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トヨタとマツダが「品質工学」にアクセルを踏む理由

ニュースイッチ 7月1日(金)11時50分配信

全体視点で技術の停滞打破

 ヨタ自動車とマツダの技術者らが、最適な設計や生産を予測する品質工学にアクセルを踏み込んでいる。トヨタはエンジン設計に相次ぎ導入し、マツダは車体用金型の生産などに領域を広げた。エレクトロニクスの急速な進歩やグローバル競争でニーズも高度化・多様化し、限られたコストの中で品質を高める発想がかつてなく求められている。品質工学でモノづくりを革新しようとする技術者の最前線に迫った。

 「まだ部品レベルにとどまるが、経験のない不具合の現象も適切なデータを計測し解析する手法を築いた」。トヨタのパワートレーンカンパニーの村上伸之氏と三宅慧氏らは、エンジン部品のクランクシャフトに生じる騒音や過熱などの不具合を設計の初期に分析できる手法を構築。6月下旬に東京都内で開かれた「品質工学研究発表大会」で報告した。

 日本の製造業は円高やリーマン・ショック以降、コスト削減を優先し、複雑化する製品やシステムを全体で把握する開発力が低下したと指摘される。村上氏は「エンジン全体の最適な働きから考え、部品を設計したい」と発想の転換を図る。

<不良2000万円低減>

 トヨタと同様、前年の同大会に比べ発表数を3件から5件に増やしたのはマツダ。躍動的なデザインの新ブランド「魂動」にも、品質工学を生かす。ツーリング製作部の尾浜春樹氏らは、バンパーの成形時に表面に生じる不良線(コアライン)の要因を、効率的な実験で絞り込んだ。

 低コスト・短時間で実験するため、複数の生産技術者が多様な要因をイメージで採点したデータから解析する「バーチャル(仮想)パラメータ設計」(VPD)を採用した。割り出した最適設計で確認実験すると、コアラインを抑制できた。実用化すれば、年間約2000万円の不良低減につながる。

 尾浜氏は「CAE(コンピューター利用解析)による予測が難しい実験ではVPDを広く活用したい」と意欲を示す。

 同大会では光ガラス(秋田県湯沢市)技術開発部の佐藤幸太氏らが、内部透過率の計測により高品質な光学ガラスの最適な生産条件を実験で予測し、量産で予測が実現した成果なども発表された。安定生産までの期間とコストを3分の1に低減し、精密測定技術振興財団金賞を受賞した。

 品質工学会の谷本勲会長(アルプス電気技術顧問・元専務)は「相反する品質とコストを求める矛盾を品質工学の『マクロ(全体)視点』で解決し、技術の停滞感を打破したい」と意気込む。

最終更新:7月1日(金)11時50分

ニュースイッチ