ここから本文です

いつまで続く東京電力のシステム不具合、根本的な解決策が見えず

スマートジャパン 7月4日(月)14時34分配信

 電力・ガス取引監視等委員会が東京電力パワーグリッド(東京電力PG)に対して異例の業務改善勧告を出したのは2週間前の6月17日のことである。東京電力PGから小売電気事業者や発電事業者に対して通知する電力使用量のデータが大幅に遅延して、電気料金を請求できない事態が続いているためだ。東京電力PGは7月1日までに改善計画を委員会に提出するよう求められていた。

【その他の画像】

 その報告内容には遅延の最新状況のほか、大量の人員を投入した改善策がまとめられているものの、根本的な解決策は示されていない。電力使用量の通知遅延を引き起こす原因になったのは、東京電力PGが契約変更などの業務を処理するために開発した「託送業務システム」の不具合にある。

 4月1日から正式に運用を開始したシステムだが、需要家ごとの電力使用量を計測するメーターの情報を正しく収集できない問題をはじめ、合わせて4種類に及ぶ誤った処理が見つかった。東京電力PGは託送業務システムに不具合が発生していることを5月中旬に初めて公表したが、7月1日の改善計画でも不具合の解消時期を提示できていない。

 根本的な解決策を講じることができない状況が続いた結果、電力使用量の通知遅延による市場の混乱は拡大する一方である。東京電力PGが各事業者に通知する必要のある電力使用量は2種類ある。1つは需要家が消費した需要データをメーターから収集して小売電気事業者に通知するもので、検針日から4営業日以内に通知することが国の指針で求められている。

 この需要データの通知が遅延している件数は6月16日の時点で合計2万1185件にのぼっていたが、2週間後の6月30日には2万710件へわずかながら減少した。遅延を解消するために大量の人員を投入して、データの再収集やシステムへの再入力を実施した結果である。それでも2万件を超える電力使用量の通知が現在も遅れている状態だ。

 もう1つの遅延は需要家の発電設備を対象にした発電データでも起こっている。6月16日の時点で1万3161件だった遅延件数が6月30日には1万5979件まで増加した。しかも遅延が発生しているのは、東京電力以外の小売電気事業者と契約しているケースが大半を占めている。

6000件超の電力使用量は不明なまま

 実は東京電力PGが委員会に提出した報告の中で、明確な表現を避けて記載した重要な問題がある。電力使用量や発電量のデータのうち4月分で298件、5月分で5788件を「協定対象」に挙げている。メーターの再検針などを実施しても確定できないデータが合計で6000件以上もあり、その処理方法を小売電気事業者と協議中だ。

 結局のところ使用量や発電量の正確なデータを把握できないため、どのような形で電気料金を決めて請求するかを協議して決める必要がある。該当する小売電気事業者は115社にのぼる。このうち東京電力PGと協議した内容を了解した事業者は6月29日の時点で半分弱の56社に過ぎない。すべての事業者と合意できなければ、需要家に電気料金を請求できない状態が続いてしまう。

 そればかりか、不正確なデータによって電気料金を誤って請求したケースも数多く発生している。6月24日の時点で電力使用量のデータのうち1646件が実際よりも過大に算定されていた。需要家の電力使用量は旧型の電力量計と新型のスマートメーターでは対象期間が異なる。ところがシステムの不具合によって発生した誤ったデータの修正作業の過程で、旧型から新型へ移行した期間の使用量を重複して加算してしまった。

 さらに東京電力PGが4月以降に通知済みの約100万件のデータについても再確認したところ、同様の問題が219件で発生していることが新たにわかった。このほかにも小売電気事業者から「前年度と比べて使用量が過大」などの問い合わせを受けて判明した誤通知が6月27日の時点で少なくとも51件ある。旧型から新型へメーターを切り替えた時の読み取りミスや、システムに登録する時の誤りによるものだ。

 広範囲にわたる問題に対して、東京電力PGは人手による改善策を中心に実施してきた。引き続き同様の改善策を続けながら、メーターのデータを収集するMDMS(メーターデータ管理システム)と託送業務システムのあいだのデータの不整合を解消する対策などを講じる予定だ。

 とはいえ託送業務システム全体の不具合をいつまでに解消できるかは不明だ。7月1日の改善計画の中では、次のような抽象的な見通ししか記載していない。「7 月以降は対策を全て実施することにより、計器の故障やスイッチングの際の付け外し指針が不明なものを除く全数について、速やかな使用量通知を目指し、今後定期的に改善の進捗状況を検証する」。

 その一方で「現地対策本部」の設置を検討するなど、人的な対応で事態を収拾する方針を打ち出している。現地対策本部の約600人のうち半数近い280人を「暫定運行チーム」に配置して、需要・発電データの遅延や料金計算の問題解決、小売電気事業者と交渉する「協定」などを進めていく考えだ。

 これに対して託送業務システムの正常運行に向けた「恒久対策チーム」には、協力会社を含めても10人しかいない。少人数の体制でシステムの不具合を短期間に解消できるならば問題はないが、今後の見通しが明らかになっていないだけに不安が残る。

 東京電力PGは引き続き改善計画の進捗状況の検証を毎月2回の頻度で実施して、その結果を1週間以内に電力・ガス取引監視等委員会に報告しなくてはならない。次回の報告は7月22日がめどになる。問題の根幹にある託送業務システムの不具合の解消状況についても明確に報告したうえで、全面解決の見通しを早く示す必要がある。

最終更新:7月4日(月)14時34分

スマートジャパン