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除染ロボットの苦戦。福島第一原発、建屋内で不具合対応できず

ニュースイッチ 7月4日(月)11時50分配信

今後30-40年を見据えた基盤づくりが重要

 廃炉に向けて除染ロボットの苦戦が続いている。東京電力福島第一原子力発電所の建屋内の除染が思うように進んでいない。ロボットを現場で試すと新たな課題が噴出し、技術者は頭を抱える。現状はまだ、ロボットに必要な機能を検証するステージで留まっている。除染は今後40年間、廃炉を進める限り続く作業だ。工程が進むごとに人間の入れるエリアを広げる必要がある。技術開発の阻害要因を探った。

「5年もたって何をやっているんだ」

 「5年もたって何をやっているんだ」―。国際廃炉研究開発機構(IRID)の技術委員会で淺間一委員(東京大学教授)は一喝した。「ロボットが現場で使えるレベルにない。こんな結果はとても成功とはいえない」と評価は厳しい。IRIDは東京電力や東芝、日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業などが加入。原子力関連の技術者が集まり、廃炉に向けた技術を開発している。

 東電は2016年1月、3号機に高所除染用のドライアイスブラストロボを試験投入した。ドライアイスの粒子を吹き付け天井や壁表面の汚れを削り取る。だが、除染作業中にノズルが詰まってしまった。試験中に解消できず、目標だった表面放射線量の5分の1低減は1度しか成功しなかった。原因は流路が結露して、凍り付いてしまったことと推定している。

 30センチメートル四方の除染作業に40―60分もの時間を要し、搬入など前後の作業を含めると1日仕事になった。3号機建屋1階の天井は900平方メートルあるため、仮にドライアイスブラストで全面を除染するには除染作業に1万時間はかかる計算になる。

現場で試行錯誤ができない

 除染ロボットが苦戦するのは、現場で試行錯誤ができないためだ。現場の優先課題は使用済み燃料プールに残った燃料の取り出しだ。原子炉建屋のオペレーションフロアで作業している間は下の階で作業できない。除染ロボを開発してから現場に入れるまで、他の工事との日程調整に2カ月を要した。

 IRIDの小代宗謙主任研究員は「除染ロボは深夜2時に準備を始めて、作業を終えて朝8時には現場を明け渡す必要があった」と振り返る。

 また一度、原子炉建屋に投入したロボットは汚染されてしまい、発電所の敷地から外に出せない。小代研究員は「ロボットを現場で使い切る感覚で運用する」と説明する。

 一般にロボットは現場で使いながら一つひとつ不具合をつぶしていく。除染ロボは現場投入で課題が判明しても、訓練用施設に戻って改良できなかった。これでは一発勝負を繰り返すことになる。

 改善の兆しはある。東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは「除染などの対策が進み、作業環境は目に見えて良くなった」という。

 敷地の9割は全面マスクでなく、使い捨ての防じんマスクですむようになった。発電所の敷地内でもロボットを改良する環境は整いつつある。淺間委員は「廃炉が進むほど人が作業すべきエリアは増え、除染が必要になる。除染ロボは機能検証ステージから早く抜け出し、現場効率を高めるステージに進まなければならない」と指摘する。

<解説>
 福島第一原子力発電所の所長が交代した。前任の小野明所長はNDFに移る。小野前所長は「今後30-40年を見据えた基盤づくりが重要。もう1年ほど作業環境の改善に取り組みたかった」と挨拶した。任期中に食堂やコンビニができ、温かい食事が取れるようになった。

 新任の内田俊志新所長が引き継いで環境改善を進める。廃炉ロボットはより現場で働くことが増える。メンテナンスや現場改善などの、開発環境を整えた方がよいだろう。治具くらいすぐ作れたり、フライス盤や旋盤はあった方が絶対によい。町工場が一つあると理想だ。

 現在の廃炉ロボは特注機が一発勝負を繰り返しているが、作業量の多い仕事がロボット化されると現場での保守・改良が必須になる。現場を知る小野所長がNDFに移るので良い方向に進めばと思う。

日刊工業新聞社・科学技術部 小寺貴之

最終更新:7月4日(月)11時50分

ニュースイッチ

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