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知っているようで知らないダニの生態――本当に効果的な対策とは?

ITmedia LifeStyle 7月1日(金)12時44分配信

 「ジメジメとした梅雨時、布団にダニが繁殖する」とか、「ダニ対策には布団掃除機や布団乾燥機が有効だ」など、一般的にダニ対策についての記事や情報番組などを多く目にするこの時期。とはいえ、われわれはそもそもダニについて、「なんとなくいやなもの」というイメージは共有しているものの、ダニがいったいどういう生態なのかについては意外と知らない。

マット式ふとん乾燥機の例

 戦う敵のことを知らないのに、有効な対策が取れるわけがない! というわけで、ここではダニについて、長年研究し続けている、環境アレルゲン info and care 株式会社 代表取締役の白井秀治さんに、ダニの生態について教わってきた。

ーーダニについてぼんやりと“イヤなもの”というイメージはありますが、実際に肉眼ではその存在をほとんど確認することはできません。そもそもダニはどのような生態を持っているのか、まずはそのあたりから教えてください。

白井氏:ダニは家の中で見つかるだけでなく、例えば屋外でも見つかり、その種類は数万種、将来的には数十万種になるであろうともいわれています。これらのダニの多くは、人間との接点はほとんどなく、私たちに直接的な影響をあたえることは多くありません。一方、日本の平均的な家屋を調査すると、数種類――多ければ20種類前後のダニが見つかるという報告があります。しかし、家庭内で見つかるダニのうち、すべてのダニが人に影響を与えるということではありません。布団などで繁殖し、皆さんが家庭で行うダニ対策の対象となるダニは、その一部です。

 ダニアレルギーとして話題になるのは、「チリダニ」というダニです。このダニは、日本の家屋の多くで見つかり、検出されるダニの大半を占めています。このダニは、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、アジアの国々の中でも、ダニの発育に適する温度と湿度が整えば繁殖し、住まいの中から珍しくなく見つかります。ダニが家にいるというと、気分が良くない方も多いと思いますが、ダニが家にいるのは当たり前と思っていただいてもいいくらい、身近な存在です。

ーーつまり、われわれが家庭内でダニ対策をする時に、相手にしなければならないダニというのは、チリダニということですね

白井氏:そうです。日本をはじめ、いくつかの国で行われた疫学調査では、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの症状をお持ちの方では、ダニに対してアレルギーを持つ方が多くいることが報告されています。また、日常の生活環境中のダニの糞(ふん)などの量と疾患との関係についても報告があります。アレルギーの増加には、近年の居住環境の変化以外にも食生活や日常の生活習慣など、さまざまな話題が聞かれますが、ダニによる生活環境の汚染は、多くの方にとって重要なものであると考えられています。

ーーそもそもチリダニって寿命はどのぐらいなんですか?

白井氏:チリダニは、卵から成ダニ(大人のダニ)になるまで、3~4週間、条件が良いとそれよりも短期間で成長します。寿命は2~3カ月といわれていますが、それ以上に長生きするダニもいます。通常・温度湿度ともに上昇する春から夏にかけて増殖します。特に梅雨時は繁殖が活発な時期です。そして、温度/湿度ともに低下する秋から冬にかけては、繁殖活動は低下し、多くは死亡します。

ーー1年のライフサイクルがもうしっかりあったわけですね

白井氏:はい、昔の日本の家は、現代の気密性が高く高断熱で暖かい家屋と異なり、木と障子のような紙でできていました。ですので、外気が寒く空気が乾燥すれば、室内もそれに伴い寒く乾燥します。こういう環境はダニにとっては繁殖しにくい厳しい環境であったと考えられます。しかし、近代的な建築様式と住まい方は、冬であっても室内は暖かく、加湿を行えば、高湿度な環境も保てます。ダニは温度20°C以下、湿度50%以下ではほとんど繁殖できず、多くは死亡します。しかし、人が快適と感じる環境となるように温度を20°C以上にし、加湿して湿度を50%以上にすることは、ダニにとっても快適な環境を作ってしまう、といえるかもしれません。冬でもダニが死ににくい環境が保たれた場合、1年を通じてダニが繁殖を続ける、ということが考えられます。

