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認知症、薬と生活療法が有効

山陽新聞デジタル 7月4日(月)11時33分配信

 岡山中央病院(岡山市北区伊島北町)の林泰明・神経内科部長に認知症、軽度認知障害(MCI)の治療について寄稿してもらった。

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 アルツハイマー型認知症(以下ア型)の原因とされるアミロイド沈着が始まるのは30代からですが、この段階で進行抑制する薬を開発することが根本治療薬の目標となっています。もの忘れ外来へ来られる70歳以上の方にはそのような予防薬は間に合いそうにありません。

 もの忘れ外来の診察室で行う薬物療法は認知症の進行を抑制する薬のほか、生活習慣病や脳梗塞の再発予防の薬物療法です。BPSD(行動・心理症状)を生じて来院した場合には抗精神薬を使用することもあります。

 同時に疫学的に証明されたア型や血管性認知症の促進因子(糖尿病、高血圧、脂質異常、喫煙など)や、抑制因子(生活習慣病の改善、運動、食事の改善、活動的な生活など)である環境要因に目を向けて介護保険の利用も含め、認知症の進行を予防する生活療法を主導する必要があります。忘れてはならないことは、英国のトム・キットウッドが1990年代に提唱した「認知症のひとのケア」の理念、「パーソンセンタ―ドケア」(図1)を生かすことです。

 もの忘れ外来では患者との会話を中心にしますが、同居、非同居の家族関係は家族に確認しておきます。生活習慣病があれば持参の薬手帳から何の薬か、一包化されているか、糖尿病では重症度の指標(HbA1c)も尋ねてみます。返事を聞けば薬物管理が独居であっても十分か、家族の協力が必要か、また家族力はどうか推測できます。

 かかりつけ医からの紹介であれば診断、生活状況、薬物管理などを報告して適応であれば抗認知症薬の開始を他剤とともに一包化でお願いします。

 当院での診療を希望されれば、本人には「もの忘れが進んでいる疑いがあります。薬も使いますが仕事を続けることが一番予防になります」と伝えます。家族へはア型の経過を説明し、進行抑制が可能な薬はあるが社会資源の利用や生活療法の必要性を強調します。そして、再診のたびに本人、家族との会話で生活機能の低下を発見して患者の希望を生かす方法を話し合います。

 夫婦で来られる場合は家事の分担、服薬チェック、買い物などを毎回話題にします。生活習慣病では食生活を話題にしてダイエットは買い物からを強調し、スーパーを利用した買い物リハビリを薦めます。散歩や畑・温室仕事、グラウンドゴルフなどをしている方は賞賛して継続を薦め、要介護レベルでも介護保険の利用を渋る方には参加の働きかけを続けます。

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最終更新:7月4日(月)11時33分

山陽新聞デジタル