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財政状況が悪いと言われる日本の通貨がなぜ買われるのか?

ZUU online 7月7日(木)11時10分配信

グローバルな景気・マーケットの不安定感が高まる局面で、日本の通貨である円は、安全資産として買われやすい。では、日本の財政状況は極めて悪いと言われ続けてきたにもかかわらず、なぜ円が安全資産であり続けているのか考える。

■国内の所得を維持する財政支出が必要な状況か

民間投資が国内民間貯蓄を上回り、財政支出が大きく財政赤字であれば、国際経常赤字となる。そのような状態が続けば、政府の純債務残高(GDP比)が上昇するとともに、海外からの借り入れも大きくなり、対外純債務残高(GDP比)も上昇していく。

一方、国内経済が成熟化し、国内貯蓄が潤沢で、投資需要が小さければ、国際経常黒字が継続し、海外への貸付が大きくなり、対外純債務残高(GDP比)は低下する、または対外純資産残高(GDP比)が上昇する。

もし、国内の投資需要と海外からの資金需要の合計が国内貯蓄より小さければ、国内の所得はそれが釣り合うところまで減少してしまうことになる。その足りない分だけ、財政支出が増加すれば、国内の所得を維持することができる。

裏を返せば、そのような状態であれば、市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、そして貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止を目的とした財政支出の増加の余裕があるということになる。実際に国が豊かになるとともにそのような財政支出が増加する傾向がみられ、社会厚生は拡大し、対外純資産残高(GDP比)が上昇するとともに、政府の純債務残高(GDP比)も上昇していくことになる。

■複数のファクターが「日本円」を安全資産に押し上げる

横軸に対外純資産残高(GDP比)をとり、縦軸に政府の純債務残高(GDP比)をとれば、スマイルカーブ(U字型)になると考えられる。多くに国々を集めて、グラフをつくってみると、確かにしっかりとしたスマイルが確認できる。

左の方は、対外純債務残高(GDP比)が大きく、政府の純債務残高(GDP比)も大きい国々となる。例えば、ギリシャなどがその代表例だ。

一方、右の方は、対外純資産残高(GDP比)が大きく、政府の純債務残高(GDP比)が大きい国々となる。日本はこちらに入っている。対外純資産残高(GDP比)が大きく、政府のネット債務残高(GDP比)が大きいということだ。真ん中あたりは、両者がバランスしている国々となる。

このスマイルカーブを、より直感で理解しやすいきれいな直線にする方法もある。

左の方の国々は国内所得に対して国内支出が大きく家計の純資産の蓄積は小さいと考えられ、右の方は国内所得に対して国内支出が小さく家計の純資産の蓄積が大きいと考えられる。横軸に対外純資産残高(GDP比)をとり、縦軸に政府の純債務残高(GDP比)と家計の純資産残高の差をとれば、予想通り右下がりのきれいな直線となる。

左上の方の国々は財政問題が深刻であり、右下の方は財政問題はそれほど大きくはないことを意味し、単純に政府の純債務残高だけでは比較できないことを示している。

もちろん日本は、家計の純資産と比較した政府純債務残高が小さく、対外純資産も大きい、財政問題がそれほど大きくない右下に属する。右下の方のフロントランナーはスイスと日本であり、グローバルな景気・マーケットの不安定感が高まる局面でスイスフランや円が安全資産として買われる理由であろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:7月7日(木)11時10分

ZUU online

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