ーー減りにくいということは、増えやすくもあることにつながるということですね

白井氏:そうですね。例えば、春から夏にかけて増殖したダニが、秋冬に死んだ場合と、秋冬にもさらに繁殖を続けた場合では、翌年のダニの数に違いが出る、そんなイメージを持つことができます。

 チリダニの数をグラフに表すと分かりやすいのですが、昔の日本家屋では、春から夏にかけて上昇し、秋から冬にかけて減少する。しかし現代の住宅と住まい方では、冬に減少するカーブが緩やかになり、下がりきらないまま翌年に上昇する、という可能性も考えられます。

ーー怖いですね

白井氏:また、近年では室内のダニの汚染を把握する際、チリダニの数を数えるのではなく、ダニのアレルゲンを免疫学的な方法で測り、環境汚染の評価をするようになってきました。アレルゲンというのは“アレルギーの原因”または“原因となるもの”と理解いただければいいのですが、“アレルゲンを測定して環境を評価する”とは、ダニの糞(ふん)や虫体、死骸に含まれる特定のタンパク質を免疫学的な方法で測り、汚染を評価する、ということです。

ーーそれはどうしてですか?

白井氏:ダニのアレルギーの方にとって、ダニはアレルゲン(アレルギーの原因)であり、生活環境から取り除くことは重要なことです。例えば気管支喘息やアレルギー性鼻炎では、舞い上がり浮遊したダニのふんや死骸を吸い込むことでアレルギーの反応が起こり、そして症状が発症、あるいは増悪すると考えられています。室内のダニの測定を行い、ダニの数が少なくても、ダニのふんや死骸といった直接の原因となる小さなホコリが多く存在していれば、そこにはダニアレルギーの方にとってリスクとなる汚染、つまりアレルゲンが存在することになります。そのため、汚染を評価する際にはダニではなく、直接の原因であって、呼吸を通して吸い込まれるふんや死骸といった小さなホコリをアレルゲンとして測定をするのです。

 ダニを顕微鏡で観察するのと違い、ダニのふんや死骸の欠片などの不定形なものは、その形からダニのふんであるとか、死骸の欠片であるとか、を目視で判定し、量を明らかにすることは困難です。しかし、免疫という仕組みを用いた測定法が開発されたことにより、近年では、ダニのふんに含まれる特定のタンパク質を測定し、環境汚染の指標としています。

ーー人に直接影響があるものを測定している、ということですね

白井氏:はい、ダニのふんや死骸は、ダニよりも小さく軽いため舞い上がりやすく、舞い上がったものは呼吸を通して吸い込まれる可能性が高くなります。室内のダニアレルゲンの汚染量とダニアレルギーの関係については、国内外からいくつもの研究報告がされています。

ーーでも、ダニが増殖しないように、ダニを殺すという対処法は大切ですよね

白井氏:環境中でダニが増えればそれに伴いダニのふんによる汚染が増え、やがて死骸の量も増えていきます。対策として、例えば増殖するダニを布団乾燥機などで殺し、増殖を防ぐということが考えられます。しかし、殺しただけではそこに死骸が残りますので、対策としては不十分です。ですので、殺したダニをそのまま放置するのではなく、掃除機を用いてダニの死骸や糞を吸引し取り除く。そういうケアが大切だと思います。

ーーところで、チリダニについて繁殖しやすい条件について教えてください

白井氏:ダニの繁殖に必要な条件として、温度、湿度、エサ、そして住処という条件が整う必要があります。ダニは温度25°C、湿度65~75%前後で活動が活発になりますが、1年の中では春から夏、とくに梅雨時は、繁殖が活発な時期です。

ーー気温が25℃で、湿度が65~75%ですか

白井氏:人が快適と感じる環境はダニにとっても快適です。それよりも温度や湿度が高くなる、あるいは低くなると少々元気がなくなります。例えば、8月の気温湿度ともに高く不快指数が高い時期には、人も元気がなくなりますが、ダニも少々元気がなくなります。

