ここから本文です

社説[米軍属の範囲見直し]再発防止につながらぬ

沖縄タイムス 7月6日(水)5時0分配信

 日米両政府は5日、日米地位協定における米軍属の範囲の見直しで合意した。
 うるま市で発生した女性暴行殺人事件の被告が米軍属だったことを受け、一般的な技術者などの請負業者を軍属の対象から外すことを想定している。最終合意ではなく、今後数カ月間かけて細部を詰め、法的拘束力のある政府間文書の締結を目指すという。
 最終合意でないにもかかわらず、日米両政府が発表したのはなぜか。「凶悪犯罪を防止するため」「県や県議会が求める地位協定の抜本的改定には応じられないとのメッセージを伝えるため」「参院選を有利に進めるため」-。
 地位協定では軍属を「米国の国籍を有する文官で、在日米軍に雇用され、勤務、随伴する者」と規定。通常、日本に居住する者は除かれる。
 軍属の範囲の見直しは、逆に言えばこれまで軍属の位置付けがあいまいだったからであり、本来なら事件に関わりなく正しておくべきだった。
 軍属の範囲の明確化と凶悪犯罪を防止することがどうつながるのか分からない。軍属は全体のわずか。抑止効果はあったとしても限定的とみるしかない。米軍が再発防止策を出したにもかかわらず、米兵の飲酒運転の事故が後を絶たないことからも分かる。
 1995年の米兵による暴行事件を糾弾する県民総決起大会以来、県や県議会は地位協定の抜本的な改定を求めてきた。だが、日米両政府とも地位協定の本体には手を付けることをしない。事件事故が起きるたびに運用改善による対応を続けている。今回も日米両政府が地位協定の抜本的改定を協議した形跡はない。
■    ■
 参院選を有利に進めるため、という見方はどうか。
 参院選は10日の投票日に向け終盤戦に入った。この時期になぜ、日本側から外務・防衛相、米側から駐日米大使・在日米軍司令官が顔をそろえ恭しく発表したのだろうか。
 既視感がある。文化財調査で欠陥が明らかになっている「環境補足協定」。日米両政府は2014年10月、交渉中にもかかわらず発表した。知事選を控え、前知事を後押しする意図があからさまだった。
 15年12月には米軍普天間飛行場東沿いの4ヘクタールを17年度内に返還することで合意した。これも宜野湾市長選の直前の発表だった。
 沖縄が求めているのは、在日米軍の特権的な地位を定めた地位協定の抜本的な改定である。防衛省によると、13年3月末現在、県内には1885人の軍属がいる。
 このうち見直しで何人が減少するのか、はっきりしないが、凶悪犯罪の抑止につながるのかどうか疑問である。
■    ■
 小手先の見直しにとどまっては、ほとぼりがさめるとまた事件事故が繰り返される。
 地位協定や関連取り決めは憲法・国内法より優先され、主権や地方自治を侵害している。この構図にメスを入れなければならない。
 日米両政府が事件事故の再発防止策を本気で考えるなら地位協定の抜本的な改定と米軍基地の大半を占める海兵隊撤退に踏み込む必要がある。

最終更新:7月6日(水)5時0分

沖縄タイムス

【生中継】小池百合子都知事の会見