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「冒険するなら25歳まで」「皆に理解されるのは諦めてる」すれ違う父と娘の仕事観

ITmedia Mobile 7月3日(日)6時10分配信

 成人した娘とその父が、(娘が)思春期だったころを回想しつつ本音で語り合う連載「育児の答え合わせ」。脳内で考えてはいたけどいえなかったあんなこと、つい口を滑らせて誤解された余計なひとこと、恥ずかしくていえなかった言葉を、少し照れながらも赤裸々に語り尽くします。

【画像】意外と楽しそう?な鈴木親子

 今回のテーマは「仕事と結婚」。前回は結婚相手に求める要素にズレがあった鈴木親子でしたが、働き方や結婚時期についても価値観に違いがあるようです。父の、娘の将来を思えばこその愛情は、娘側にきちんと伝わっているのでしょうか。

<父(60歳)>
宇都宮在住で都内に勤務する実直な公務員。勤続42年で3週間後に定年退職を迎える。娘とは高校生のころからほぼ会話がない。

<娘(25歳)>
都内のIT系企業で働く社会人3年目のビジネスウーマン。高校3年時のある事件をキッカケに、父と会話が途絶えて今に至る。

●インターネット業界は生涯働ける世界なのか?

娘 仮に、もし私から転職の相談をされていたら、パパは「あーしろ、こーしろ」って命令したと思う?

父 いや、命令はしないよ。「自分で考えて、行動しなさい」とだけ言う。

娘 去年の夏、今の職場に転職したけど、もし相談を受けてたらなんてアドバイスしてた?

父 たぶん、なにも言わない。「自分で決めたのなら、せいぜい頑張りなさい」としか。ただ……。

娘 ただ?

父 (小声で)1つのしっかりした会社で、長期間安定して働くのがベストだとは思う。インターネット業界という、自分にはよく分からない世界で生きるのが果たして良いことなのか……。生涯働ける職場なのかどうか、少し心配はしている。

娘 自分で稼げれば、どこでどんな仕事をしてもいいと思うんだけど。

父 (さらに小声で)将来的には、子供をもうけてほしい……。その、身を固めて、つまり結婚して家庭を築いてもらいたいな。まあ、父さんも母さんも共働きだったから、お前の仕事のことはとやかく言うつもりはないけれども。

娘 そうだよ。パパもママも働いてて、私が小さいころはおじいちゃんおばあちゃん子だったくらいだし(笑)。

父 そうだったな。

娘 もし、私が「結婚する気がない」と言ったら?

父 ……困る(苦笑)。

娘 「生涯独身で、バリバリのビジネスウーマンでい続けることが私の幸せなの!」であっても?

父 ……。

娘 大丈夫だよ、結婚したくないとは思っていないから安心して(笑)。

父 タイミングについては……どう思ってるんだ?

娘 それは私も考えてはいるけど……家庭と仕事を両立させるのってものすごく難しいと思ってて、女性が子供を産める期間もある程度限られてるよね。35歳が1つの区切りとかいわれてるから、あと10年。

父 (無言)

娘 仕事もちゃんとやりたい。それに、せっかく私の教育にお金をかけてくれたんだから、子供を産むまでに「生涯の仕事の土台」というか、自分の居場所を固めたい。だからチャンスがあれば、食らいつきたい。時間は有限だって強く思うしね。

●一定の場所で長期間働いてほしい

――娘さんが、お父さんの意にそぐわないことをしたら? 例えばベタですが、夢を追う人との結婚とか、生涯独り身で居続けるとか、数年ごとに転職するとか、起業家やフリーランスになるとか。

父 ……(フリーズして何もいえない様子)。

――それが、娘さんにとっての幸せだったら?

父 じ、実際にそうなってみないと分からないな。それにまだ当分先の話だろうし……。

――今25歳だからそう遠くない将来ではないと思いますよ? 先送りはダメですよ(笑)。

娘 そうだよ。逃げるのなしだよ。

父 ……親としては“安定”を望むねぇ。娘には、仕事はしっかり腰をすえてやってもらいたい。つまり、一定の場所で長く働いてほしいってこと。安定した生活を送ってもらいたいんだ。

――父は勤続42年、娘は25歳にして既に2回目の転職。かなり対照的な親子ですね。娘さんに質問ですが、「転職のすばらしさ」を、転職経験のないお父さんにどう説明しますか?

娘 転職の良さが分かる人は限られていて、誰でも理解できるものではないとは思う。感覚的だけど、2割くらいの人にしか分かってもらえない気がする。

父 (無言でうつむく)

娘 8割の人に「あいつ、また転職してんのかよ」といわれたとしても、構わない。あらゆる人に分かってもらえなくても別に平気で、分かる人にだけ分かればOK。でも、家族内はまた別で、ご近所とか親戚の目とかがあるので、親には申し訳なく思う。

父 世間体のことか? そんなこと、外で言いふらしたりしないって(笑)。

●人生の冒険は25歳まで?

――娘さんが、お父さんの価値観にそぐわない冒険をしそうになったら、どうしますか? 何か声をかけますか?

父 25歳を越えたら、もう冒険はしなくていいんじゃないですか?

娘 えっ? じゃあ、いつなら冒険していいの?

