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英EU離脱/円高の長期化懸念-インバウンド需要鈍化

日刊工業新聞電子版 7月1日(金)7時30分配信

【“観光立国”実現 道険し】

 英国の欧州連合(EU)離脱問題で長期化しそうな円高は、日本の“稼ぐ力”に貢献してきた訪日外国人旅行(インバウンド)需要にも影を落としかねない。年初来の円高基調を背景に同旅行者の伸び率は鈍化し、1人当たりの旅行支出も減少している。この傾向が定着する懸念がある。また同旅行者の受け皿として期待される「民泊サービス」の制度づくりも中断している。円高是正と規制改革の推進なしに“観光立国”実現は難しい。(編集委員・神崎正樹)

 政府観光局によると、2015年度の訪日外国人旅行者は前年度比45.6%増の約2136万人と、初めて2000万人の大台を突破。これを受け、政府は20年に2000万人としていた同旅行者の目標を4000万人に倍増した。

 だが、その旅行者の伸び率が鈍化。2、3月は前年同月比で30%台、4、5月は10%台にとどまる。4月に起きた熊本地震の影響は限定的で、中国人旅行客による「九州方面へのクルーズは引き続き好調を維持している」(政府観光局)という。問題は円高だ。

 観光庁によると、1-3月期の1人当たりの旅行支出は前年同期比5.4%減の16万1746円に減少。中でも同旅行者消費額の4割を占める中国は、同11.8%減の26万4997円と大幅な落ち込み。同庁は「為替レートの円高方向への動きも影響している」と指摘する。

 また日本総合研究所は、訪日中国人旅行者について「家電製品、高級品の大量購入(爆買い)は一巡しつつあり、今後は消費額の大幅な増勢は期待しにくい」とも指摘。化粧品、医薬品、トイレタリーなどの非耐久消費財やゴルフ場、テーマパークなどサービス消費に需要がシフトしているとし、「幅広いインバウンド需要の取り込みが、これまで以上に重要」だとみる。

 他方、住宅を宿泊施設として活用する民泊サービスは、年間営業日数の設定をめぐり、事業拡大を狙う不動産業と顧客を奪われるホテル旅館業が対立。両業界に票田を持つ与党に配慮し、政府は制度設計づくりを参院選後に先送りした。

 20年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、インバウンド需要を拡大したい安倍政権。円高是正と規制改革の推進は、経常収支の黒字幅を拡大する上でも参院選後の大きな課題になる。

最終更新:7月1日(金)8時5分

日刊工業新聞電子版