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実店舗の開設・拡大に動く格安スマホ、“食わず嫌い”の顧客取り込む

日刊工業新聞電子版 7月6日(水)7時30分配信

接点広げ認知度高める

 格安スマートフォンを提供する各社が認知度の向上に向け、実店舗の開設を積極化している。通信料が割安な点に加え、楽天など大手の異業種が参入し注目度が高まったことで、格安スマホの契約数は増加傾向にある。ただ消費者の認知は途上にあり、知らないが故に“食わず嫌い”になっている顧客も少なからずいる。店舗展開により顧客との接点を広げ、サービスに対する認知度や安心感を高めて顧客の獲得を狙う。(葭本隆太)

 MM総研(東京都港区)によると、2016年3月末時点の格安スマホ契約数は約540万件で2年前の3倍に拡大した。「知名度の高い異業種が参入し、20代や女性などの認知が進んだ」(MM総研の横田英明取締役)ため、契約数が伸びたという。

 これまではITリテラシー(活用能力)が高いとされる30―40代の男性の契約が中心だった。一方で「消費者全体の認知度はまだ低く、サービスの質を不安視する食わず嫌いも多い」(同)。この解消策として、各社は店舗展開などによる顧客接点の拡大を重視する。

 楽天は5月に全国9カ所目となる「楽天モバイル」の直営店を福岡市に開設した。家電量販店などにも出店し、6月29日時点で全国に72店舗を持つ。大尾嘉宏人執行役員は「年内に100店舗まで増やす」と意気込む。利用希望者の自宅で申し込みを受け付ける出張サービスなども展開する。

 店舗展開ではトーンモバイル(同渋谷区)も注目される。CD・DVDレンタルなどを全国で展開する「TSUTAYA」で販売しており、取り扱い店舗を16年度内に200店まで増やす。トーンモバイルの中村礼博取締役は「既存のレンタル商品スペースなどとの融合を含めてスマホのコーナーに立ち寄りやすい店舗の作り方をパッケージ化し、今春から各店舗に展開している」という。

 通信事業者も顧客接点を重視する。インターネットイニシアティブ(IIJ)は家電量販店など全国約400店以上に出店。さらに格安スマホ事業のプラットフォームを提携企業に提供するMVNE事業にも注力する。提携企業は独自の料金体系などで格安スマホ事業を展開できる。

 MVNO事業部MVNO事業統括室の堂前清隆シニアエンジニアは「地域に根ざしたケーブルテレビ事業者などと提携し、顧客接点とすることで顧客を効率的に獲得する」と狙いを明かす。

 MM総研は格安スマホの契約数について18年3月末に1170万件まで伸びると予測する。今夏にはLINE(東京都渋谷区)が参入する見込みで、格安スマホへの注目はさらに高まりそうだ。同時に事業者間の競争も激しさを増す。横田取締役は「今後は市場の拡大とともに(サービスの認知度などに応じて)淘汰(とうた)される事業者が出てくる」と見る。

 市場の拡大に伴いサービスの内容や安定性が問われる局面を迎えつつあり、格安スマホ各社は顧客の囲い込みに向けて知恵と工夫が問われることになる。

最終更新:7月6日(水)7時30分

日刊工業新聞電子版