父 もうその時期は過ぎたと思うよ。25歳からは堅実に生きるべき。

――お互い、全然かみ合ってないですね。

娘 でもパパ、実は(漫画の)ワンピースが好きだよね。CS放送をDVDに焼いて大切に保存して、繰り返し見てるの知ってるよ。

父 ……冒険アニメが好きなもんでな。

娘 しかも、感動的なエピソードを好んで何度も再生して……(笑)。

父 ほ、ほかにやることないからだよ。

娘 25歳は、冒険するには遅い年齢? むしろ私は、今こそ冒険しなくちゃって思ってるくらい。やりたいことが見つかったし、独身のうちに冒険すべきだって思ってる。私の中では、結婚して子供が生まれるまでは多少のヤンチャはOKなんだけど。

父 安定して……どっしりした生活をしてほしいなあ……。

娘 パパが25歳のころは、社会人7年目だったよね。時代も影響しているかもよ。世の中も刻々と変わっているわけだし。

父 父さんは、「1つの職場でずっと働き続ける=よいこと」って価値観を持っている。

娘 でも、(私の属する)Webの世界はそうじゃなくて、むしろ仕事を変えるのが当たり前。ふらふらしてちゃいけないと思うけど、「これを極めたい」って軸がブレていなければ転職は全然アリな世界なんだ。

父 インターネットの世界はよく分からんよ……。

●かつて転職を考えたが、実行しなかった父

父 よく「レベルアップのため」って転職理由を耳にするけど、レベルって何を指しているんだろうな。

娘 パパは転職したいって思ったことないの?

父 消防職員はつぶしが利かない職種だから、転職は一度も考えなかったよ。でも、できれば地元の栃木で働きたいって願いはあった。栃木から、職場のある新宿までの通勤はきつかったしね。

娘 地元で仕事って、どんなことを?

父 いや、具体的に行動したわけじゃないから別に。性格的には、町工場でコツコツ働く……くらいがよかったのかな。人と話すのが苦手だから、営業職は向いてないよ。

娘 ママがずっと前に言ってたけど、あたしが生まれる前に「転職しようかなー」って独り言でつぶやいていたのは知ってたみたいだよ(笑)。私が生まれる25年前ってことは、パパが35歳のときだね。

父 結婚4年目で、まだ子供がいない時期だったな。

娘 子供はもうできないかもって思ったから、転職を考えてたの?

父 ……諦めかけた時期だったかもな。だって、当時は55歳が定年だろ?

娘 そうなの?

父 定年から逆算して、子供を大学まで出すとしたらって考えると、35歳が限界かなって。

娘 そういう計算してたんだ。4年間、ママが妊娠できなかったのは長いよね。

父 父さんが転職を一時期考えていたこと、母さんが言ってたのか?

娘 うん。「ひと言ぽつりとつぶやいたけど、無視したらそれっきり転職のことは言わなくなったって」だってさ。

父 (苦笑)

●「なんでお前が生徒会長に!?」でもひそかに応援

父 父さんは高卒で仕事を始めたんだ。兄貴が消防署に勤めていて、偶然に消防庁職員の募集を読んで、勝手に受けて決めたよ。家族には相談しなかったね。

娘 自分で勝手に進めちゃうって意味では、親子で似ているね。

父 でも、自分には消防隊員は向いてないと思って、すぐ救急に逃げたね。火災現場で火の中に入る仕事は避けてた。閉所恐怖症なんだ。

娘 なんだそれ(笑)。

父 それで、救急の資格を取って異動した。

娘 勉強したんだよね。

父 うん。でも、勉強が不得意だから一番ぺーぺーで卒業したよ(笑)。まあ、管理職として人に指示するのが上手じゃないし、そういう仕事は向いてなかったな。だから、昇進はしていない。

娘 向いてない?

父 人にああしろこうしろって命令するのが嫌いな性分なんだ。父さんは……そういう人間だから。

娘 いつからそう思っていたの?

父 小さい頃からだよ。自分は学力的にあまり優秀な人間じゃなかった。ただね、自分で言うのもおかしいけど、周りを見て気配りする才能はあるなって。周りがどうしてほしいとかを察する力とかね。人にああしろこうしろって言わず、どうしてほしいのかって察して動くタイプなんだ。

娘 いまの話を聞いてて、私はパパとは正反対の性格だと思った。私は人に指示したいわけじゃないけど、「これやりたい」って物事を見つけるのが得意で、人を巻き込むのが得意。高校生のときは生徒会長も務めたくらいだしね。まぁ、偏差値は低かったけど……(笑)。

父 女子校だったな。周りは優秀な子らばかりだったんだっけ。

娘 そう。だから劣等感はあった。尊敬する先生に「やってみれば」っていわれて立候補したのがきっかけ。1年生の5月から副会長、そのあと生徒会長になって、3年間生徒会に関わり続けた。

父 長かったな。

娘 就任してからの事後報告だったけど、どう思ってた?

父 「なんでお前が生徒会長に!?」って思ってたけど、やってみたいなら、やればいいじゃないって歓迎していたよ。親としては、むしろうれしい。頑張れよって思ってた。ただ、偏差値が低い落ちこぼれだとは知らなかったが(笑)。

 価値観のスレ違いが続く鈴木親子ですが、それでも娘さんに父の愛情はしっかりと伝わっている様子。序盤の緊張感も取れ、笑顔になる回数も増えてきました。

●今回の答え合わせ

Q:「同じ勤続先に長年勤めあげること」の価値は?

 人それぞれの考え方があると思うが、私の場合は高校を卒業し、すぐに今の仕事に就いた。入社してすぐに、この仕事が自分に向いていないことを実感したが、43年間勤めあげた。仕事とは我慢の連続の中のわずかな楽しみ、仕事外の楽しみ、そして家族の幸せだと思う。

Q:「自分の考えや周囲の状況に合わせて転職すること」の価値は?

 我ながらワガママな選択だな、とも思います(笑)。でも動かずに後悔はしたくないタチなので、今後もこりずにそのとき一番良いと思った道を選び続けたいです。転職時に試行錯誤した経験にも価値があるのではないかなと。

最終更新:7月3日(日)6時10分

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