石炭火力が15.8%、原子力が10.2%、石油火力が9.4%で続く。

 ただし年間に供給する電力量の比率は大きく違う。2025年度の時点で供給する電力量が最も多いのは石炭火力で31.9%に達する。石炭火力は発電コストが低いため、小売電気事業者にとってはメリットの大きい電源になる。LNG火力は28.6%で、2015年度の42.9%から大幅に減少する。代わって太陽光が4.5%から7.9%へ比率を上げる見通しだ。

 ここで注意しなくてはならない点がある、2025年度に供給する電力量のうち、18%が「その他」になっていることだ。現時点で電源の種別を特定できないケースだが、原子力が多くを占めることが想定できる。というのも2025年度の原子力の供給量は全体の0.4%しか織り込まれていない。電力会社が10年後に再稼働を見込む原子力発電の規模はもっと大きい。

 政府が2030年度の目標に掲げる電源構成では原子力を20~22%に設定した。そのためには2025年度に少なくとも10%以上まで増やす必要がある。ただし太陽光が2030年度の目標で7.0%になっているのに対して、今回の供給計画では2025年度に7.9%まで上昇する。2030年度には太陽光や水力を含めて再生可能エネルギーの比率が目標の22~24%を大幅に上回り、原子力の比率は10%にも届いていない可能性がある。

 火力発電では石油から石炭へ移行する動きが加速する。電力会社と発電事業者の計画を集約すると、2年後の2018年度までに石油火力発電設備の休廃止が一気に増える。供給力にして約300万kWが2016~2018年度の3年間で減少する。

 LNG火力も新規開発より休廃止のほうが多くなって規模は縮小していく。増加するのは石炭火力だけだ。4年後の2020年度から新しい発電所が大量に運転を開始して、2025年度までに新規開発分が500万kWを超える。一方で休廃止する石炭火力はわずかである。火力発電全体では石炭火力が増えてLNG火力と石油火力が減り、2025年度の供給力は2016年度と変わらない水準を維持する。

発電事業者の供給力が東京や関西で余っている

 今後10年間の供給力は原子力を除いて見通せる状況になった。その間に東京と関西では予備率が3%前後になる予測だが、追加の対策によって5%以上を確保することが可能だ。1つは発電事業者の電源に未契約分の余力がある。たとえば東京で予備率が2.2%まで低下してしまう2022年の夏には35万kWが余っている。関西でも予備率が3.1%に低下する2021年の夏に70万kWの余力が見込める。

 もう1つの対策は地域間の電力融通である。地域間で電力を融通するためには両地域の送電線をつなぐ連系線の容量が影響する。それを想定したうえで、東京には北海道と東北から合計で132万kW、関西には中国から85万kWを融通できる。こうした2つの対策を組み合わせれば、東京の予備率は5%を上回り、関西は8%以上を確保できる状態になる。原子力発電の供給力が不確定でも、長期の電力需給に支障はない。

 全国で安定した需給状況を維持していくためには、地域間の電力融通が欠かせない。2016年度の見通しでも、送電線がつながっていない沖縄を除いて9地域すべてが融通を受ける予定だ。季節や時間帯によって調達する側と供給する側の双方になる。

 他の地域から調達する電力量が最も多いのは東京で、大半は東北からの電力である。次に多い関西は四国から、3番目の中国では九州の電力に依存する割合が大きい。年間の需要に対する比率を見ると、中国では16%以上の電力を他の地域から調達する。関西と四国も10%前後の高い比率だが、四国はそれ以上の電力を関西など他の地域に供給する計画になっている。

 2016年度の供給計画から国全体の状況が一括で把握できるようになった。広域機関が電力会社を含めて小売電気事業者や発電事業者の計画を一元的にとりまとめる体制になったからだ。全国10地域の送配電事業者(電力会社の送配電部門)が集約した計画と合わせて、国全体の需給バランスを調整していく。小売全面自由化で電力市場の構造は大きく変わり始めた。

最終更新:7月1日(金)11時25分

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