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「Salesforceの入力、面倒すぎる」 そんな現場を変えた「ボット君」

ITmedia エンタープライズ 7月5日(火)14時3分配信

 現場の仕事はプロ級だが、ITは苦手――。ITが一般化する中、今やITになじみがない世代の職人たちも、ITツールを使うことを余儀なくされている。

【画像】チャット画面からSalesforceにデータを送る方法

 今まで紙で行ってきた現場の状況報告を、小さいスマートフォンの画面上で慣れないメニューを操作しながら行うのは至難の業で、それが報告の遅れや滞りにつながるケースも出てきているという。

 こうした“ITアレルギーの職人”でも、苦手意識を持つことなく、進んでITツールを使うようにするにはどうしたらいいのか――。こうした課題に向き合い、見事、解決法を見つけた企業がある。太陽光発電事業を手掛けるLooopだ。

 Looopの太陽光発電事業に欠かせない施工のプロフェッショナルたちが、愛着をもってITツールを使うようになるには、どんな工夫が必要だったのか――。サービス導入時にLooopの情報システム部門を統括した取締役 業務本部長(現特別顧問)の深谷辰三氏と、施工部門を統括する取締役で、施工技術本部長を務める塩塚剛氏に聞いた。

●震災をきっかけに起業、再生可能エネルギー買取で急成長

 Looopの創業は2011年4月。東日本大震災がきっかけだった。ボランティアとして活動していた創業者の中村創一郎氏と深谷氏が、非常時のエネルギー源として太陽光発電に注目。ソーラーパネルの製造と販売を手掛けるために起業したのだ。

 同年11月には山梨県北杜市に最初の自社発電所を建設。そのノウハウをもとに「MY発電所キット」を開発してからは、キットの販売と売電を中心に事業を展開し、現在までに全国に約1600件の太陽光発電所を建設した。

 2012年7月に施行された再生可能エネルギー固定価格買取制度を追い風に、同社の事業は急速に拡大。休耕地や耕作放棄地、市街化調整区域における空地活用の手段として10キロワット以上の産業用太陽光発電所が爆発的に増えたことから、創業からわずか5年で、全国にトータル150メガワット規模の太陽光発電設備を提供する事業者へと成長をとげた。

●施工部門が悲鳴、「Salesforceの入力が面倒すぎる……」

 そんな同社が直面したのが、事業の急拡大に伴う社内システムの構築だった。創業からしばらくの間は、Excelのワークシートを使って顧客や施工の管理を行っていたが、会社の規模が急拡大し、顧客や案件の数が急増するにつれ、Excelでの管理が困難になったという。

 「ビジネスが拡大する中、最初は1つしかなかったMY発電所キットやパネルの種類が増え、設置するエリアも広がってきたのです。情報の一元管理ができていないと、誰に何を聞けば正しい情報があるのかが分からないですし、施工側のメンバーも発電所を修理する際に、いつ入ったどのパネルなのかを出荷履歴から探さなければなりません。一元管理して、常に正しい状態を作る必要に迫られたのです」(深谷氏)

 こうしたシステム上の課題を解決するため、同社は2013年夏にSalesforceを導入。2014年3月からExcelからの移行をスタートし、2014年の10月には切り替えを完了した。Salesforceを利用した月次決算を行うようになった。

●現場のプロはSalesforceの入力に「No!」

 脱Excelで多くの業務が効率化できたものの、今度は新たな課題が浮上した。ITに不慣れな現場の施工スタッフが、Salesforceへのデータ入力に難色を示したのだ。

 「発電所建設現場の監督者は、発電所の場所や工事の進捗などといった現場の状況を、写真とともにSalesforceのChatterで報告しなければなりません。しかし、彼らは施工現場のことは何でも分かるプロですが、システムのこととなると『わけわかんない、何だよそれ?』という男たちなんです。そんな彼らにとって、“スマホの小さな画面からChatterを呼び出して、コメント付きの現場写真を1枚ずつ送信する”という作業はストレスなんですね。それに彼らは工事の監督者ですから、現地に行くと業者といろいろ話さなければなりません。限られた時間の中で、現地から不慣れなツールを使って報告するのは容易ではないんです」(深谷氏)

 こうした事情から、現地からの報告が滞りがちになったためLooopではSalesforceの既存システムを補完する仕組みを検討することにした。そこで塩塚氏が深谷氏にリクエストしたのは「LINEのようなもの」だったという。

 「現場の作業員もスマートフォンには慣れ親しんでおり、特にLINEは現場の作業員同士の連絡手段として日常的に使われていました。LINEのようにチャットで作業指示や報告が行えれば便利だと考えたわけです」(塩塚氏)

 こうした現場の声を受けた深谷氏が、Salesforceと連携可能な企業向けチャットサービスを探したところ、出会ったのが、企業向けクラウドチャットサービス「direct」と、その上で稼働する「BotDock for Salesforce」だった。

●チャットすればSalesforceに自動入力

 directは、LINEやFacebookメッセンジャーと良く似たユーザーインタフェースを備えた企業向けチャットツール。BotDock for Salesforceは、Salesforceへのデータ入力をdirectのチャットUIから行えるようにするものだ。

 BotDock for Salesforceを使うことで、現場報告のフローはどう変わるのだろうか。

 これまでLooopの現場では、スマートフォンでSalesforceにアクセスして小さな画面上で今日の作業現場を検索し、写真の複数一括投稿ができないChatterで1枚ずつ現場写真を送信する――という作業が必要だった。

 これがBotDock for Salesforceを使うと、directのトークルームにある「プロジェクト検索/投稿Bot」を選択してチャット画面に顧客名や現場の地名、住所を入力すれば、候補のプロジェクトが表示される。それを選んで写真やテキスト、位置情報を投稿すれば、自動でChatterにその情報が登録されるという。direct上でプロジェクトを選ぶと、チャット画面がそのプロジェクトの情報入力の入り口になるようなイメージだ。

 LINEと同じ感覚で使っていれば、自動でChatterへの入力が済むとあって、施工スタッフからは人気を博しており、塩塚氏に至っては「ボット君」と呼ぶほどのお気に入りだ。

 また、全国の発電所から発電所へと飛び回る施工スタッフに、レクチャーする必要がないほどシンプルな使い勝手も好評だという。

 「同僚にアカウントが付与されたときに、ラーメンを食べながら説明したら、その日のうちに使えるようになって。それくらい単純明快ですね。ITが苦手な僕でも教えることができるくらい分かりやすいんです」(塩塚氏)

 「あれほど滞っていたSalesforceへの入力が、きちんと行われるようになったんです。施工部門に革命が起きました」(深谷氏)

 今後はチャットツールとbotの適用範囲を拡大し、発電所の保守作業の証跡などでの利用も計画しているという。「将来は、営業部門の商談管理など、施工部門以外でも活用していきたいですね」(深谷氏)

 今後、ITの一般化がさらに進むことは間違いなく、ITになじみがない世代も、ITと関わる機会が増えると予想されている。今回のチャットツールとbotの事例は、これからのITのあるべき姿を考える大きなヒントになりそうだ。

最終更新:7月5日(火)14時3分

ITmedia エンタープライズ

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