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豪ドル投資の魅力とリスク~過去の運用成績と今後のポイント

ZUU online 7月1日(金)14時0分配信

■要旨

わが国の個人投資家の間では、オーストラリアドル(以下、「豪ドル」と表記、米ドルは「ドル」と表記)が根強い人気を持っている。家計の保有率等の包括的な統計は無いが、各種金融機関などが豪ドル建ての商品(預金・投資信託・債券など)を常に幅広く取り扱っていることからも、その人気の高さがうかがえる。

このため、過去に豪ドルへの投資を実際に行った投資家や検討した投資家は多いとみられるが、投資を行っていた場合はどのような結果となっていたのだろうか?

豪ドルに投資する意味合いや投資家に求められる姿勢、今後の豪ドル投資を考えるうえでのポイントと併せて考えてみたい。

■豪ドルに投資することの意味合い

1|魅力は高金利だが、金利は低下基調

まず、最初に豪ドルに投資することの意味合いを考える。豪ドル投資の魅力は何よりその金利の高さである。直近のオーストラリア(以下、「豪州」)の長期金利(10年国債利回り)は2.0%と、ブラジルやロシア等の新興国よりは低いものの、先進国では最高水準にある。

ただし、豪州の長期金利も過去からの推移では大きく低下している。足下の水準は直近ピークであった2008年5月(6.5%)の1/3に満たない。

豪州の長期金利が低下基調にある直接の原因は中央銀行であるRBA(Reserve Bank of Australia)が利下げをしてきたためである。RBAはリーマンショックを受けた08年後半から急激な利下げを実施、その後は一旦利上げに転じたものの、11年終盤からは再び利下げを断続的に実施しており、直近にかけての利上げ回数は計11回、利下げ幅は3.0%に及ぶ。そして、直近の政策金利は1.75%と過去最低水準にある。

そして、RBAによる大幅な利下げの背景には、豪州の冴えない景気・物価情勢の存在がある。

豪州は世界有数の資源国で、特に鉄鉱石やアルミ原料であるボーキサイトの2015年生産量はそれぞれ世界シェア25%、29%に達する。原油やガスのシェアは低いが、石炭・金・レアアースなどでも1割程度のシェアを有する。従って、豪州の輸出品目を見ても、鉱物・燃料系が全体の6割を占め、特に鉄鉱石(25%)、石炭(14%)の2大品目で全体の4割を占める。

このように資源依存度が高い豪州経済は、2000年代に世界的な資源ブームによる資源価格高騰の追い風を受けてきた。しかし、中国経済の減速などを受けて2011年から鉄鉱石・石炭の国際価格が大きく下落したため、交易条件が悪化し、豪州景気の逆風となった。

この結果、豪州の実質経済成長率は減速した。リーマンショック前まで概ね3%~4%のレンジを中心に推移していたが、ここ数年は、2%~3%のレンジへと水準が切り下がっている。景気の低迷と通貨高の影響で物価上昇率にも低下圧力がかかり、RBAは利下げによるテコ入れを繰り返すことになった。

2|為替変動リスクは主要先進国通貨で最大

次に、豪ドル為替レートの推移を確認すると、6月28日時点の豪ドル円レートは1豪ドル=75.9円で、60円台であった2000年代初頭に比べれば高いが、10年前の06年6月末時点の1豪ドル84.7円からは1割程度低い水準にある。

豪ドル為替レートの特徴は、資源国通貨だけに、資源価格との連動性が強いことが挙げられる。代表的な国際商品指数であるCRB指数と豪ドルの対ドルレートの間には、極めて強い相関関係が確認できる。

また、豪ドルの対円レートは、従来、日豪金利差(豪金利-日金利)との連動性が極めて強かった。2012年終盤以降は、安倍政権が発足し、日銀が異次元緩和に踏み込んだため、金利差で説明できる以上の円安が進行し、日豪金利差と為替の動きの間の関係性は希薄化したが、それでも正の相関(相関係数0.22:12年7月~16年5月の月次)を保っている。従って、豪州金利低下に伴う日豪金利差の縮小が円高豪ドル安圧力として働いてきたと言える。

