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見えない世界遺産、来場者5倍に 佐賀・三重津海軍所跡が登録1周年

佐賀新聞 7月5日(火)11時47分配信

ガイド育成に力、今後の「ネタ」苦悩も

 佐賀県佐賀市の三重津海軍所跡は、世界文化遺産に登録され1周年を迎えた。「登録効果」で昨年度の来場者数は約18万人に上り、前年度の5倍と大幅に増加した。地元ボランティアが積極的に活動したり、近くにカフェや土産店が出店したりするなど、史跡周辺でにぎわいづくりの動きも出ている。一方、今年5月の来場者は、登録勧告で急増し始めた1年前と比べ約6千人減少しており、楽観視できない面もある。

 5月11日夜、川副町の中川副公民館には英語と中国語が響いていた。「キャン ユー スピーク ジャパニーズ?」「ニーハオ!」。発声しているのは地元住民ら約10人。手作りの教材プリントには、カタカナで発音が表記され、講師に続けて英語と中国語の発音を練習した。

 ボランティアガイドとして現地に立つ中川副まちづくり協議会歴史・伝統部会の副田峰子さん(71)は「外国のお客さんが来たときに説明できず、悔しかった」と特訓を企画した。

 史跡に隣接する佐野常民記念館の来場者数は昨年度18万1280人。月平均1万5千人で、最多は10月の2万3千人だった。本年度は4月が8522人、5月は1万2755人となっている。予約で埋まっていた記念館のホワイトボードには空欄が目立ち始めた。「来場者が多い7月から11月を見ないと傾向はつかめない」と市担当者。登録効果が維持できているか、見極めは慎重だ。

 地域活性化につなげようとする動きも、徐々に広がりつつある。史跡周辺では、昨年9月に「ダイダイカフェ」、登録1年のタイミングで今月、土産品店「ホスムスカモス」が隣りに開業した。

 カフェ店主の野中崇弘さん(30)は「冬場はお客さんが来ない日が続き、本当に厳しかった」と観光客を呼び込む難しさを痛感した。隣りに「同志」が登場したことに「本当にうれしい。人の流れも少しずつ変わり始めた」と喜ぶ。

 昨年は5月の登録勧告、7月の決定、PR動画公開など話題に事欠かず、メディアへの露出も多かった。その分、市担当者は今後の話題提供の「ネタ探し」に頭を悩ませる。

 本年度力を入れるのがガイドの充実で、今夏から養成講座を開く。必要な知識や話し方など技術向上で、地下遺構のドライドックなど「見えない史跡」の価値を正しく魅力的に伝えるガイドを育てる。

 史跡整備の基本計画も本年度の重要な業務の一つ。専門家たちと、「保存と活用」の調和が取れた整備計画を考える。「史跡の価値を伝えるガイダンス施設の設置も検討課題となる」と市三重津世界遺産課の木島慎治課長。「地域の宝」をどう生かすか、手探りは続く。

最終更新:7月5日(火)11時47分

佐賀新聞