ーーそうなんですか

白井氏:梅雨時に繁殖が活発になり増加したダニは、エサがあればエサを食べ、ふんをして、私たちの生活環境を汚染していきます。家の中で、とくにダニが多いのは布団などの寝具です。ベッドのマットレスや布製のソファー、敷物などからも多く見つかります。これらは、人が接することでダニの餌が豊富になりやすいということと、もう1つ、ダニの住処になるために、その中に“潜ることができる”、という共通した条件があるんです。

ーーなるほど。でも、なぜ潜るんですか? 例えばフローリングの床や机の上とかでも条件がそろえば同じような気がするのですが

白井氏:ダニが増える場所には、温度、エサという以外にも住処として活動できるということが必要なんです。例えばフローリングや机の上には、ダニが潜る場所がありません。仮にテーブルの上にダニを歩かせその横に名刺を置きますと、多くのダニは名刺の下に潜っていきます。明るいところより暗いところへ移動するという習性ですね。

ーーそういう生き物なんですね

白井氏:ふとんや毛布でも同じです。布団の表面にダニを置けば、生地のすき間や縫い目から内側へ潜りますし、毛布では毛足の先から奥の深いところへ潜っていきます。また畳の上に敷物を重ねていると、その重ねた下からはダニが多く見つかります。ダニが潜る場所というのは周囲の湿度変化の影響を受けにくい場所、ということが言えるかも知れません。

ーー湿度の高いところで活発になるということにも関係しているのですか?

白井氏:チリダニは、乾燥した環境では、体内の水分を失います。そしてそれが続くと干からびて死んでしまいます。外部環境の影響をすごく受けやすいんです。

ーー人間の体の中は90%が水だとかっていうのと同じで、チリダニも体の中も水分を取り込んでいるということなんですね

白井氏:はい。ダニの水分補給は人のように口から取り込むのではなく、例えるなら、紙のようなもので、乾燥したとこに置けば乾きますし、湿気の多い所に行くと水を吸いますよね。それと同じで、チリダニの体の表面そのものが湿度の高いところでは水分を吸収します。逆に乾燥した場所に行きますと、自分の体から水気が奪われてしまい、最後には、干からびて死んでしまうんですね。

ーーそう考えると、生き物としては非常に弱いんですね、チリダニは

白井氏:例えば、人間であれば湿度50%って、快適に感じる人が多いですよね。でも、チリダニにとっては、そこはもう厳しい環境の境界線です。湿度50%を下回れば徐々に体の水分がなくなっていき、最後は乾いてセミの抜け殻のような状態で死んでしまうんですね。

ーーダニってどれくらいの大きさなんですか?

白井氏:例えば身近なもので表すと、多くの人が使うシャープペンシルの芯の直径は0.5mmですが、ダニの大きさはメスの成ダニ(大人のダニ)で、体長が0.3~0.4mmほどです。

ーー肉眼では確認するのが難しいサイズですね

白井氏:肉眼ではなかなか確認できない大きさです。そんな小さなダニですから周りの環境の影響をすぐに受けます。例えば周囲が暑くても寒くても、乾燥していてもダニの活動や生死に影響がでます。

ーーなるほど、そうなんですね

白井氏:以前、実験をしたことがあるんですが、チリダニにスチームクリーナーで蒸気をあてると即死します。アイロンを当ててもやはり即死します。高温には弱いですね。ですので、例えばふとん乾燥機で50°C以上の温度で加熱すれば、20~30分経つと死亡しますし、さらに高温になればその時間は短縮されます。

ーーマット式の布団乾燥機などであれば、全体的な加熱できればかなりの確率でチリダニは殺せそうです。ということは、最初のテーマに戻りますけど、チリダニは対策さえちゃんと実行すれば、そんなに難しいことではなく、誰でできるものなんですか?

