ここから本文です

元BOOWY高橋まこと率いるJET SET BOYS、ツアー最終日のレポート公開

M-ON!Press(エムオンプレス) 7月5日(火)16時48分配信

「ボスとか親父とか言われておりますが、私はただのドラマーでございます。ほかの3人に助けていただいてライブができています。ありがとう」

【詳細】他の写真はこちら

アンコール、ステージにひとり現れた高橋まことは、しみじみと感謝を述べ、メンバーを呼びこんだ。「変態ロックギター」という賞賛で友森昭一を、「(リズムの要として)ウネウネとベースを弾きまくってくれた」とtatsuを、「コイツがいなければバンドは始まらない。惚れ込みました」と椎名慶治を。高橋は、その一人ひとりと握手して、ハグして、背中をポンポンと叩く。その光景を見ながら、ああ、バンドっていいな、と、バカみたいに思ったのだった。

JET SET BOYS。結成のきっかけは、高橋まことが、故郷・福島の復興支援ライブを行うため、椎名慶治に声をかけたことだった。回を重ねるごとにバンドの楽しさを再認識した高橋は、自分が還暦を迎えた頃から「もう一度、いや、最後のバンドを組んでみたい」と強く思うようになっていったという。その気持ちを真っ先に打ち明けられたのが椎名だ。もちろん、彼は一も二もなく「やりましょう!」と答えた。椎名と活動を共にすることが多く、高橋の20周年ソロ作品にも参加したギターの友森も、即賛同。そこに、3人から音楽的信頼を寄せられたLA-PPISCHのベースtatsuが加わり、JET SET BOYSは誕生した。結成から2年、レコーディングは昨年の12月から始まり、6月には1stアルバム『JET SET BOYS』をリリース。まさにジェットな勢いで、初のツアーにも繰り出した。この7月3日のEX THEATERは、そのファイナルだ。

SEが鳴り、赤いバックライトが光るなか、静かにメンバーが登場。位置に着くや否や、耳を刺す硬いスネアの音で、超アッパーな「ZIPPER DOWN」が始まった。観客は総立ちで「ヘイ!」と拳を天に突き上げる。ロック魂全開のブレない演奏をしながら、tatsuも友森もシャウト。最初からズドンと歌に集中する椎名とのゴツゴツしたハーモニーがカッコいい。ノンストップで、心地いい8ビートの「LEVIATHAN」、細かいキメがクールな「GET SET」。高橋のドラミングはどこまでも太く、男くさい。でも、友森の奏でるテンションコードはどこかメロウ。tatsuの指が生み出す微妙なウネリはめちゃくちゃ粋。その個性的なミスマッチ感を全部受け入れて、消化して、JET SET BOYSの世界観として吐き出す椎名。面白い。

「いやー、初めからトバすな、俺。もう怖いもんないわ(笑)」と、MCの第一声は椎名。興奮が極まってることと、歌詞を飛ばしたことのダブルミーニングに、みんなクスッとする。ほころびさえも共有して楽もうというような会場の生産的空気が、この日のライブをどんどんいいものに育てていった。

いちばんのヘソと言えたのが、ステージにライトセイバーのような光が立つなか奏でられた「STRAYED」「IT’S CALLED LOVE」の流れだった。「STRAYED」は友森と椎名が曲を共作した、6/8のラブバラード。優しさとどうしようもなさが共存する物語が、抑制と激情がないまぜになった音となり、ギュッと胸がしめつけられる。椎名のこんな切ない歌声は初めてだ。バンドでの共作が、いかに新鮮なものを生むかを、目の当たりにした気がした。対照的に「IT’S CALLED LOVE」は、ビートルズ色漂うあたたかい愛の歌。しかも、このツアーのための新曲だ。「君が笑ってくれたら、ほかに何もいらない」なんて歌詞が素直に胸に響き、4人がすごく素敵な男たちに思えてくる。これって案外、JET SET BOYSの本質なのかもと、独り言した。

さらなる新曲「WHO AM I?」では、メンバー紹介を兼ねたソロ回し。特にドラムソロはたっぷりの尺。それでも叩き足りないのか、高橋は場外(!)にも飛び出し、床を叩き、マイクスタンドを叩き、最後はおでこでマイクをコン。これにはメンバーも会場も大ウケ。「床、点検してませんでした?」という椎名のMCで、さらに爆笑の渦に包まれたのだった。

観客と「練習」したコーラスがサウンドの一部になった「PROMENADE」、フィリーソウルとR&Rが一体化したような「BAD COMPANY」、’80年代のエキセントリックなニューウェイブを彷彿とさせる「PASTA」。どの曲もヒト筋縄ではいかないが、ポップさもハンパない。やっぱ只者じゃないな、JET SET BOYS。と、またバカみたいに思う。

「アルバム1枚でツアーをやる無謀さには不安しかなかったけど、今は終わるのが寂しい」と椎名。それにうなずきながらtatsuもボソッと「やるたびにまことさんがパワーアップするのがスゴかった」と言う。高橋は62歳。いちばん下の椎名とは22歳差だ。40歳を越えたら人間下降カーブになると思っていた椎名は、いくつになっても上昇カーブが描けることに気づかされたという。そんな話を受けて、「上昇というより現状維持で」と照れくさそうな高橋。「こうなったら線香花火のようにパッとね」という友森。キャリアに裏打ちされた男たちの生きざまが、そんな冗談めかした言葉にも表れている気がした。

「帰れる場所が出来ました。このホームにまた戻ってこれるように、これから個々の活動も応援してください」と、椎名は心からの言葉を届けた。それぞれがまたあらたな旅に出ることを思わせる壮大なロックアンセム「STANDING THERE」。その一つひとつを大切に噛みしめるように奏でるメンバーの、しみじみとした表情が印象的だった。

思えば、順風満々な人生だったとは言い難い。そんな4人だ。登って、降りて、闘って、音楽人生を貫いて、何の因果かまたバンドをやってる。懲りない自分に呆れつつも、きっとこの夜、それぞれがかけがえのない何かを見つけたことだろう。アンコール最後の「SAYONARA」。「大丈夫だぜ お前の人生そんなに悪くないよ」という歌詞が、そんなメンバーへの贈り物のように思えた。同時にそれは、観ている者にとって、泣きたくなるほどの大きな励ましとなった。

TEXT BY 藤井美保
PHOTO BY 石黒淳二

※「BOOWY」の2つめの「O」はスラッシュありが正式表記。
※「LA-PPISCH」の「A」はウムラウト付きが正式表記。

リリース情報
2016.05.18 ON SALE
DIGITAL SINGLE「ZIPPER DOWN」

2016.06.01 ON SALE
ALBUM『JET SET BOYS』

「ZIPPER DOWN」ミュージックビデオ(GYAO!)
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00101/v12440/v0871400000000543835/

JET SET BOYS OFFICIAL WEBSITE
http://jetsetboys.jp/

最終更新:7月5日(火)16時48分

M-ON!Press(エムオンプレス)