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[ニュース分析]韓国の労災死亡率はドイツの4倍、労災率は4分の1?

ハンギョレ新聞 7月3日(日)12時27分配信

2013年の労災率0.59% 実際の労災率は発表値の23倍 労災死亡者はOECDで圧倒的1位

労災が少なければ保険料率割引
企業病院の労災隠蔽を誘発

 現代重工業の下請け労働者のキム氏(35)は2014年7月、電気のブレーカーが下りていると思って変圧器の分離作業をして感電事故にあった。会社側は救急車を呼ばず会社の車でキム氏を病院に連れていった。会社は労災処理をせずに公傷処理(健康保険で治療して会社が別途補償する方式)にするよう要求した。キム氏は医者に「自宅でケガした」と言うしかなかった。彼は「会社が労災処理をしなければ、自分で勤労福祉公団を訪ねて直接申し込まなければならないが、そうすれば名前が知られて他の造船所でも働けなくなる」と話した。いわゆる「労災ブラックリスト」に載るためだ。

 韓国のように製造業の盛んなドイツの労災率は2.65%(2011年基準)だ。韓国は同じ年に0.65%だった。ドイツより労働環境が安全だということになる。しかし労災による死亡率を見ると、ドイツは10万人当たり1.7人(死亡万人率0.17)だった。韓国は10万人当たり7.9人だった。仕事で負傷したり病んだ労働者の割合はドイツの4分の1なのに、死ぬ労働者は4倍以上多い。これをOECD平均と比較してみても、2013年基準で韓国の労災率は0.59%でOECD平均(2.7%)より遥かに低いが、労災死亡率は10万人当たり6.8人で圧倒的1位だ。韓国の労働者は負傷したり病気にかからず突然死んでしまのだろうか。この格差の秘密は、労災の隠蔽だ。さすがに隠し通せない死亡に至る前の、他の労災は労災とは呼べないわけだ。

 雇用労働部は最近、故意に労災を隠した事業主に対して、罰金だけでなく刑事処罰(1年以下の懲役)できるよう産業安全保健法を改正すると立法予告した。だが、労働界と専門家たちは、処罰の強化だけでは蔓延した労災隠しを根絶できないと言う。

■高い労災率、さらに高い労災隠蔽率

 共に民主党のウン・スミ前議員が、2011~2013年に社内下請け労働者の健康保険使用内訳を分析した結果によれば、韓国の推定労働災害率は公式災害率の平均23倍に達する。社内下請け労働者38万8475人(3年分合計)が3年間に病医院を訪れS-T傷病関連疾病と診断され国民健康保険公団に請求された保険金が50万ウォン以上の場合を集めて分析した結果だ。S-T傷病とは、韓国標準疾病死因分類コードのうち、頭、首、胸、腹、腰、肩、目などが外的要因により負傷したり中毒になったケースをいう。専門家たちは会社員が病むS-T傷病はほとんどが職業性疾病と見る。

 これほど労災隠蔽率が高いのは、労災隠蔽を誘引する種々の制度的弱点と慢性的な元下請け構造が複合的に作用した結果だ。

 第一に、不合理な労災保険料算定方式がある。韓国は労災が多く発生する業種と事業場に対して労災保険料を多く負担させる「保険料個別実績料率制」(個別料率制)を適用している。労災が少なければ保険料が割引かれる。嘉泉医大のイム・ジュン教授(予防医学科)は「健康保険は疾病発生のリスクが高い加入者に保険料を多く負担させることはない。社会的リスクを共同体で解決しようという趣旨で作った社会保険だから」として「労災保険も社会保険だ。個別料率制は社会保険の連帯的原理と普遍的価値に反する」と指摘した。政府が大型工事の入札をする際に行う入札参加資格事前審査制度(PQ)で労災率が低い業者に加算点を与えるのも、当初の趣旨とは異なり、工事受注競争の激しい建設現場では労災隠蔽を誘発させる結果を産んでいる。

 下請け業者の状況はさらに深刻だ。国家人権委員会が2014年12月に発表した報告書「労災危険職種実態調査」によれば、職場で負傷した造船、鉄鋼、建設プラントの下請け労働者343人のうち、労災処理をされた人は36人(10.5%)に過ぎなかった。個人が費用を負担したり、まったく治療を受けられなかったという人も122人(35.6%)もいた。残りの185人(53.9%)は、元・下請け業者の費用で処理(公傷処理)された。労災処理をしなかった理由を尋ねると、「元・下請け業者の不利益を憂慮して」という回答が39.6%で最も多く、「元・下請け業者が労災保険処理を出来ないようにした」(29.4%)と「労災保険申請手続きが複雑で」(9.5%)が後に続いた。

 延世大社会発展研究所のパク・ジョンシク研究員は「元請け業者は労災発生で雇用部の特別監督を受けることになり、工事期間などに支障が出ることを嫌う」として「下請け業者で労災が発生すれば、元請けが罰点を付与して、繰り返されれば契約を切る」と話した。下請け業者で事故の際に救急車を呼ばずに適時治療ができなかったり、企業と組んだ病院に労働者を搬送し公傷処理することが絶えない理由だ。

■処罰の強化でなくならない労災隠蔽をなくすために

 先ず、労災保険制度を手術して、別途の手続きがなくとも労働者がすぐに恩恵を受けられるようにすべきという意見が多い。現在は、労働者が会社の労災確認を受けて勤労福祉公団に提出すれば、公団が労災判定をした後に保険金が支給される。イム・ジュン教授は「病院に来た労働者を初めて診療する時、医師が労災分類基準に則り労災保険を適用するか、健康保険を適用するかを判断し、これを根拠に医師が勤労福祉公団に申告し給付請求をするシステムを構築しなければならない」と話した。労災保険料の個別料率制と関連しても、韓国労総のチョ・ギホン産業保健室長は「労災予防効果が検証されておらず、むしろ労災隠蔽の原因と指摘されてきた」として「短期的には下請けの労災を元請けに含めて保険料を策定し、長期的には全面改編を検討すべきだ」と話した。

 民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健局長は「労働者の参加が労災隠蔽を絶つ実質的手段」とし「いくら強力な法や政府の管理監督も、労働者の日常的監視体制に優るものはない」と話した。ドイツの場合、元・下請けの労働者が揃って参加する労働者評議会が労災予防など労働者の健康を保護する政策を共同で決める権限を持っている。

 パク・ジョンシク研究員は「雇用部の今回の改正案のように、処罰だけを強化してもあまり実効性はなく、かえって隠蔽をそそのかしかねない」として「政府の政策目標を『災害率の数値を下げること」から、労災を多く発掘し補償することに変えなければならない」と指摘した。

チョン・ウンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7月3日(日)12時27分

ハンギョレ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。