豪ドル円レートの10年間の推移を見ると、09年のリーマンショックまでは資源ブームによる資源価格上昇に伴って円安豪ドル高に、その後リーマンショックで急激な円高豪ドル安に見舞われたが、その後は世界経済の危機からの回復に伴う資源価格の持ち直しを受けて再び豪ドル高に。

2013年~14年には、日銀の異次元緩和に伴う急激な円安で円安豪ドル高がさらに進み、1豪ドル100円を超える場面もあったが、15年以降は資源価格下落とRBAの利下げに伴う豪金利低下に押され、直近では70円台半ばにまで下落している。

次に豪ドル円レートのボラティリティ(変動度合い)を見ると、豪ドル円はかなり変動しやすい通貨ペアであることがわかる。主要通貨の対円レートについて、直近10年間における月間騰落率の標準偏差(ばらつき)を取ると、豪ドルは4.8%と主要先進国通貨では最大、新興国通貨並みである。4.8%という値は、最も一般的な通貨ペアであるドル円(2.8%)の約7割増しに相当する振れ幅だ。

それでは、何故豪ドル円はこれほど変動しやすいのだろうか?そこには二つの理由がある。一つは資源価格との連動性だ。既述の通り、資源国通貨である豪ドルは資源価格との連動性が高いが、そもそも資源市場は市場規模が小さいことなどから変動性が高い。CRB指数の直近10年間における月間騰落率の標準偏差は5.4%に達しており、これと連動する豪ドルの対ドルレートの標準偏差も4.2%と高めだ。

さらに、豪ドルと円という通貨の組み合わせが変動性を増幅している。それはリスク回避(オフ)・選好(オン)の際の為替の動きだ。一般的に危機の際には国債が買われ、金利は低下するが、低金利通貨である円は、危機の際でも金利の低下余地が少なく、金利という魅力が落ちにくいため、リスク回避局面で買われる傾向が強い。

一方で、高金利通貨の豪ドルは危機の際に金利が大きく低下し、魅力も低下するため、リスク回避局面で売られる傾向が強い。また、危機の際には資源価格が下落するため、売られやすいという側面もある。

このことから、市場がリスク回避的な局面では円はドルよりも買われる一方で、豪ドルはドルよりも売られる。逆にリスク選好的な局面では、円はドルよりも売られる一方で、豪ドルはドルよりも買
われやすいことになり、豪ドル円では大きな波が発生する。

実際、過去の推移を見ても、市場の警戒感を示すVIX指数(別名、恐怖指数)が大きく上昇する局面では、両者の間で真逆の動きが発生、その後、VIX指数が低下する際にはその揺り戻しが起きていることが確認できる。

ちなみに、豪ドル円のボラティリティを時系列で見ても、過去からの現在にかけて常に高い。リーマンショックを受けて激しく変動した2008年~09年を除いたとしても日次変動率の標準偏差は、毎年0.5%強から1%強で推移しており、ドル円の標準偏差をかなり上回る。

つまり、豪ドル投資の意味合いをまとめると、以下の2点に集約される

(1) 過去の豪ドル投資と比べて、現在の豪ドル投資は金利という魅力が大きく低下している一方で、為替変動リスクは引き続き高く、リスクに対するリターンを考えた場合、投資妙味は明らかに下がっている。

(2) 一方、世界の先進国で金利がゼロ付近に落ち込む中で、明確なプラスを確保できる豪ドルの希少性は高まっているとも言える。現在投資可能な金利物の投資対象の選択肢の中で比較すると、ドル投資の場合、ドル円の為替変動リスクは豪ドル円より低いものの、米国の金利(1年国債利回り)は0.5%程度に過ぎない。日本国内での運用の場合、銀行預金や個人向け国債は、為替変動リスクはゼロだが、金利もほぼゼロであり、もはや資産運用としての意味は殆ど消滅している。ユーロでの運用はさらに厳しく、預金金利は日本同様ほぼゼロだが、為替変動リスクを負うことになる。

■過去の運用成績の試算

1|運用成績(単年度損益の状況)

次に、実際に過去に豪ドルへの投資を行っていた場合に、運用成績がどうなったのか?いくつかの前提を置いて試算を行ってみた。具体的には、2000年以降について、各年、1年固定金利で運用した場合を想定した。

