ここから本文です

カルビー会長、 「人件費は経費と考えずに一番増やしてきました」

ニュースソクラ 7/3(日) 18:00配信

「わが経営」を語る 松本晃カルビー会長兼CEO(1)

 ポテトチップスなどスナック菓子で国内トップのカルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)は、就任以来7期続けて増収増益を達成し、3%程度だった売上高営業利益率を2ケタに高めた。

 事業は「世のため人のため」と考えたうえで「儲ける」ことにも徹して、不合理から生じる無駄を断つ。業績が停滞していた同社を成長軌道に乗せた手並みは、伊藤忠商事やジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長を経験して培った。(聞き手は森一夫)

――松本会長は「売上高営業利益率は食品産業の世界標準の15%をまず実現し、さらに20%くらいにしないと世界で戦えない」と言っていますが、日本の企業は普通5%もあればまずまずです。15%にどうやって高めるのですか。

 売上高営業利益率を15%にするのは何でもないですよ。私が言っていることを、社員が納得してやってくれれば、難しくはない。2016年3月期が11.4%ですから、15%までの差は3.6%ポイントです。例えば、単純化して製造原価をあと1%ポイント下げて、販売費および一般管理費つまり経費を2.6%ポイント下げれば、15%になります。

 今まで製造原価を下げる方に力を入れて、経費にはあまりさわっていませんでした。製造原価はそう簡単には2%ポイント、3%ポイントと下がりませんが、経費はずぶずぶです。

――東京・北区赤羽の自社ビルにあった本社を、中心部の丸の内にあるオフィスビルに移しましたね。経費が余分に掛かっているのではありませんか。

 必要なものには、カネがかかります。経費にも、かけてよいものと、かけて意味の無いものとがあります。会社はカネを使わないと成長しません。使うおカネは、投資とコストで消える経費の2つに分かれます。投資は将来、利益になって返ってきます。

 人件費は単なる経費とは考えずに一番増やしてきました。これを削れば一時的には利益が増えます。でも人件費をやたらに減らして、会社がうまく行くはずがない。大事な投資だからです。

 オフィスも、人間がそこで働くわけですから重要です。我々のビジネスにとっては都心の方が適しています。赤羽は生活するには良い所ですが、仕事となると別です。丸の内や青山に本社があると、入社志望者もいい人が来ます。新しいビルは設備も整っています。

 要は、何のための本社移転なのかということです。目的がはっきりしないと、何事もうまく行かない場合が多い。私が本社を移した狙いは実に単純です。儲けるためです。儲けにつながらないことは、何もやっていません。

――では経費のどこを削るのですか。

 無駄はいっぱいあるんです。特に流通に多い。カルビーに限りませんが、流通が複雑です。この業界は、直販がほとんどありません。メーカー、卸、小売り、そしてお客さんとなる。私は卸の役割を認めないわけではないのです。100年前と同じだから、おかしいと言っているだけです。

 前にいたジョンソン・エンド・ジョンソンでは、私は直販を絶対にしませんでした。医療機器などは卸の人たちがいないと、営業ができなかったのです。卸を「代理店」と呼んだのは、私たちを代理していろいろなことをよくやってくれるからです。卸のみんなさんは50年前と比べて変わったのです。

 ところがこの業界には「帳合」という言葉がある。帳面につけるだけという意味です。時代は変わったのですから、それに合わせて卸は機能を革新すべきなのですが、そうなっていない。

 メーカーにも卸にも営業員がたくさんいます。その人たちが同じ取引先に行って、何をしているのでしょうか。別々に行けばいいじゃないかと思うが、お互いに信用していないのです。この構造を変えれば、卸もうちも儲かるはずです。

――バカバカしい無駄があるのですね。

 私が現場に行くときに伴うのは、最低限必要な1人だけです。しかし人によっては、大名行列をするんです。本部長がいて、部長、課長に担当者がついてくる。現場に精通している担当者は何をするのかというと、車の運転手です。私は昔から、そんなことはしません。ぞろぞろ付いて来ようとすれば、「あんたたち、他に行けばいいんじゃないの」と言います。

 一緒にいないと、悪口を言われるのではないかと心配なのでしょう。現場の声はじかに聞く必要があります。中間の人たちに頼っていては、末端の人たちの本当の話はわかりませんよ。中間から聞く話はウソばかりです。現場をよく知らないのですから。

――売上高営業利益率15%という目標はいつごろ達成しますか。

 本当は今年度くらいにできないといけないが、できません。昨年か一昨年くらいから、売上高営業利益率の上がり方がいくぶん鈍っています。一つの原因は最近収まってきましたが、円安によるコスト増ですね。でも努力して上げていかなくてはいけません。

 製造原価が毎年1%ポイント下がり、経費が同じく1%ポイント下がれば、1年で2%ポイント下がりますが、これは理屈でね。実際には両方合わせて年に1%ポイント強下がれば、うまくいけば2年、下手をしても3年で、営業利益率は15%になると思います。

――その先の20%という目標はどうですか。

 これはイノベーションがないと駄目ですね。15%から20%へは、そう簡単ではない。もっと付加価値の高い商品を開発して、利益率を上げないと難しいでしょう。

 食品産業の国際標準が15%ですから、20%はかなりの水準になります。それは独占なのか、商品が本当に革新的なのか、そのどちらかがなければ、売上高営業利益率は容易なことでは20%になりません。

 しかし製造原価率を50%にして経費を30%にしたら、100引く80で営業利益率は20%になります。こう考えれば、簡単だと思っているのですがね。
(次回に続く)

■森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7/3(日) 18:00

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。