白井氏:はい。ダニ対策って、生きているダニへのアプローチと、死骸やふんといったホコリを取り除くことを組み合わせただけで、実は難しいことなんてないんです。環境整備とか言ってしまうと、掃除方法やインテリアの工夫とか、確かにノウハウはあります。でも、母親教室などで、考え方と家庭内でできる対策をお伝えすると、みなさん、「できるじゃん!」っていって帰るんですよね(笑)。

ーーちなみに、チリダニのエサというのは主にどういったものなのでしょうか? よく人のフケを食べるとかって聞きますけど

白井氏:病院でアレルギーの血液検査や皮膚検査をされる時には、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニって検査シートに記載されているのをご覧になったことがある方も多いと思います。チリダニというのは、生物学的には“チリダニ科のヒョウヒダニ属のヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ”となるんです。

ーーチリダニ科のヒョウヒダニ属のヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ

白井氏:話を戻すと、室内塵中に含まれる有機物がダニのエサになるのですが、主には人のフケや垢などです。このヒョウヒダニの“ヒョウヒ”って、人の皮膚の“表皮”(ひょうひ)なんです。

ーーありとあらゆる物を食べる

白井氏:余談ですけど、一応、ヒョウヒダニの増やし方もJIS規格でちゃんと決まってまして(笑)

ーーなんのためにですか?

白井氏:ふとん綿などの繊維製品の試験方法として、ダニの忌避(きひ)や増殖抑制といった試験がJISで規定されています。試験を行う際には、当然、ダニが必要です。ですので、試験に用いるダニについても培養方法が規定され、いくつかの施設では、それに従い培養されています。

ーーへぇ。でもそうなると、エサが人間のフケや垢ということは、人間がいなくならない限り、ヒョウヒダニを絶滅させることは難しいですね

白井氏:そうですね。人が生活を始めるとその家ではダニが増えていきます。しかし人の生活がなくなり空き家になるとエサがなくなるので、ダニはほとんどみつからなくなります。

ーー空き家にはいない。それは意外ですね

白井氏:人が住んでいないとフケや垢といったエサとなるものが多くないので、ヒョウヒダニが繁殖する環境ではなくなっていきます。

ーー空き家や新築にいないのは分かりましたが、いつからかダニが増えてきますよね

白井氏:新築の建物も、最初はダニはいません。でも、施主の方や内装工事の職人さんなど、人の出入りがあると、その方々の服や靴下などからたまたま落ちてみつかることもあります。でもそれらは極少数で、エサがなければ死んでしまいます。多くの場合、引越しの際に以前の住まいで使用していた寝具や家具を持ってくる時に、ダニも一緒に連れてきてしまうんですよ。

ーー実際、人が暮らしている家のなかで、ここに一番いるという場所はどこなんでしょうか?

白井氏:家庭の中ではやっぱり寝室の寝具ですね。布団、毛布、ベッドならマットレス。居間に滞在時間が長い場合、布製ソファーやそこで使われているクッションからダニが多く見つかります。子ども部屋では、ヌイグルミからも多く見つかります。そして敷物がある場合、とくに畳にゴザやカーペットを重ねているとか、こういう場所も多いですね。寝具の場合、毎日人が触れるものでダニの餌が豊富になりやすい、そして寝ることによって汗からくる湿気があってと、ダニの繁殖に必要な条件が整うんです。またベッドの場合では、マットレスの上にパッドが重ねられ、シーツが掛かり、その上に掛け布団が重なります。多くの家庭では、日中それらが重なったままで、布団やマットレスには湿気がこもります。そうするとダニにとっては、快適な環境になってしまう可能性が高くなります。

ーーでは、そういったヒョウヒダニの棲息状況などは分かったところで、結局われあれは今後どのようにダニ対策を行っていったらよろしいでしょうか?