結果、17年間の平均年間収益率は、5.21%とかなりの高収益率となり、その内訳は金利収入の寄与度が3.42%、為替差損益の寄与度が1.79%であった。

比較対象として、ドルへの投資を行っていた場合についても、同様に試算すると、平均年間収益率は、2.32%であり、その内訳は金利収入の寄与度が1.58%、為替差損益の寄与度が0.74%であった。

従って、豪ドル投資は、平均してドル投資のほぼ倍のリターンを挙げていたこととなり、特に金利収入の寄与が高かったことがわかる。

ただし、時系列で見ると、金利収入については、縮小が続いている。また、この間の最高年間収益率が34.1%(09年)に達した一方で、最低年間収益率は▲31.4%(08年)となっており、ドル投資(最高年間収益率21.6%、最低年間収益率▲16.7%)と比べて浮き沈みが激しい。この状況は、既述のとおり、豪金利が低下してきたこと、豪ドルの為替変動が構造的に大きいことに起因している。

2|運用成績(累積損益の状況)

さらに、先ほど算出した年間収益率を用いて、複数年にわたる運用成績を試算してみた。期初(各年初)に100万円を豪ドルに投資、1年固定金利で毎年再投資運用を繰り返した場合の、期末(各年末)の累積資産残高である。縦軸が投資開始時期、横軸が投資終了時期である。

結果を見ると、全体的に初期投資額である100万円を超えているケース(すなわち、運用収益がプラス)が多くなった。特に2000年代初頭に投資を開始し、近年まで続けた場合には、資産が倍増以上となっている。最高は、2001年初に投資を開始し、14年末に終了した場合で、その資産残高は当初の2.5倍を超える(251.5万円)。また、直近(6月28日)まで続けているとして、最も資産残高が大きくなっているのも2001年初に投資していた場合である(200.3万円)。

高金利の時代に金利収入の蓄積が進んだうえ、円安豪ドル高がプラスに働いたためだ。

一方、最低の運用成績となったのは、リーマンショックが発生した2008年の年初に投資を開始し、同年末に終了した場合(68.6万円)だが、最近でも13年以降に投資を開始し、直近まで続けていた場合は1割を超えるマイナスになっている。

金利が低下したことで、(1)従来は豪ドルが下落した際のバッファとなっていた金利収入の蓄積が進まなくなった中、(2)資源安・日豪金利差縮小に伴う豪ドル下落が直撃したことが資産の減少を招いた。

なお、比較対象として、ドルに投資した場合についても同様に試算した。全体的に100万円を下回る(つまり、運用収益がマイナス)となったケースが多く、豪ドルのように、資産が倍以上になったケースは存在しない。

ただし、近年投資を始めた場合に限ってみると、豪ドルよりも好成績となっているケースが多い。金利は豪ドルよりも低いものの、FRBが出口戦略を進めるなかで、ドルが豪ドルに比べて底堅く推移したためだ。

以上より、過去の豪ドル投資はかなりの確率において報われており、特に資源ブーム前半にあたる2000年代初頭に投資を開始していた場合には、金利高と豪ドル高で大幅な利益が発生した。ただし、近年投資を開始した場合は、金利低下と豪ドル安でかなりの損失が発生しているとみられる。

相対的に高金利通貨であるからといって、必ずしも豪ドルへの投資が報われたわけではない。

■今後、豪ドル投資にどう向き合うか?

1|どのような将来シナリオを描くか?が重要に

最後に、個人投資家として、今後、豪ドル投資にどう向き合うべきかについて考えてみたい。

これからの豪ドル投資がもたらす結果は、豪金利がどうなるか?豪ドル円レートがどうなるか?によって変わる。もともと豪ドル円はボラティリティが高いだけに、結果も大きく左右される。

そして、豪金利と豪ドル円の行方は、主に以下の4つのポイントについて、どのような将来シナリオを描くかに依存する。

2|今後の豪ドル円を左右する4つのポイント

(1)資源価格の行方

一つ目のポイントは資源価格の行方だ。既述のとおり、資源国通貨である豪ドルの為替は資源価格との連動性が高い。足下の資源価格は、原油などでの供給力過剰や中国経済減速に伴う需要低迷懸念などから、落ち込んだレベルにある。

