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[ルポ]トラファルガー広場を変えた「蝶の夢」

ハンギョレ新聞 7月1日(金)7時41分配信

 29日午後、ロンドンのトラファルガー広場がしばらく息を止めた。そして、日本軍「慰安婦」ハルモ二(おばあさん)問題の正しい解決を訴える欧州平和紀行団「蝶の夢」のキャンペーンに注目した。

 黙々と働く英国人たちも、各地から足を運んだ旅行者たちも、野外学習で訪れた小学生たちも、ナショナルギャラリーを観覧していた中学生たちも、皆が歓声を上げた。ギャラリーの安全を担当するガードマンたちも、広場の清掃員たちも、広場で1人芝居をしていた芸術家たちも集まり、署名台の前に列を作った。冷たい雨の中、時には風が傘をひっくり返していたが、彼らは気にしない様子だった。

 蝶の夢はこの日、パリで行ったデモとは異なり、ロンドンでは支持発言などを省略して全身でメッセージを伝えた。午後1時、彼らは広場に到着すると、すぐ広場とナショナルギャラリーの間の広いスペースに舞台を作った。トラファルガー海戦で勝利したネルソン提督の銅像や政府機関が並んでいるウェストミンスター通りと、その端にあるテームズ川沿いのウェストミンスター寺院を見下ろす、ロンドンの、いや、(大英)帝国の心臓ともいうべき場所だ。

 ナショナルギャラリーを背景に署名台10台が設置され、署名台の前に「日本軍性奴隷問題の正しい解決を」「韓日政府の12.28合意の撤回」などと書かれたプラカードが並べられた。人通りが最も多い場所に設けられた署名台の横の石畳には、日本軍慰安婦の実態と日本政府の態度を説明し、ハルモ二たちの意思と国民の意見とはかけ離れた「12.28合意」の内容を示す大型壁新聞が置かれた。その前を通る人たちは歩みを緩めてプラカードや壁新聞、配布資料を読み進め、署名台の前まで行くと、足を止めて署名を行っていた。自由奔放だったパリジエンヌに比べ、ロンドン市民は真剣だった。

 小道具の配置が終わると、参加者はすぐにフラッシュモブの準備に入った。リードダンサーのジンヒは訪問着の韓服(韓国の伝統衣装)を、高校生のジユンは少女用の韓服を、ジュンヨンは未婚男性用の韓服を、私たちは改良韓服を、テミンはファッション韓服をそれぞれ身に付け、アルムなどは虎の服を、チャンは猫の服に着替えた。すぐに「シャッフルアリラン」の軽快で明るいリズムが響き渡った。

 ジンヒが先頭に出て挨拶をした後、すぐに踊りはじめ、1小節が終わるとジユンとジュンヨンがその後ろに、次の小節が終わるとテミンらがその後ろに続いた。10番目の列が埋まると同時に隊列が完成し、広場で本格的な踊りが始まった。まじめで重いデモになれていたロンドン市民が一人、また一人と足を止め、隊列が完成する頃には直径50メートルほどの半円形が出来上がった。

 小学生の観客たちは、アップテンポで明るいシャッフルアリランのクセになるリズムとダンスに合わせ、思い思いに踊り出した。(歌手)サイのダンスを真似る子も、3拍子のリズムに合わせてステップを踏む子もいた。子供たちは引率者の呼びかけにもかかわらず、席を離れようとしなかった。引率者は段々激しくなる雨脚を心配している様子だった。ギャラリー出口側の階段の上では、中高生たちが歓声を上げていた。

 1回目のフラッシュモブが終わると市民が署名台に押し寄せてきた。ほとんどが日本軍慰安婦の実像について知らない人たちだった。(日本軍慰安婦という)言葉は聞いたことはあっても、あれほどすさまじい人権蹂躙の内容までは分らなかったのだ。この問題の真実を知らせるデモが開かれたのは、英国では初めてのことだった。大韓民国政府は、日本によって歪曲された歴史を正し、世界の市民の良心に訴える、この問題を正しく解決するために、何も行っていなかった。国内で「日本軍慰安婦問題の解決なしには、韓日関係の正常化もない」と声を荒げただけだった。

 吹き付ける風雨の中、市民たちは並んで署名の順番を待っていた。英国人やトルコ人、エジプト人、セルビア人など、まさに世界市民たちだ。韓国からの観光客や英国在住の同胞も多かったが、最初は何が何だかわからない表情だった。もしかしたら韓国人の顔に泥を塗るのではないか?しかし、ロンドンでは見られない愉快かつ爽快でありながらも、真剣なパフォーマンスに感銘を受けたのか、署名台に押し寄せた。彼らは上気した顔で「お疲れ様です」「ありがとうございます」と、嬉しそうに労いの言葉をかけていた。

 しばらくして「イマジン」の合唱が始まった。20人という少人数で、合唱曲としては初めて歌う人がほとんどだったが、戦争と人権蹂躙に反対し、平和を願う気持ちだけは誰よりも切実なものがあった。作曲家のジョン・レノンは、英国人が最も尊敬するアーティストであり、この曲もまた英国生まれだが、地球の反対側から飛んできて平和を訴える韓国の若者たちの「イマジン」は、新鮮で特別に感じられた。「ワンダフル」、「グッド」といったの声があがった。

 蝶の夢は、観客の反応に鼓舞され「シャッフルアリラン」のフラッシュモブをもう一度行った。1回目同様、反応は熱く、署名台前は混んでいた。

 トラファルガー広場。大英帝国が始まり、帝国の栄光が凝縮された場所。しかし、今は衰退の象徴。さらに、ブレグジットによる分裂と対立に苛まれている場所でもある。そこがこの日、韓国の若者たちの明るいエネルギーに満ちていた。

 トラファルガー広場でのパフォーマンスに先立ち、蝶の夢はダウンストリートにある駐ロンドン日本大使館前で第1237回水曜集会を開いた。この日の集会は、英国の「慰安婦のための正義・英国グループ」と共同開催した連帯デモとして行われた。英国グループからは、この会を提案したアンドリュー・ジェンセンさんが参加した。

 40分近く行われたこの日のデモでは、初めて行ったフラッシュモブ「平和づくり」と、その場で製作された大規模なカリグラフィ「慰安婦ハルモ二の夢」は、頑固な日本政府に送る「蝶の夢」からの特別な贈り物だった。「私たちはあなたを憎まない。ただ一緒に平和を作っていきたいだけ」というメッセージだった。

 蝶の夢と英国グループは、共同声明の中で「12 .28合意」の撤廃と再交渉を求めると共に、被害者ハルモニたちの人権と名誉を回復させる形の問題の解決に向けた国際社会の参加を呼び掛けた。

ロンドン/クァク・ビョンチャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7月1日(金)7時41分

ハンギョレ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。