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【千葉魂】 成長続ける若き司令塔 田村、苦い経験を糧に飛躍

千葉日報オンライン 7/5(火) 12:55配信

 脳裏から離れないシーンがある。神妙な表情で田村龍弘捕手は振り返る。2015年10月14日クライマックスシリーズファイナルステージ、福岡ヤフオクドームでのホークスとの第1戦。延長十回の先頭打者上林を2ストライクと追い込み、続く球を振らせたもののボールを後ろにそらし、振り逃げで出塁を許した場面。その後の結果はサヨナラ負け。田村はベンチに戻り、タオルを頭から覆い、涙した。要求したスライダーがベースの直前でワンバウンド。空振りを取り、本来は三振だったが、ボールは三塁側ファウルゾーンを転々とした。そして1死満塁。内川に右中間にはじき返され、サヨナラ負けを喫した。チームは結果的に3連敗でシーズンは終了。あのワンバウンドのボールを後ろにそらさなければ1死走者なし。流れが大きく動いた瞬間となってしまった。天国と地獄ほど違う結果に、責任のすべてを背負い込んだ。

 「ずっと、頭から離れなかったですね。その後の秋季キャンプの時もまだ、後悔の気持ちが残っていた。突如、あの場面がスローモーションのように思い出されるんです。ボールの軌道、どこでワンバウンドして、どこに転がったかは一生、忘れない。試合を左右した大事なプレーですからね」

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 結果的に3連敗でホークスとのクライマックスシリーズは終了した。3戦目の試合終了と同時に、悔しさがまた頭をよぎり、ベンチで涙した田村を伊東勤監督は慰労し、励まし、そして最後に強い口調で伝えた。「厳しいようだが、泣いていてもなにも始まらない。泣いている暇があったら、練習をして、成長をするしかない。人間だから失敗をするのは仕方がないし、そこからこそ人は成長をし、学ぶことができる。だが、プロは二度と同じような失敗をしないようにしないといけない。特に捕手はなおさらだ」。その言葉にハッとさせられた。だから昨秋の鴨川キャンプ、自戒の念と悔しさを胸に取り組んだ。田村は成長した姿を見せるべく歯を食いしばって、トレーニングを繰り返した。二度と、後ろにそらさないよう日が暮れるまで何度もワンバウンドの捕球練習を行った。そして、足を引っ張った打撃を向上させるため、特打を重ねた。

 「正直、今でも頭をよぎることはありますよ。2ストライクに追い込んだ同じような状況の場面では必ずあの場面が脳裏をよぎる。もう二度と、同じミスはしない。絶対に止めると思いながらいつもサインを出しているんです。同じ失敗は絶対にしないと決めている」

 指揮官のげきを胸に刻み、糧と変え、年が明けても野球に取り組んだ田村は、今シーズン大きな飛躍の年を迎えている。73試合に出場して打率・272、1本塁打、26打点。マリーンズの若き司令塔として人には見せぬ努力を重ねて、幾多の勝利を導いてきた。監督、コーチ、スコアラーなどからのあらゆる情報を整理し、アドバイスを求めて、コミュニケーションを重ねた末にリードをするその姿勢は、投手陣からの信頼も厚い。

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 現役時代2379試合に出場をした大捕手である指揮官はそんな若者に惜しみなく自分の考えを伝えている。試合前、試合中、ちょっとした場面で呼び、意見を伝える。

 「マスクを被っている捕手にしか見えないこともあるけど、ベンチから見える事もある。そういう意味で気が付いたことは伝えるようにしている。少しでも視野を広げられるように、いろいろと考え方を伝えている。経験が大事なポジションだからね。痛みを知れば知るほど、レベルアップができる。オレだって、若い時はつらい時、悲しい思いは数えきれないほどしてきた。今、苦しめば、後にいい思いができる。そうやって励まして、でも厳しく接しているよ」

 そう言って、笑った先で田村は試合前にも関わらず、大粒の汗を流し、必死に練習を繰り返していた。眠れない日はある。夢にまで自分のリードで打たれた場面が出る事がある。それを繰り返して捕手は成長をする。指揮官は身をもってそれを知っている。その積み重ねの先に待つ栄光を手に入れた男は、自分の息子より若い捕手を叱咤(しった)し、励ましながら試合に起用し続けている。

 「オレの若い時なんて、もっと厳しかったよ。今なんて、甘い。毎日、夢に出てきたし、何度も布団の中で涙した。若い頃に野球が面白いとか、楽しいなんて思った事は一度もなかったよ。毎日が苦しくてつらかった。でも逃げなかった。いつか絶対に報われる日が来ると信じていた。それこそが身になり、力に変わったと思う」

 田村は2016年のオールスターゲームに監督推薦で初出場が決まった。「遊ぶのではない。いろいろと勉強をして来い!」と指揮官は送り出す。まさに日々、成長を続ける若き司令塔。シーズンが折り返した今、難しい判断を要求される場面はこれからさらに増えるだろう。それを乗り越えられる若者と思うからこそ、マリーンズのホームベースを任せる。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:7/5(火) 12:55

千葉日報オンライン

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