白井氏:まず、ダニ対策というと多くの意味を含んで使われています。例えば、ダニを殺すことも、取り除くこともダニ対策ですし、アレルギー対策としてダニ対策を考えれば、ダニのふんや死骸といったダニよりも小さなホコリを取り除くこともダニ対策といえると思います。でも、難しく考えることなく、家の中のダニが減るとか、糞などのホコリが少なくなり、それらとの接触の機会が減る、それでいいと思います。

ーーそうなんですね。家電でも対策できそうです

白井氏:現在、家庭で行われるダニ対策としては、掃除機がよく用いられます。これは、掃除機をかけることでふとんのダニが吸い取られ減少すること、そしてそれを続けることによって気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの症状が改善される、といったことが医学会で報告され、それを根拠に医師からも家庭で行うダニ対策として指導されています。

ーー掃除機で吸い取るんですね

白井氏:ふとんへの掃除機がけは、ダニを吸いとる効果とともに、ダニのふんや死骸といったアレルゲンとなるホコリも吸い取るので、布団からそれらを減らしていくことが期待できるんです。そしてこの掃除機がけは、繰り返すことで、より効果が期待できます。しかし、掃除機がけを面倒と思う方もいて、日ごろの管理として取り組んでいる方は、多くないと思います。母親教室などで主婦にお話を伺うと、掃除機がけに取り組む方よりも、空気清浄機を使用している方のほうが多いという印象があります。

ーー空気清浄機は、ダニ、カビ、花粉が気になる方や、ハウスダストの対策に効果的と思えますが……

白井氏:空気清浄機は、空気中に浮遊しているチリなどの粒子をフィルターで濾過(ろか)して、きれいな空気を排出する、そういうものですよね。つまり浮遊しているものは取り除けますが、床に落ちているものや、布団やソファの中に潜むダニを減らすことはできません。よく考えれば当然なのですが……。

ーー要は、効率的なダニ対策には繋がらないということですね

白井氏:ダニは、常時空中を飛んでいることはありません。そしてダニのふんや死骸などの小さなホコリは、例え舞い上がっても、時間が経つと床に落下します。例えば、空中に浮遊するダニのふんに含まれるダニアレルゲンの濃度を測定すると、睡眠中の枕元では、通常居間などに浮遊する量に比べだいたい8倍から10倍にも上昇することが国の研究機関の検討で報告されています。また、布団の上げ下ろしをすると、一時的に約1000倍にも上昇することも報告されています。このように空中に浮遊している場合の対策として、空気清浄機は役立つかもしれません。但し浮遊したダニのホコリは、概ね1時間で床に落下することも別な研究として報告があります。

ーー1時間もすれば、それらは下に落ちてしまうということですね

白井氏:そうなんです。ですのでダニ対策としては、ダニが生息する場所であって、ダニの糞や死骸などのホコリが発生する場所、物に対して、対策をとっていただきたい、っていつも考えています。多くの家庭では、布団ってダニの温床になりやすく、糞や死骸などが多く存在し、そしてそれらがホコリとして空中に舞い上がる大きなアイテムの1つです。寝室、寝具は皆さんが1日の約4分の1から3分の1もの長い時間、滞在し、接触していますよね。ぜひ、布団、寝室に対してダニ対策の重きを置いていただきたいと思います。

ーーとなると、なによりもまずは掃除機をマメにかけることが大切ということですか? 例えば、週に最低でも何回ぐらいかけたほうがいいとかそういう決まりははあるのでしょうか?

白井氏:掃除機がけを行う際には、週に1~2回、1m2あたり20秒が目安です。ノズルを密着させ、ていねいに表面から吸引します。

ーー1回20秒でいいんですか? かなり短くていいんですね

白井氏:例えばシングルサイズの敷きぶとんの場合、縦200cm×横100cmですので、面積は2m2、つまり片面40秒掃、除機をかけます。表裏合わせて80秒ですね。

 この掃除機がけの時間を2倍、3倍と長くしたら、ダニやふんが2倍、3倍取れるかというと、そういうことにはなりにくいんです。どういうことかというと、掃除機の吸引って、表面のダニやホコリを吸引しますが、布団の内側の深いところからは、多く回収されないんですよ。掃除機をかけ始め20秒程度の時間で、表面にあるダニやふんなどのホコリの多くは回収されますから、それ以上に長い時間をかけるのではなく、繰り返すことが大切なんです。

ーーなるほど。1週間に1回、しかも20秒ほどなら誰でもやれそうですね。繰り返すっていうのは、1週間に行う回数を増やすということですか?

