ここから本文です

ちょっと不思議な名前の魚屋「フーリオ水産」 ペルー人に魚屋継がせた親方の心意気「魚食文化を残したい」

withnews 7月7日(木)7時0分配信

 横浜南部のベッドタウンの駅前にある小さな魚屋「フーリオ水産」の店主、フーリオ・セサルさん(34)は南米ペルー生まれ。鮮魚や刺身、干物が並ぶ魚屋を、コロンビア出身の妻サンドラさん(39)と一緒に切り盛りしています。中学生の時に彼を魚屋に紹介した校長先生、魚のさばき方から読み書きまで教えた親方…。たくさんの人との出会いが、彼を支えてきました。(朝日新聞横浜総局記者・太田泉生)

【画像】手描きのイラストが可愛い…ペルー人が営む「フーリオ水産」の独特な雰囲気

「水からだよ、お湯じゃないよ」

 JR根岸線洋光台駅を降りてすぐ。ラーメン店や精肉店が入る商業ビルに店はあります。1階のちょっと奥まった位置で、地元の人でも気づきにくいかもしれません。

 6月の昼下がりに店を訪ねました。冷蔵ケースには相模湾でとれた見事なアジ、東京湾のスズキ、房総の金目鯛など、旬の魚が並んでいます。干物や昆布、海苔や鰹節も並び、雰囲気は昔ながらの街の魚屋さんです。

 初老の女性が真鯛のアラを手に、フーリオに潮汁の作り方を尋ねました。「塩を振ってから鍋にお湯をわかして、ぐらぐらしてきたら湯通ししてざるにあげて。今度は水から炊くんだ。水からだよ、お湯じゃないよ」。女性は「そうなんだ、やってみよう」とアラを買っていきました。

 次に店に来た男性は、「このイワシ、自分だったらどうやって食べる?」。フーリオが答えます。「俺は開いてパン粉付けて揚げるのが好きッスね。骨が嫌なんで、骨とっちゃって、サクサクって食べたい」。お客さんとの会話が弾みます。

「ペルーに帰りたい」泣いていた小学校時代

 フーリオはペルーの首都リマ生まれ。母親のセシリアさん(57)が日系3世で、1990年に来日しました。当時7歳。入管法が改正され、海外の日系人が日本で働きやすくなった時期です。

 磯子区内に住み、地元の小学校に通いました。最初は日本語がわからず、兄に「ペルーに帰りたい」と言って泣いたといいます。やがて友達もでき、会話はできるようになりましたが、読み書きは難しすぎて、あきらめていました。

 転機になったのが、中学校の校長先生だった高橋啓子さん(76)との出会いです。

 中学2年のある日のこと。校内放送に高橋先生の声が響きました。

 「フーリオ・セサル、校長室に来て下さい」。校長室で紹介されたのが、洋光台駅前で「日吉水産」を営んでいた日吉さんでした。「こんど店に来てよ」。日吉さんの優しげな笑顔が印象に残りました。

1/3ページ

最終更新:7月7日(木)7時0分

withnews