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近江町に涙のアナウンス響く 小林さん引退、28年「人生そのもの」

北國新聞社 7月1日(金)3時14分配信

 近江町市場商店街振興組合の事務員で、「近江町の母」と親しまれた小林すみ子さん(68)が30日、最後の業務を終えた。28年間、場内アナウンスを担当し、市場を声で支えてきた。午後4時40分、ごみ収集車の到着を知らせる最後のアナウンスを終えた小林さんは涙ぐみ「ありがとうございました」とマイクに向かって、そっと付け加えた。

 「たまに遊びに来てや」「明日からも待っとるよ」「寂しくなるねえ」。小林さんに、従業員が次々と声を掛ける。小林さんは180を超す店舗を回り、「明日からは買い物客になります」と深々と頭を下げた。

 高川物産店主の高川武士さん(72)は「近江町のみんなにとって、小林さんは家族みたいな存在や。何事も一生懸命に突き進むイノシシのような性格で、市場をどしっと支えてくれた」と引退を惜しんだ。

 小林さんは28年前に近江町市場で働き始め、以来、経理や業務連絡の作成など事務員としての業務のほかに場内アナウンスを担当してきた。

 アナウンスでは1日6回、ごみ収集車が来たことを伝えるほか、日々場内を歩いて蓄えた知識と気配りで、近江町の案内役として場内外の人に頼りにされ、「近江町の母」と慕われた。北陸新幹線開業でぐんと増えた忘れ物の案内や県外客の問い合わせも的確にこなしてきた。

 この日、事務所は、従業員らから贈られた花束でいっぱいになった。組合の倉田保秀事務長(64)は「小林さんは、アーケードの改築やいちば館の完成など、近江町が激動する時期を支えてくれた一人」と感謝した。

 最後のアナウンスで、小林さんは涙をこらえきれず言葉に詰まった。小林さんは「マイクに向かうときは無心のはずなのに、いろんな思いが込み上げて、どうしても駄目だった。近江町は私の人生そのものです」と語った。

北國新聞社

最終更新:7月1日(金)3時14分

北國新聞社