ここから本文です

IT管理者不足なのにデータの管理はだれがするべきか

ITmedia エンタープライズ 7月5日(火)17時43分配信

 システムの規模が小さく、管理するモノが少ない中小企業と、複数のシステムを持ち、ある程度の管理体制を必要とする中堅・大手企業では、それぞれで採れる対策や最適な手法が異なります。具体的な運用方針を策定する前に、日本企業特有のITインフラ管理と、それを取り巻く環境について少し振り返りたいと思います。

【その他の画像】

●ITインフラ管理の限界

 海外、特に米国を中心に、クラウドコンピューティングやIoTの発展と合わせて、実際のビジネスの現場を理解する業務部門の現場担当者自身や、現場に近い位置にITスキルを持つ人材を配置する企業が増えてきました。これまで以上に動的に、かつ、すばやくIT活用を前提とした業務サービスの開発と展開を行うようになっています。

これは「マイクロサービス」と呼ばれます。業界の垣根が低くなり、地域内にとどまらず地域間での競合も一般的になってきた現在において、競争力の維持だけでなく、新しい価値の創造を目的としています。IT技術者であれば、「アジャイル的な開発手法を事業企画や展開に適用した」と説明すると、分かりやすいかもしれません。

 一方、日本国内ではIT人材の不足が盛んに議論されるようになりました。直近の公式データとしては、6月10日に経済産業省が公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果のとりまとめ」があります。それによれば、2015年時点で既に約17万人が不足しており、2020年には約37万人も不足すると見込まれています。より詳しく見ると、ITベンダーやSIerなどのIT関連企業だけで約13万人(2020年で約30万人)が不足する上に、ユーザー企業でも約4万人(同約7万人)が不足するという結果になっています。日本全体で何らかの対策を取ったとしても、この需給状況はすぐに改善するものではありません。

 以前から、特にユーザー企業内のIT担当部門では人数が基本的に変わらず、増員も現実的に見込めないという声をよく聞きます。そもそもIT業界以外のユーザー企業からすれば、IT部門は自身の事業分野と異なる間接部門になりますから、経営層からすれば、「あまり人員を割きたくない」と考えるでしょう。

 また、新卒一括採用を前提とした日本の企業環境ではIT管理者として募集されることはほとんどなく、その企業で働きたいと思った理系(場合によっては文系)社員がIT部門に配属されることとなります。こうなると本人がその企業に入った理由や目的から外れるだけでなく、その後の他部署への異動も一般に難しくなることから、出世コースから外れてしまうこともIT担当者が十分に増やせない原因の一つとなっています。

 最近ではeコマース企業や大手製造業において海外と同様に、IT担当部門以外の業務部門でIT活用ができる人材を積極的に求めるケースがみられつつありますが、いまだ少数派の状況が続いています。

 このような日本独特の企業IT環境に合わせて、普段であればベンダーやSIer側から新製品の紹介やシステム更改や改善の提案があって、それを受けたユーザー企業内部で検討をするなり外部に任せるなどして対応を行うところなのですが、中小企業向けを中心にSIerも技術者不足で回り切れていないように見受けられます。

 つまるところ、現在でもユーザー企業のIT担当者にとって非常に厳しい状況ではありますが、この状況は少なくとも短期では改善されず、より深刻になりつつあると言えます。とはいえシステムの更新や増強はビジネス上必要です。

●データ量でもIT管理者がパンクする

 ITインフラ管理の観点では、データ量の伸びも顕著です。以前から、およそ2年で2倍というペースで増加が続いているうえに、ビッグデータやIoTといったキーワードに代表される非構造化データの伸びが著しく、これまでの一般的なデータ管理方法では追いつかなくなってきています。

 調査会社によれば、2020年までにサーバ台数は従来の10倍、データ量は14倍に伸びると予測されています。しかしITスタッフは1.5倍しか増えないと予測され、これは一人のITスタッフが管理するモノは約7倍に膨れ上がることを意味しています。

 こうなると、いくら省力化を図ったとしてもユーザー企業のIT担当者は普段の運用だけで手いっぱいの状況になり、新しい技術やソリューションを網羅的に追随することは現実的に不可能です。そのため、IT部門は短期・中期の両面から自己の役割と位置付けを再度考慮しなければなりません。そのうえでITシステムの設計・運用・管理に対してはリーダーシップを取ってプロジェクト化し、DevOpsに代表されるようにユーザー部門側の積極的な参画を通じて実質的なリソースを補充し、同時に不適切なシステム設計・運用の回避による後工程での手直しの削減・効率化が図れるよう変化していくことが求められます。

 それでは、新しいデータ管理、ITインフラ管理としては、どのように定義・設計・運用・管理していくことが望ましいのかでしょうか。前回はユーザー企業におけるITインフラ管理として、「社内を生かす」か「社外を生かす」かの大きく2つの方針を決める必要があると紹介しました。さらに、この点を掘り下げていきます。

●自社管理とアウトソーシング活用の違い

 「社内を生かす」方法は、自社でシステムを主導的に管理、運用する方法です。この方法を取る場合、将来予測される人手不足、ひいては一人あたりの負担の増大に対処するため、ITインフラ自体の近代化、効率化が必要になります。

 一方の「社外を生かす」方法は、主にアウトソーシングによって社外に運用管理を委託する方法になります。この方法では、ユーザー企業のIT部門は主に計画、企画と業務部門との接点として、プロジェクト管理や要望、要件の整理といった社内調整を主に担当し、日々のITインフラそのものの提供や運用管理は外部のSIerやマネジメントサービスプロバイダー(MSP)といったIT関連企業に任せることになります。

 いずれの場合も一つひとつの業務ごとに運用・管理する従来手法は現実的ではありませんので、ユーザー企業は今後のITインフラ全体を計画し、考慮して判断することとなります。それぞれの方式にメリットとデメリットがあります。要点を比較したのが次の表です。

 この表に挙げた2つの方針は、どちらが正しいというものではなく、各企業の文化や体制、取引先などとの関係から適切なものを選択するべきものとなります。ユーザー企業の規模によっては、両方を併用することもあり得ます。次回は、上記2つの方針それぞれについて、より詳しく説明します。

●執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。

最終更新:7月5日(火)17時43分

ITmedia エンタープライズ