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幻のコンニャク再び 矢祭町が種芋配布、今秋本格収穫

福島民報 7月3日(日)11時14分配信

 かつて県内一のコンニャクの収穫量を誇った福島県矢祭町で、幻といわれる「在来種」を栽培する動きが広がっている。町が種芋を配り、農家らに育ててもらう「一畝一大(いっせいちだい)プロジェクト」を展開している。仕入れた種芋を増やし、今秋に本格的な収穫を迎える。参加者は食文化の継承と町おこしにつなげたいと意気込む。
 「自分の代で終わらせたくない」。在来種を栽培する片野盛好さん(74)は自宅近くの畑で葉を伸ばす姿にひと安心した。コンニャクに関わって半世紀以上。片野恵仁さん(62)らプロジェクトの他の参加者に指導的な立場でアドバイスを送る。
 盛好さんは農家の長男に生まれた。昭和44年、父の故鉄男さんと取り組んだ酪農とコンニャクの複合経営で第10回県農業賞を受けた。当時、コンニャクで生計を立てる人が多く、立ち並ぶ立派な民家は「こんにゃく御殿」と称された。
 町の収穫量は昭和54年度に3243トンで県内トップを誇った。しかし、その後、安価な外国産が市場に出回り、さらに在来種より早く大きく育つ改良品種が群馬県を中心に生産された。町内の在来種は価格が暴落し、栽培されなくなった。経営上、盛好さんは品種の切り替えを迫られたが、コンニャクの栽培を続けた。何より産地のプライドを守りたかった。
 プロジェクトは平成26年にスタート。現在は15人が参加し、栽培面積は計約30アールになった。毎年秋に掘り起こし、親芋に付いた種芋「生子(きご)」を取って、春にまた土の中へ戻す作業を繰り返してきた。増やした種芋で鉢植えを40個作った。今月中旬に希望者に配布する。
 在来種は収穫できるのに改良品種より1年長い3年かかる。栽培期間が長い分、粘り気が強く、香り高いのが特長という。プロジェクトでは素材本来の良さを生かしたレシピの開発も同時に進める。
 昨年11月、盛好さんは秋の収穫を祝う伝統行事を15年ぶりに仲間と復活させた。「矢祭の食文化を次の世代につなげたい」。思いが実を結ぶと信じている。

福島民報社

最終更新:7月3日(日)11時20分

福島民報