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天然記念物の岩にロッククライミング用の「金具」打ち込み、法的な問題は?

弁護士ドットコム 7月2日(土)9時50分配信

天然記念物などに指定された岩に、ロッククライミング用のくさびが打ち込まれる被害が相次いでいる。6月14日に、国の天然記念物「鬼岩」(岐阜県)の被害が発表されると、長野県にある国の名勝「天竜峡」の岩場、石川県の天然記念物「百万貫の岩」でも、同様の被害が判明。文化庁がほかの都道府県も調査しており、報告が続く可能性がある。

6月28日には、発端となった「鬼岩」の一つにくさびを打ち込んだとして、愛知県に住む男性が警察に出頭した。岐阜新聞によると、この岩は約30年前からロッククライミングに使われており、問題となった金具は男性が2012年頃に取り替えたもののようだ。

今回のように、名勝地にあったり、天然記念物に指定されていたりする岩を傷つけると、どんな代償を受けることになるのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。

●「器物損壊罪」「自然公園法違反」は問いづらい

まず、器物損壊罪となるかを検討します。刑法261条では、「他人の物を損壊」したときは器物損壊罪が成立すると定めています。ここでいう「損壊」とは、物の本来の効用を失わせることをいいます。外観を傷つけることも含まれますが、岩にくさびを打ち込むだけでは景観が害されたとまではいえないでしょう。

また、「鬼岩」は飛騨木曽川国定公園、「百万貫の岩」は白山国立公園内にあります。これらの公園の管理については、自然公園法が定めています。自然公園法は、特別地域や特別保護地区における土石の採取や土地の形状の変更を禁止していますが、くさびを打ってロッククライミングをする行為は該当しないと考えられます。

●文化財保護法違反の可能性

「鬼岩」は国の名勝および天然記念物に指定されています。国の天然記念物等については、文化庁長官の許可を得ずに「その保存に影響を及ぼす行為」をした場合、20万円以下の罰金に処すると定められています(文化財保護法197条)。岩にくさびを打ち込む行為も、「保存に影響を及ぼす行為」に該当する可能性はあるでしょう。

一方、「百万貫の岩」は国ではなく石川県の天然記念物で、石川県文化財保護条例によって規制されています。この条例では、「保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、10万円以下の罰金又は科料に処する」と定めています。しかし、くさびを打ち込むだけでは滅失やき損、衰亡とまではいえないでしょうから、刑事罰を受ける事はないと考えられます。なお、いずれの場合でも、犯罪となるには天然記念物であることを認識していることが必要です。

いずれにせよ、自然に親しむスポーツですから、犯罪になるかどうかにかかわらず、貴重な自然環境を破壊しないよう配慮することは当然のマナーだと思われます。岩にくさびを打つ際には、慎重な配慮が必要ではないでしょうか。



【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:7月2日(土)9時50分

弁護士ドットコム