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酒がダメな体質の人に「いたずら」で飲ませる…「殺人未遂」になるのか?

弁護士ドットコム 7月1日(金)10時13分配信

酒が体質的に飲めない人に「いたずら」で飲酒させると最悪死ぬーー。そんなつぶやきがTwitterに投稿され、話題になった。

投稿者は、体質的に酒が飲めないが、以前、そのことを知っている人に、こっそり酒が入った飲み物を注文されたそうだ。匂いで気づいて飲まずに済んだが、「あれ飲んでいたら夜中じゅう吐くわくだすわ寝込むわで大変なことになっていた」と振り返る。

投稿者いわく、こっそり酒を飲ませようとした人は、「酔ったらどんな風になるのか見たかった」という程度の「いたずら心」だったらしい。しかし投稿者は、「人が体質的に無理だと言っているものを黙ってこっそり飲ませたりするのは最早"いたずら"などというものではない」「最悪の場合死に至る」と警告している。

このツイートに対しては、「私は服用する薬の関係上、飲酒ができないのですが、もしこっそり飲まされたら意識不明になって死んでるかもしれません」というコメントや、「ここまできたらはっきりと『殺人未遂』と言っていいのでは。『傷害罪』じゃ生ぬるいし」という指摘もあった。体質的に酒が飲めない人に、こっそり酒を飲ませたり、飲酒を強要することは、「殺人未遂」にあたるのか。坂口靖弁護士に聞いた。

●「殺人未遂罪が成立することは原則的に無い」

「結論から言うと、殺人未遂の罪責を問われる可能性はほとんど無いと考えられます。

殺人未遂の責任を問われるか否かというのは、『人の死亡という結果を引き起こすと考えられるような危険な行為を実行したか否か』という点で判断されます」

坂口弁護士はこのように述べる。

「この点、世の中には、『体質的にお酒が飲めない』という方は大勢いらっしゃるように思われますが、このような方々においても、通常『飲酒した場合、直ちに死亡してしまうような重大な結果につながる』というものではなく、『少量で泥酔してしまう』、『体調が悪くなってしまう』、『寝込んでしまう』、『吐いてしまう』などの程度であることが通常であるように思われます。死亡にまで至ってしまうというのは、極めてレアケースであり、飲酒=死亡という可能性は極めて低いものと考えられます。

したがって、単に、『体質的にお酒が飲めない』という事情があったのみでは、いたずらでお酒を飲ませてしまったとしても、『人の死亡という結果を引き起こすと考えられるような危険な行為を実行した』とは到底評価できないため、殺人未遂の責任を問われることは基本的には無いものと考えられます」

ただし、「特殊な事情」がある場合は結論が異なる可能性があるそうだ。

「例えば、『特殊な薬を服用していて、飲酒した場合、死亡する可能性が極めて高い』などという『特殊な事情』が存在し、飲酒させようとした人物も『その特殊事情を知っていた』という場合においては、飲酒させる行為は、『人の死亡という結果を引き起こす危険な行為』と評価できることから、殺人未遂の責任を問われてしまう可能性は当然にあります。

ただ、こうした事情がない限り、結局のところ、仮に『体質的にお酒が飲めない』という人であっても、飲酒して死亡するまでの状況になることは極めてまれでしょう。したがって、『飲酒させる行為』というのは、『人の死亡を引き起こすような危険な行為』とは、通常評価出来ず、殺人未遂罪が成立することは原則的に無いということになります」

殺人未遂罪以外の犯罪が成立する可能性はあるのだろうか。

「たとえば、イタズラで飲酒させることによって、体調不良などに陥らせれば、その人の生理機能や健康状態を害したとして、傷害罪が成立する可能性はあると考えられます。また、この場合、民法上の不法行為(709条)が成立し、民事上の賠償責任が生じることになりますので、治療費などを支払わなければならなくなる可能性は十分に考えられます」



【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。

事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URL:http://sakaguchiyasushi-keijibengo.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:7月1日(金)10時13分

弁護士ドットコム