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地元企業とPR作戦 観光業者の3割「知らない」 東京都心に“出張所” 山梨県甲斐市

日本農業新聞 7/5(火) 12:00配信

 知名度の低さに悩む山梨県甲斐市は、市への移住や農産物販売の増加につなげようと、東京に進出している地元企業に委託して東京都杉並区に特設出張所を設けた。平日は移住相談、週末は首都圏各地のマルシェで農産物を売り込む。出店は昨年6月から延べ約190回、来客数は20万人を超えて販路も広がった。都内で年間通して活動するノウハウや財力が乏しい市にとって「大助かり」の試みだ。

・マルシェ積極展開 移住・定住相談も

 同市は東京からJR特急で約1時間半の所にあり、サトイモ「やはたいも」や「甲州ワインビーフ」など特産品も多い。

 だが、「甲州市」のように似た名前の自治体があって混乱を招き、さらに2010年にプロの観光業者を対象にした市の調査でも3割が甲斐市を「知らない」と回答。「県内の市町村と比べて知名度が低い」(市秘書政策課)のが実態だ。

 そこで人口減や特産品のブランド化といった課題を解決するには、移住促進で人口を増やし、もっと特産品を売り込み、農業を元気にする必要があると考えた。

 当初は、都内にアンテナショップを開設することも検討したが、賃料が高く断念。常設店舗で客を待つより、攻めの姿勢で首都圏のマルシェに出向いて売り込もうと考えた。

 プロジェクトの名は「KAISTYLE(甲斐スタイル)」。予算として市は15年度1000万円、16年度約900万円を計上。都内で飲食業などを展開する地元出身の企業(株)甲斐路苑に依頼し、杉並区のJR荻窪駅前に営業拠点「KAISTYLE TOKYO BRANCH」(甲斐スタイル東京出張所)を設けた。

 出張所には3人の社員が常駐。月~木曜日は移住・定住相談に応じ、1カ月に3~5人が訪れる。金~日曜日は同市の若手農家と共に、首都圏のマルシェで地元農畜産物を販売・PRするのがパターンだ。

 マルシェで扱う農産物は、同社の社員らが早朝に農家から集めて10品目程度を販売する。市場に出荷できない規格外品も引き受けることで、出荷農家や取扱品目を増やしている。

 マルシェ来店者は、甲斐市がどこにあるのかを知らない人がほとんど。そこで、すかさず担当者が農家の熱い思いや観光をアピール。まずは市を知ってもらい、興味を持ってもらおうと市のセールスマンとして奮闘する。

 同社の長谷部条代表は「甲斐市の知名度は低いが、魅力はたくさんある。会社としての収益は難しいが、観光誘客や移住促進につなげられるよう、地元に密着した企業として貢献したい」と、古里の活性化に意気込む。

 市は「民間だからこそできる試み。市には商売のノウハウがなく、とてもここまでできない」(同課)と効果を実感する。出張所のおかげで新規就農者の販路が生まれ、市の「ふるさと応援寄附金」(ふるさと納税)も増えているという。

・乏しい財源 有効な方策

 こうした市の試みについて、アンテナショップ事情に詳しい四国大学短期大学部ビジネス・コミュニケーション科の加渡いづみ准教授は「都心への出店は年間、数千万円から億円単位の費用が必要で、財源が乏しい自治体にとってはマルシェ出店というやり方は有効。首都圏進出の足掛かりや、試作販売の場にもなる」と評価する。(三浦潤一)

日本農業新聞

最終更新:7/5(火) 13:53

日本農業新聞