白井氏:掃除機で回収されるダニの数が、繁殖して増えてくるダニの数を上回れば、ダニは減少していきます。逆にダニの繁殖以上にダニを除去できなければ、布団内のダニ数は増えていきます。週に1回行っていた掃除機がけでダニの数が減らなかった方でも、掃除機がけの回数を増やすことで、ダニの回収数が減ったというケースもあります。住まい方や季節要因などケースバイケースなんですけど、繰り返すこと、そして継続することが大切です。

ーーこれでふとん表面に関するダニ対策は掃除機が有効だということが分かりましたが、白井さんの書かれたダニ対策に関する論文を読むと、シーツがフィルターとなって、ダニが掃除機で効率良く吸い取れないという結果が出たと書かれていましたが、やはりシーツの上からではなく、布団に直接掃除機を掛けた方がいいのでしょうか?

白井氏:ふとんの側生地表面やシーツの表面にいるダニは、掃除機で高率に回収できますが、生地の下にいるダニは、ダニが生地に引っかかり効率よく吸引できないんです。網戸があるとそこに引っかかって通れない、というイメージです。ですので、布団に掃除機をかける時には、シーツを外して、布団表面に直接掃除機をかけることがよいと思います。


ーーということは、布団の中に潜むダニも、布団の生地がダニを引っ掛けるので吸い出せないのでしょうか?

白井氏:ふとんの生地がフィルターになってダニが通過しにくいことは、シーツを通してダニが吸いだしにくいことと同じです。そしてもう1つ、掃除機の吸引力ってふとんの深いところへいくほど弱くなりますから、掃除機がけでふとんの中綿の深いところに潜っているダニ全てを取り除くことは短期間では難しいと思います。しかし、ふとんへの掃除機がけは、表面のダニを除去し、そしてアレルゲンとなるダニのふんや死骸も減らしていくので、掃除機がけを繰り返し行うことは、ダニの汚染の少ないふとんを作る上で、とても大切です。

ーーアレルギーの原因として重要なふんや死骸を除去するためにも、布団の表面への対策を行うことって大切だ、ということですね

白井氏:ええ、その通りです。そしてもう1つ。布団表面に掃除機をかけることで、フケや垢といったダニのエサとなるものを除去する効果も得られれば、ダニが繁殖しにくくなる。そんな効果も期待できると思います。

ーーところで、天日干しではダニが死なないって聞きますが、ふとんの天日干しはダニ対策に効果があるんでしょうか?

白井氏:ふとんを日に干して表面の温度が上昇すると、中綿(なかわた)内に潜むダニは、温度の低い裏側へ移動します。1年を通して布団の表面温度が、ダニが死滅に至る50°C以上に上昇することは多くありません。もしダニが死ぬ温度へ上昇したとしても、日のあたらない布団の裏側は、表側に比べ温度が低いままです。ですので天日干しでは、布団全体のダニを死滅させることは難しいと思います。

ーーでは、天日干しはしなくてもよい?

白井氏:いいえ、天日干しは、例えダニが死ぬまで温度が上昇しなくても、布団を乾燥させることができれば、ダニが繁殖しにくくなる、そんな効果が期待されます。ですから、天日干しは行ったほうがよいと思います。

ーー今の梅雨の時期は、布団がなかなか干せませんよね。また梅雨時に限らず、最近は布団が干せないマンションがあります。こんな場合、どういう対策があるでしょうか?