資源価格の行方のカギを握るのは、世界経済の動向だ。もともと世界経済の成長率と資源価格の騰落率の間には連動性が存在する。世界経済の成長率が加速し、資源需要が増加するとの期待が高まれば資源価格は上昇、逆に世界経済の成長が鈍化し、資源需要が低迷するとの期待が高まれば、資源価格は下落しやすい。

つまり、今後、世界経済の回復期待から資源価格が上昇すれば、豪ドルの上昇圧力に、世界経済の低迷期待によって資源価格が下落すれば、豪ドルの下落圧力になると考えられる。

(2)豪州の構造転換

そして、二つ目のポイントは豪州経済の構造転換だ。豪州経済はこれまで資源依存型であったが、近年は構造変化の兆しがうかがわれる。

輸出に関しては、従来の財(主に資源)の輸出額が伸び悩む一方でサービスの輸出額増加が顕著になっている。具体的には、インバウンド(訪豪旅行客)による消費や留学の受け入れに伴うものだ。豪州は近年減速ぎみとはいえ経済成長ペースが速いアジアとの距離が近く、かつ英語圏であるという強みがあり、海外からの旅行者や留学生が近年伸びている。

また、内需にも追い風が吹いている。それは移民の増加だ。豪州への年間移民数は2000年ごろから増加ペースが加速しており、直近では、ほぼ年間20万人に達している。これは、豪州の総人口2391万人(2015年10月時点)の1%近い規模であり、日本に当てはめると年間約100万人相当の移民が流入している計算になる。

英国のEU離脱決定の一因として流入する移民への不満が挙げられるように、移民が社会の軋轢に繋がることもあるが、国の成長という点では、労働力(=購買力)の増加を通じてプラスに働きやすい。

以上が豪ドルサイドのポイントとなる。今後、資源価格が上昇する、もしくは豪州経済が構造転換によって資源以外のエンジン出力が上がるのであれば、豪州景気は回復し、RBAが利上げに転じることで豪州金利は上昇、さらに金利上昇に伴って豪ドル高圧力がかかることになるだろう。

逆に、資源価格が下落する、さらに構造転換が進まない場合は、豪州景気は減速し、RBAがさらに利下げすることで豪州金利は低下、豪ドルにも下落圧力がかかる可能性が高い。

(3)日銀金融緩和の行方

そして、3つ目のポイントが日銀による金融緩和の行方となる。豪ドル円レートには、豪州側の材料だけでなく、日本側の材料も影響する。豪ドルに上昇(下落)材料があったとしても、円にさらに大きな上昇(下落)材料があったのであれば、豪ドル円では円高豪ドル安(円安豪ドル高)となる。

そして、日本側で最大の材料となるのが日銀による金融緩和の行方となる。日銀は「2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(俗に言う「異次元緩和」)を継続する」としているが、現在の物価上昇率の状況は2%からは程遠い。

従って、日銀の金融緩和は出口が見えない状況にあるが、一方で、現行金融緩和の主軸である大規模国債買入れには限界がある。現在は年80兆円増のペースで買い入れを行っているが、年間の新規国債発行額は30兆円台のため、残りは民間が保有している国債を大量に買い上げている。結果的に、3月末時点で日銀のシェアは全体の1/3を超えている。

これから先を考えると、民間の国債保有高には限界があり、しかも金融取引での担保需要などから民間も全ての国債を売るわけにはいかないため、あと1~2年で現在のペースでは買い入れを続けられなくなるとの見方が強い。

従って、日銀の2%物価目標は(いつ)達成されるのか?(無理な場合)物価目標は修正されるのか?現行の異次元緩和の枠組みが限界を迎えるときに日銀はどう対応するのか?などが焦点となる。

日銀の異次元緩和(またはそれに準ずる措置)が長期化する場合は、日本の金利は抑制され、円高圧力も抑制されることになるが、そうでない場合は、金融緩和が終了に向かうことになり、円高圧力がかかることになる。

(4)購買力平価

そして、最後のポイントは長期的な視点になるが、購買力平価だ。これは、物価上昇率が高い(低い)国の通貨は、低い(高い)国の通貨に対して長期的には下落しやすいという為替の決定理論だ。なぜなら、物価が上昇(下落)するということは、その通貨のモノ・サービスを買う力(購買力)を押し下げる(押し上げる)ためだ。

