ここから本文です

高温では剥がれず、光で剥がせる接着材

EE Times Japan 7月6日(水)11時13分配信

■「強く接着」「光で溶ける」「迅速に剥がれる」

 京都大学大学院理学研究科で准教授を務める齊藤尚平氏らは2016年7月、高温環境でも十分な接着力を示し、紫外光を照射すると粘着力が極めて小さくなる液晶接着材料の開発に成功したと発表した。「ライトメルト型接着材料」と名付けたこの仮固定用接着材料は、半導体製造プロセスなどさまざまな製造工程の接着材料として、その応用が期待できるという。

 電子部品などを仮固定する接着材料としては、これまで熱で剥(は)がすタイプの接着材料(ホットメルト型接着材料)が幅広く用いられている。ところが、これらの材料は高温になると接着力が大幅に減少するという欠点があった。このため、光で剥がすタイプの接着材料が注目されている。しかし、これまでは「光で剥がれる機能」と「高温でも接着力を維持する機能」を両立できる材料開発が難しかったという。

紫外光に応答する独自の分子

 そこで研究チームは、紫外光に応答する独自の分子を設計、合成した。この分子を基盤としてカラムナー液晶という自己凝集力の高い材料へと発展させた。これらの研究により、2つの要件を同時に満たす新機能材料「ライトメルト型接着材料」の開発に成功した。

■100℃で1MPa

 研究チームは、開発したライトメルト型接着材料を2枚のガラス板に挟んで、接着性能の評価を行った。その結果、室温では1.6MPa、100℃の高温でも1.2MPaという高い接着力を得られることが分かった。一方、紫外光を照射すると液化し接着力は85%低下した。一般的なLED光源を用いて紫外光を照射すると、2~3秒間(光量は320mJ/cm2)で剥離させることができた。また、160℃で加熱処理すれば、再び接着力を取り戻すリサイクル特性を持っていることも分かった。ライトメルト型接着材料は蛍光機能を備えており、蛍光色の違いによって接着状態と非接着状態を見分けることも可能だという。

カギは自己凝集力の高さ

 研究チームは、高い接着力が得られた理由として、高い自己凝集力をもつ材料を開発できたことを挙げた。高い自己凝集力を引き出すため、集積しやすいV字型の分子構造を採用している。これによって、カラムナー液晶という自己凝集力の高い材料を開発することができた。しかも、分子設計の最適化により、カラムナー液晶状態を示す温度を高温領域に調整したことで、耐熱接着を実現した。

■はがれる仕組み

 一方、液晶状態を示す温度範囲(70~135℃)で紫外光を照射すると、V字型の分子が形を変えて平面型となる。隣の分子に近づいたものは結合し、2量体を形成する。こうして生成された一部の2量体は不純物として働き、V字型分子の集積構造を壊す。この結果、接着力の強いカラムナー液晶が崩れ、液体となった混合物は大幅に接着力が低下するという。

 仮固定用の接着材料として用いる場合、少ない光量で速やかに剥離されることが望ましい。開発したライトメルト型接着材料を用いて行った評価試験では、ごく少量の使用でも紫外光により剥離することができ、光を照射した透明部材には剥離後に接着材料がわずかしか残らないことも分かった。

■高温で透明部材を加工する用途に有効

 今回開発したライトメルト型接着材料技術は、「光液化材料を用いた仮固定接着」を大きく進展させる技術とみられている。スマートフォンなど透明な部材を高温で加工するような、さまざまな製造工程に利用される見通しだ。

最終更新:7月6日(水)11時13分

EE Times Japan