白井氏:そんな時には布団乾燥機を用いる、ということも選択肢だと思います。天日干し同様に乾燥によるダニを増えにくくする効果ですね。そして、布団を加熱できれば、殺ダニ効果が期待されます。

ーー布団乾燥機にもいろいろな種類があると思いますが、どんなタイプを選ぶのがいいのでしょうか? ダニ対策に有効な条件などもあったら教えてください

白井氏:先ほどもダニの生態のところで申し上げましたが、ダニはだいたい50°C以上になった場合に20~30分時間経過すると、ほぼ全てのダニが死滅します。60°Cを超えればさらに短時間で死亡します。ただし、ダニは熱いところを避け、温度の低い方へ移動しますから、ふとん全体が高温に加熱されることが必要です。

ーーつまり、ふとん全体をなるべく高温にすれば、それだけふとんに潜むダニはすべて死ぬということですね

白井氏:極端なことを言えば、100°Cのお湯をかけたらダニは即死します。アイロンやスチームクリーナーなど、人間が触れて火傷をするような条件であればダニはほぼ即死です。

ーーただ、さすがにマットレスや布団にスチームクリーナーを吹き付けることはできませんし、アイロンでふとん全体を60°Cの高温にすることは不可能です

白井氏:そうですよね。そもそもふとんは人が寝るときに使う保温材と考えれば、綿の中の空気は断熱層ですから、なかなか熱が伝わらないですよね。

ーーアイロンなんてそんな長時間かけたら焦げてしまいます

白井氏:スチームクリーナーも蒸気が浸透することはいいのですが、その後に布団をしっかりと乾燥させたいので、やはり、ふとんの加熱にはふとん乾燥機を用いることが、都合が良いのかなと思います。

 ふとんの厚みや、中綿の材質によって熱の伝わり方は違いますが、ダニ対策として考えれば、ふとん全体がムラなく50°C以上に加熱できることが望ましいと思います。布団乾燥機には、布団の加熱方法が異なるものがあるようですので、そのあたりを考慮して選択されることも大切かと思います。

ーーノズル式は手軽ではありますけど、吹き出し口の周辺だけが暖かくなるだけで、布団全体が高温にはなりづらいですからね。ちなみに、布団乾燥機の使用頻度は、どれくらいで考えればいいのでしょうか?

白井氏:現在のところ、ダニ対策の具体的な数値はありません。将来的には、具体的な頻度が示せるようになるかもしれません。しかし、例えば布団乾燥機の使用目的を生きているダニを殺すこととして考えれば、1カ月に1回以上は熱処理をしたいと思います。なぜかといえば、ダニは卵から成虫になるまでだいたい4週間程で、その後、1~2カ月の寿命があるとい言われています。つまり、このライフサイクルのどこかで処理をしたい。でもこれは机上の論で、実際には1回の乾燥機の処理で全てのダニを殺すことはできないかもしれませんし、掛け布団や毛布など、他からの汚染も考えられます。ダニの成長も温度や湿度の条件がよければ、4週を要せず短縮されます。例えば、アメリカのアレルギー学会では、55°Cでの加熱を毎週行うことが言われています。これらのことからも1カ月に最低1回、できれば毎週行えれば、よりよいのかもしれません。乾燥したふとんで寝るのは快適ですから、大いに使用されてはいいのではないでしょうか。

ーー乾燥機を使用したときに、気をつけることはありますか?

白井氏:乾燥機での処理後には、布団表面に掃除機をかけ、表面からダニの死骸を吸い取ることを忘れずにしていただきたいと思います。

ーーちなみにふとん策は基本的に敷き布団に話が集中しがちですが、当然掛け布団もやった方がいいんですよね?

白井氏:その通りです。掛け布団、そして冬であれば毛布やブランケット、タオルケット、シーツ、枕も含め、全体で考えてることが大切です。先ほどの掃除機がけの話題に戻れば、敷き布団だけに掃除機をかけてダニを減らしても、その他でダニが繁殖し、そこにふんや死骸が溜まっていては、ダニ対策の目的が十分に果たせません。

ーーあと、特にこの時期はふとん対策した方がいいという時期みたいなものはあるのでしょうか? 今回梅雨時ということでお話は聞いてますが、それ以外の時期で特に対策をした方がいい時期みたいなことがありましたら教えてください

