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さくらレポート(2016年7月)~景気判断は2地域で引き下げ、先行きは景況感の悪化が鮮明

ZUU online 7月7日(木)18時50分配信

■全9地域中2地域で景気判断を引き下げ

7月7日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域中、中国、九州・沖縄を除く7地域で景気の改善度合いに関する判断を据え置いた。

中国では生産面等で一部に弱めの動きがみられるとして、九州では熊本地震の影響がみられるとして、それぞれ判断を引き下げた。その他の地域では、新興国経済の減速に伴う影響などから輸出や生産面に鈍さがみられるものの、国内需要は設備投資が緩やかな増加基調にあるほか、一部に弱めの動きがみられる個人消費も雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移していることから、景気の改善度合いに関する判断に変化はないとした。

■業況判断は8地域で悪化、EU離脱の影響を織り込まず実態はさらに悪化の公算

「地域経済報告(さくらレポート)」と同時に公表された「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中、北海道を除く8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)で前回調査(3月)から悪化した。

前回調査からの悪化幅をみると、熊本地震の影響で九州・沖縄(▲9ポイント)が最大となり、次いで四国(▲5ポイント)、中国(▲4ポイント)と続いている。前回調査では全9地域中6地域で悪化となったが、今回調査でも広範囲にわたって悪化するなど景況感は停滞感を一段と強めている。なお、英国のEU離脱の影響を殆ど織り込んでいないため、実態はさらに悪化している可能性が高い。

先行き(9月)についても、九州・沖縄を除く8地域で今回調査から悪化し、北陸、東海、近畿では水準がマイナスに転じるなど悲観的な見方が示された。今回調査からの悪化幅は、北陸(▲8ポイント)が最大で、次いで中国(▲6ポイント)、北海道(▲5ポイント)と続いており、九州・沖縄を除く8地域で引続き悪化するなど先行きも不透明感が高まっている。

なお、足元では英国のEU離脱を受けて円高・株安が進行しており、これまで「回復している(続けている)」「拡大している」「持ち直している」等としていた景気判断が次回調査(9月)でさらに下方修正される可能性が高い。

■製造業の業況判断は現状、先行きともに6地域で悪化

製造業の業況判断DIは、全9地域中2地域(北海道、近畿)で改善し、6地域(北陸、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)で悪化した(東北は横ばい)。

7月1日に公表された短観(6月調査)では、原油をはじめとした国際商品市況の改善を受けて一部の業種で企業マインドの改善がみられる一方で、円高や新興国経済の減速による輸出の減少、国内需要の低迷などから輸出関連を中心に悪化が示された。

地域経済報告(さくらレポート)においても、輸出依存度が比較的高いはん用・生産用・業務用機械や輸送用機械などで悪化が鮮明となり、前回調査(3月)に続き円高や新興国経済減速の影響を色濃く反映する結果となった。

また、輸送用機械は熊本地震による供給網の寸断や自動車メーカーの燃料費不正問題なども影響したとみられる。一方、国際商品市況の持ち直しが収益改善に寄与する鉄鋼や金属製品などが多くの地域で景況感の改善が示されたほか、円高の影響で原材料の輸入コストが下がる食料品は高水準を維持するなど明るい材料もみられた。

前回調査からの悪化幅は、熊本地震の影響で九州・沖縄(▲5ポイント)が最大となり、次いで中国(▲4ポイント)、北陸、東海(▲2ポイント)と続いている。

九州・沖縄では、木材・木製品(+11ポイント)、はん用・生産用・業務用機械(+8ポイント)が改善となる一方で、金属製品(▲20ポイント)や非鉄金属(▲16ポイント)など12業種中10業種で悪化したため、全体では落ち込みが最大となった。

中国では、円高進行への懸念などから輸送用機械(▲42ポイント)が大幅なマイナスとなったほか、紙・パルプ(▲37ポイント)、非鉄金属(▲22ポイント)などが悪化した。北陸では、石油・石炭製品(▲80ポイント)や木材・木製品(▲20ポイント)などが全体を押し下げた。

先行きについては、北海道、東北、九州・沖縄を除く6地域で今回調査から悪化が見込まれるなど不透明感が強まっている。業種別では、円高の進行や新興国経済の減速を受けて、輸送用機械、はん用・生産用・業務用機械を中心に悪化が鮮明となっている。一方、原油価格の回復が石油・石炭製品の景況感にプラス寄与したほか、市況改善により鉄鋼や金属製品にも持ち直しの動きがみられる。

日銀短観6月調査では、大企業製造業の2016年度想定為替レートが111.41円と3月調査時点(117.46円)から6円程度円高方向に修正されている。しかしながら、英国のEU離脱を受けて足元の為替レートは101円前後と10円程度円高が進行しており、次回調査の9月にかけて円高傾向が定着した場合、企業マインドや設備投資に悪影響を及ぼす可能性が高い。

■非製造業の業況判断は現状、先行きともに8地域で悪化

非製造業の業況判断DIは、全9地域中、北海道を除く8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)で悪化した。引き続き国内需要の低迷が景況感の下押し要因となったほか、これまで牽引役となっていた訪日外国人旅行客によるインバウンド消費が鈍ったことが全体を押し下げたとみられる。

業種別では、インバウンド消費が下支えとなっていた小売や宿泊・飲食サービスなどで景況感の悪化が鮮明となった。最近の景気ウォッチャー調査においても、百貨店などの小売業では年初来の株安に加え、インバウンド消費の減速を懸念する声が多く寄せられている。

前回調査からの悪化幅は、熊本地震の影響で九州・沖縄(▲12ポイント)が最大となり、次いで四国(▲7ポイント)、東海、近畿、中国(▲4ポイント)と続いている。九州・沖縄では、熊本地震による交通網の寸断やインバウンド消費の減速を受けて、宿泊・飲食サービス(▲50ポイント)や運輸・郵便(▲20ポイント)など11業種中8業種で悪化した。

四国では、対事業所サービス(▲22ポイント)が大幅な悪化となったほか、公共工事の減少などから建設(▲12ポイント)が悪化した。近畿では、インバウンド需要の鈍化などを受けて宿泊・飲食サービス(▲23ポイント)、小売(▲13ポイント)など幅広い業種(10業種中8業種)で悪化した。中国では、鉱業・採石業・砂利採取業(▲15ポイント)、運輸・郵便(▲11ポイント)などの悪化幅が大きかった。

前回調査から小幅な悪化(▲1ポイント)にとどまった北陸では、新幹線開業効果が薄れたこともあり宿泊・飲食サービス(▲24ポイント)の悪化幅は11業種中で最大となった。先行きについては、全9地域で悪化する見込みである。業種別では、燃料価格の上昇を受けて運輸・郵便が悪化するほか、高水準を維持している建設や不動産などで悪化が見込まれる。

引き続き国内需要の低迷、円高や新興国経済減速を背景にインバウンド需要が細るとの懸念が高まっていることが、非製造業の景況感を押し下げているとみられる。国内需要の低迷が続くなか、先行きは為替水準や海外経済の動向に注意が必要となろう。

岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

最終更新:7月7日(木)18時50分

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