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NEC、新ナノ炭素材料を発見 飯島澄男氏「CNTとCNHの長所兼ね備える」

EE Times Japan 7月1日(金)11時40分配信

■「他にはない実用性に優れた材料」

 「炭素棒にレーザーを当ててカーボンナノホーンを製造するが、炭素棒に鉄触媒を加えてみると、どうなるかと思ったのが始まりだった。実際に、鉄触媒を加えた炭素棒にレーザーを当てたところ、いつもと違う形状の材料ができていた。電子顕微鏡で分析してみると、一見カーボンナノチューブができたのかと思ったが、詳しく見てみるとカーボンナノホーンのような構造も見えてきた。おかしいと思い、さらに詳しく見てみると、棒状につながっている新しいナノ炭素材料を発見した」

【カーボンナノブラシの構造はこちら】

 NECのIoTデバイス研究所 主任研究員の弓削亮太氏はこう語る。NECは2016年6月30日、新ナノ炭素材料「カーボンナノブラシ」の発見と、その作製に成功したと発表した。

 カーボンナノブラシは、直径2n~5nm/長さ40n~50nmのカーボンナノホーン(CNH)が丸棒ブラシのように、放射状、かつ、繊維状に細長く伸びて集合した「世界初」(NEC)の材料である。サイズは直径約100nmで、長さは約1μ~10μm。「これまで困難だった産業応用で、他にはない実用性に優れた新ナノ材料」(NEC)という。

■CNHより10倍以上の導電性

 カーボンナノブラシは、高い導電性、分散性、吸着性という3つの特長を持つ。電子が流れやすい繊維状構造のため、カーボンナノブラシの抵抗率は球状CNH集合体の約10分の1。電気自動車などに適用すると、充放電速度が従来より10~15%速くなるとする。

 弓削氏は「現状のカーボンナノブラシは、球状CNH集合体の混合物としてでしか作製できていない。そのため、単体で評価ができるようになったら、球状CNH集合体より10倍以上の導電性が期待できる」と語る。

 また、球状CNH集合体と同様に分散性が高く、溶液中でも凝集しない特長も持つ。カーボンナノチューブ(CNT)は分散性が低く、樹脂などの複合材に導電性を持たせるためには、多くの量を付加する必要があった。カーボンナノブラシは、樹脂内部でも凝集しないため、少ない量で複合材に導電性を付与できるとしている。

 単位質量当たりの表面積が高いのも特長である。酸化処理を行い、CNH表面を開孔すると内部空間を利用できるからだ。市販のカーボンブラックは50~100m2/gなのに対して、カーボンナノブラシ+球状CNH集合体の表面積は1700m2/gとなっている。これにより、キャパシターやアクチュエーターの大幅な性能向上が期待できる。

 カーボンナノブラシの作製には、「レーザー蒸発法」が用いられている。炭素棒からなるターゲットにレーザーを照射し、原子状の炭素が蒸発し、その高温化でカーボンナノブラシを生成する。レーザー蒸発法は、球状CNH集合体で活用されている製造方法であり、今回ターゲットとなる炭素棒に鉄触媒を加えることで、生成を可能にした。

 現状のカーボンナノブラシは、研究用途として1日約1gを製造している。しかし、球状CNH集合体の大規模な製造装置では、1日当たり1kgの製造が可能だ。つまり、「カーボンナノブラシでも1日1kgの製造を早期に実現できる」(弓削氏)とした。

■2017年度中にサンプル品を提供予定

 カーボンナノブラシは実用化すると、さまざまなデバイスの基本性能向上や、幅広い分野への適用が期待される。例えば、高い導電性と分散性により、IoT(モノのインターネット)向けに、フレキシブルセンサーや伸縮性を持つデバイスへの応用が考えられる。

 電気自動車やドローンなどに向けては、キャパシターやリチウムイオン電池を想定。高い吸着性により、キャパシターは従来の半分のサイズで2~3倍の充放電性、アクチュエータ―は従来より大きな変形量で、約5倍の応答速度を実現できるという。

 IoTデバイス研究所所長の津村聡一氏は、「当社はソフトウェア側に注力しているが、これからソフトウェアだけで勝つのは、なかなか難しくなってくるのではないだろうか。材料といった深い部分の知見を生かして、盛り上がっていくIoT市場に、当社のデバイス技術を届けていきたい。これが、今後の勝ち筋になると考えている」と語る。

 今後は、大学や材料メーカーなどと連携し、生成機構解明と量産化技術開発を進める。センサーやアクチュエータ―などのデバイス開発も行い、2017年度中にサンプル品を提供予定だ。これらを実現するための、パートナー開拓も進めていくとした。

■飯島澄男氏も登壇

 記者会見では、NEC中央研究所で特別主席研究員で、1991年にCNTを発見した飯島澄男氏も登壇。カーボンナノブラシについて、「CNTは導電性は高いが、電気を多く溜めることができない。CNHは電気を多く溜めることができるが、それを取り出すのが難しい。カーボンナノブラシは、CNTとCNH両方のメリットを兼ね備えている。そのため、導電性を持った複合材やフレキシブルデバイスへの応用に期待したい」と語った。

最終更新:7月1日(金)11時40分

EE Times Japan

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