白井氏:梅雨時は、温度湿度ともにダニの繁殖が活発になる条件がそろう時期ですから、この時期にダニ対策を行うことは大切です。そしてもう1つ、実は秋から冬にかけても注意が必要だと考えています。多くの家庭では、冬場使用していたふとんを夏の間、押入れで保管します。この押入れで保管しているふとんでダニが繁殖していく、ということがあるんです。秋から冬に寒くなり、押入れからふとんや毛布を出して使用する時に、そのふとんではダニが大繁殖していた、ということがあるわけです。ダニが繁殖していることは、目で見て分かりません。ダニが繁殖したふとんや毛布は、ダニのふんや死骸などのアレルゲンとなるホコリを部屋の中に飛散させることも心配されます。そのため秋冬に押入れから寝具を出して使用する際には、ふとん乾燥機や掃除機を用いてしっかりとダニ対策を講じていただきたいですね。

ーーつまり、梅雨時の繁殖への対策と同じように、秋のダニ対策も大切なんですね

白井氏:以前にある研究で、お部屋と寝具のダニアレルゲンを測定し、1年間の汚染量の推移を観察した家庭がありました。秋のある時に、寝室のフローリング上のダニアレルゲン量が上昇したことがあったんです。何か生活に変化がありました? ってお話を伺うと、寒くなったので押入れから毛布を出して使用してる、というお話で。すぐにその毛布を調べたら、ダニアレルゲンの汚染が高く、その毛布の使用を中止したら、床のダニアレルゲン汚染は、少ない状態で維持できた、ということがありました。

ーーあとは個人的に気になるのがペットを飼っている家庭ですが、ダニが多く棲息していそうですけど、そのあたりはどうなんでしょうか?

白井氏:以前に犬や猫を飼っている複数の世帯について、ダニのアレルゲン汚染を調べたことがあります。ペットを飼っている家ではダニが多いっていうイメージをもたれる方は多いようですが、ペットを飼っているからダニアレルゲンの汚染が多い、ということはありませんでした。むしろ、ペットを飼っていない世帯よりも少ない印象でした。それらの世帯では、掃除回数を日誌につけてもらい、それを集計しましたが、皆さん、ペットの毛が抜けることへの対処として、週に2回以上の掃除をされていました。恐らく、このお掃除の頻度が多かったことがダニの汚染を少なくしたのかもしれません。

ーー意外ですね

白井氏:家庭内ではダニの繁殖場所の有無、それらへの掃除も含めた管理などのダニ対策によって、ダニの数やダニの糞や死骸といったアレルゲン汚染量に違いが現れます。ダニの住処になるインテリアがあっても、適切な管理が行われていれば少なく維持することも可能です。住まいのインテリアは変えられなくても管理方法は工夫できる、あるいはインテリアの工夫を行うことで管理に負荷をかけない、こういう考えがあります。どちらを選ぶのかに決まりはありません。そして、掃除道具や家電製品などを上手に用いることも、ダニ対策を行う上での工夫での1つです。

 今回専門家である白井秀治さんにその生態について教えてもらうことで、ダニというものがどういうものであるか、あらためて理解いただけたと思う。最後にまとめとして、ダニの生態やその対策にとって分かったことを以下に箇条書きで記しておこう。

●まとめ:ダニの生態と布団対策

・家庭内からは、数種類、多ければ20種類程度のダニが見つかる
・家屋内で見つかるダニのうち、大半を占めるのがチリダニ
・チリダニは、多くの人のアレルギーの原因として報告されている
・アレルギーの原因としては、チリダニ科のヒョウヒダニのふんや死骸が重要
・ダニは卵から成虫になるまで3~4週間、寿命は2~3カ月
・梅雨から夏にかけて、最も繁殖が活発になる
・ダニは気温が25°C前後、湿度が65~75%の環境で活発に活動する
・ダニは50°C以上が20~30分続くと死亡する
・ヒョウヒダニのエサは、人のフケや垢
・ふとんの上げ下ろしで空気中のアレルゲン濃度(ふんや死骸による)が居間などの空間に比べ約1000倍にも高まる
・ふとん掃除の目安は1m2あたり20秒。表面のふんや死骸を取り除く
・ふとん乾燥機はムラなく温度が50°C以上になるものを
・布団乾燥機は1カ月に最低1回程度やる

最終更新:7月4日(月)13時46分

ITmedia LifeStyle

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