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「地方創生学部」新設ラッシュ、大学生は地域の苦境を救えるのか

ZUU online 7/7(木) 8:10配信

国が地方創生の推進を打ち出しているのを受け、地方の国立大を中心に「地方」や「地域」という言葉をつけた学部の新設ラッシュが続いている。今春からは栃木県宇都宮市の宇都宮大など5校で地方創生に向けた新学部が登場した。1期生たちは今後、本格的に地域へ飛び出し、地元の課題解決に挑む。

地方創生はほんのひと握りの自治体しか成功しない厳しい世界だが、大学生の若い視点が苦境に立つ地域を救うことはできるのだろうか。

■宇都宮大は夏休みから栃木県内各地で地域学習

地方創生に取り組む新しい学部は、国立大だと2015年春に高知県高知市の高知大、2016年春に宇都宮大のほか、福井県福井市の福井大、愛媛県松山市の愛媛大、佐賀県佐賀市の佐賀大、宮崎県宮崎市の宮崎大に登場した。

このほか、静岡県静岡市の静岡大は学部横断教育プログラムとして地域創造学環を設けた。私立大では東京都豊島区の大正大が2016年度から地域創生学部を開設、宮城県や山形県を舞台に実習を重ね、地方創生の即戦力を世に送り出す考えだ。

宇都宮大は地域デザイン科学部を新設した。工学部にあった建設学科を母体に社会科学系学科を加え、理系2、文系1の学科で構成した文理融合学部だ。新入生は151人。7割が栃木県外の出身者で、東北や北関東出身者が多い。

より高度な研究に入るための入口と位置づけ、1年生の教育を進めている。入学後の3カ月間はさまざまな意思疎通法に触れる演習でコミュニケーション能力を養うとともに、自治体の首長や企業経営者を招いた授業で地方の現状について学んできた。

学生たちは夏休みから各学科の専門に応じて県内各地に出かけ、地域が抱える課題について考察、その結果を発表する。

塚本純宇都宮大地域デザイン科学部長は「都市と農村、山村を抱える栃木県は日本の縮図。現代社会を多面的に理解し、地域課題を解決できる人材を育成したい」と意気込んでいる。

■愛媛大は後期から1期生全員がフィールドワーク

愛媛大が新設したのは社会共創学部。文理融合学部で、産業イノベーション学科など4学科を置き、その下に海洋生産科学など2~3のコースを設けている。新入生は191人。55%が愛媛県内から、残り45%が県外から進学してきた。

入学から3カ月間は予備知識を学ぶ期間と位置づけた。地域に飛び出して学習するのはこれから。夏休み中は産業イノベーション学科の学生が県内の自治体や企業を訪ね、地域の実情について学ぶ。

後期は191人全員が県内の4カ所ずつを回り、フィールドワークに入る。地域が抱える課題を把握したうえで、計画を立てて課題の解決方法を探り、プレゼンテーションする予定だ。

愛媛大社会共創学部は「地域の課題解決は簡単に片付く問題ではないが、学生たちがどんな解決策を提示してくれるのか楽しみ」と期待している。

宮崎大は地域資源創成学部を設けた。2年生の後期から地域創造、企業マネジメント、新産業創出の3コースに分かれ、地場産業の振興や地域資源の事業化に取り組む。1期生は96人。ざっと8割近くが宮崎県出身だ。

6月上旬には宮崎市の観光地青島など3カ所を3班に分かれて訪問、地域理解学習に取り組んだ。公民館などで地元の住民や県外からの移住者らを講師に地域の現状について説明を受け、意見交換している。

自治体や企業の幹部らを大学に招き、即戦力になる人材養成を目指した実践的なカリキュラムも設けた。宮崎県は人口減少が深刻な問題だけに、卒業後に地域のリーダーとなって引っ張っていく人材になってほしいという思いがそこに込められている。

宮崎大地域資源創成学部は「6月の地域学習で学生たちは地域の現状について理解を深めたようだ。卒業までに多くのことを学び、地域の活性化を担えるように成長してほしい」と目を細めている。

■地域の魅力を見つけ、リーダーシップを発揮する人材を育成

地方創生を学ぶ学生たちに期待されるのは、若者ならではの視点で地域の魅力を見つけることだ。地方活性化を成功させるのは「よそ者、若者、変わり者」とよくいわれるが、その理由は地域にいる大多数の人たちと異なった視点を持っているからだ。

社会や業界の常識にとらわれず、柔軟な発想ができる若者の力が存分に発揮されれば、従来に見られなかった新しい提案が期待できるだろう。兵庫県神戸市の異人館通りを保存し、地域を代表する観光地に育て上げるきっかけを作ったのも、旅行で訪れた若者たちの声だった。

もう1つ期待されているのは、地域をまとめるリーダーに育つことだ。地域おこしの成功例といわれる地域には、仲間に共通の目的を提示し、励ますリーダーが存在している。良いアイデアを持ちながら、リーダー不在で地域の住民がバラバラに活動したため、失敗に終わった例は少なくない。

地域の魅力を発見する確かな目を持ち、リーダーシップを発揮できる人材を新学部が育成できれば、人口減少と高齢化に悩む地域に新しい光が届くかもしれない。新学部で学ぶ学生に対する地元の期待は大きい。



高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:7/7(木) 8:10

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