通常、ドル円レートでは日米の貿易収支が均衡していた1973年を購買力平価算出の起点にとることが多いが、日豪の貿易収支は常に日本の貿易赤字で均衡時点がない。

従って、異なる3つの時点を起点として豪ドル円の購買力平価を算出した(消費者物価ベース)。

ここから分かることは、豪州の物価上昇率が常に日本を上回っているため、購買力平価の考え方に基づけば、常に豪ドルは円に対して下落圧力がかかっているということだ。

実際、長期のトレンドとして、1970年代から90年代にかけては、購買力平価に沿う形で実際の為替レートも円高豪ドル安方向に推移してきた。それ以降は、購買力平価が下落する中で、実際の豪ドル円レートは概ね横ばいの範囲に留まっており、当てはまりが良くない。これは、資源ブームに伴う豪ドルへの上昇圧力や日銀の異次元緩和による急激な円安が作用したためだ。

このように、購買力平価はあくまで長期的な決定理論の一つであって、必ずしも常に当てはまっているわけではないが、豪ドルの高金利の裏には、相対的に高い物価上昇率があり、それは購買力平価の観点では豪ドル安に繋がるという点は念頭に置いておいた方がよい。

■おわりに

今年に入って、日銀がマイナス金利政策を導入したことで、日本国内の国債利回りの大半はマイナス化、預金金利も期間にかかわらず殆どゼロに低下した。

海外でも欧米の金利(1年)はゼロに近い水準にあり、相対的に高金利である豪ドルの投資対象としての希少価値は高まっている。ただし、過去との比較では、金利が大きく下がっている一方で為替変動リスクは高いままであるため、豪ドル投資自体の投資妙味は低下している。

実際、過去の豪ドル投資の成否をシミュレーションしてみると大幅なプラス収益を確保したケースが多いが、リターンが低下する中でリスクが構造的に高止まりしているだけに、近年では損失を抱えるケースが増えている。

豪ドル投資商品についてのホームページを見ると、販売会社側の販促目的のものが多いだけに豪ドルの魅力を全面に押し出しているケースが多い。

具体的には、「資源が豊富」、「成長率が高い」、「金利が高い」、「格付けが高い」などの魅力が列挙されている一方で、「為替変動リスクが相対的に高い」ことや、「購買力平価」の考え方など、不利な部分への言及は少ない。

高金利という点に関しても、現在の金利水準が表示されているのみで、過去から大きく低下している点にあえて触れていないものがある。

従って、投資家としては、主体的・積極的な情報収集によって、魅力とリスクのバランスを把握したうえで投資判断を行うことが求められる状況にある。

また、投資家の視点で、今後、豪ドル投資を考えるうえでは、「国際商品価格」、「豪州の構造転換」、「日銀の金融緩和」の行方をどう見るかがポイントになる。例えば、世界経済に悲観的な見方を持っているのであれば、豪ドル投資はそぐわない。

豪ドルへの投資に当たっては、これらのシナリオの組み合わせを具体的にイメージし、さらに「購買力平価」では豪ドルに下落圧力がかかりやすいという点も念頭に置きながら、投資を吟味することが求められる。さらに、経済は生き物であるだけに、定期的にシナリオの定期点検を行い、投資戦略を見直してみる必要もあるだろう。

ちなみに、筆者の現在の見立てでは、しばらく(1~2年程度)は豪ドル投資にとって厳しい時期が続くが、中期的には再び円安豪ドル高に向かうと見ている。

世界経済は現在苦境にあるが、米国経済の底堅い展開、インド経済の成長、中国経済の下げ止まりによって、いずれ緩やかながらも成長力を取り戻し、商品価格も持ち直すと予想。また豪州の構造転換もある程度進み、豪州景気は回復、RBAが再び利上げ路線に転じることで豪金利は上昇、豪ドルにも上昇圧力がかかる。

一方で、日銀の異次元緩和は長期化し、現在のペースでの国債買入れの限界を迎えても、一定程度買入れ規模を縮小のうえ、マイナス金利とともに緩和を続けると見ている。

購買力平価に伴う豪ドル安圧力には留意が必要であるが、これらの豪金利上昇・豪ドル高圧力の影響力が上回ると見ている。

上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

最終更新:7月1日(金)14時0分

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