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京大発ベンチャー、ヒトiPS由来の心筋細胞を開発 中辻教授「世界最高レベルの品質」

日刊工業新聞電子版 7月3日(日)16時0分配信

 京都大学発ベンチャーの幹細胞&デバイス研究所(京都市下京区、加藤謙介社長)は、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の心筋細胞製品を開発する。創薬研究において心臓への安全性評価で使う心筋細胞向けで、欧州メガファーマ(大手製薬企業)へサンプル出荷も始めた。京大の特許技術を用いた高い成熟性と安定性が強み。7月に研究者2人と事業化推進担当者1人を採用し、性能向上と量産化に向けて開発を加速する。(大阪支社・吉岡尚子)

 幹細胞&デバイス研究所は2014年設立。最高顧問を務める京大の中辻憲夫名誉教授らが開発したヒトiPS細胞由来の心筋細胞を低コストで分化誘導する技術と、配向ナノファイバーを用いて心筋細胞を成熟・安定化させる細胞培養技術を基に開発する。

 創薬研究では、心臓などへの安全性評価が重要だが、動物細胞では完璧な評価が難しく、創薬プロセスが長期間で高コストとなる原因となっていた。そのためヒトiPS細胞由来の心筋細胞の活用が求められており、各社が市販している。

【低コストで分化誘導】
 同社の心筋細胞は人工的に安価で作れる低分子化合物を用いて、iPS細胞から心筋分化誘導する。ナノファイバーを用いて心筋細胞を培養し、心臓の心筋構造に近い配向性がある3次元構造も特徴だ。これらで製造の低コスト化と強い心筋収縮力を実現。心筋がランダム構造の従来品に比べ成熟性と安定性を大幅に向上し、成人の心筋の成熟性に近づけた。中辻教授は「世界最高レベルの品質」と話す。

【サンプル出荷】
 欧州メガファーマに心筋細胞のサンプルを出荷しており、評価が良ければ受注につながる。ほかに欧米のメガファーマから接触もあり、海外製薬企業からの注目度が高いという。また、英グラスゴー大学発ベンチャーで心筋の評価技術を持つクライド・バイオサイエンスと、心筋細胞の供給と評価に関して連携することで合意した。共同で、iPS細胞由来の心筋細胞を用いて安全性評価をする市場の開発も狙う。

【創薬研究に的】
 このほど京都大学イノベーションキャピタル(同左京区)などから総額2億円の投資を受け、生産体制を充実させる。まず市場の成長性が高い創薬研究での利用をターゲットにするが、将来は技術を用いて再生医療での利用も視野に入れる。中辻教授は「大学発ベンチャーは国際的な技術優位性と収益モデルがないと失敗する」と指摘。双方を武器に、22年に売上高20億円と上場を目指す。

最終更新:7月3日(日)16時0分

日刊工業新聞電子版