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コグニティブとデジタル変革で企業に競争力を MSの平野社長

ITmedia エンタープライズ 7月7日(木)8時36分配信

 「徹底した変革を推進していきたい」――。7月5日、2017年度(会計年度)の戦略発表会で日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏はこう語った。

【画像】創立30周年記念の寿司

 2016年度、サティア・ナデラ率いるマイクロソフトは改革のスピードを落とさずに進んできたと同氏。ハイブリッドクラウドの開発、運用に向けたRed Hatとの提携、SQLサーバのLinux対応、Windows 10のBashネイティブ対応、オープンソースとの連携強化など、さまざまな施策を矢継ぎ早に打ち出し、「PC重視から人重視」「販売重視から利用価値の重視」という戦略に舵を切ってきた。

 3月には米国で、HMD型デバイスに3D映像を表示させる「HoloLens」の開発者向けエディションを出荷。6月にはHoloLensの基盤技術である「Windows Holographic」のパートナー企業へのライセンス提供を開始するなど、MR(Mixed Reality)実現に向けた準備を整えている。

 創立30周年の節目を迎える2017年度の方針について平野氏は「コグニティブサービスによるイノベーション」と「デジタルトランスフォーメーションの進展」の2つの軸で、社内外に革新を起こしたいと話す。

●人より画像の誤認識が少ないMSのコグニティブ

 クラウドが急速に進展する中、「最先端の技術を生かしてどのようにビジネスを推進していくかが重要になる」と平野氏。さまざまな先端技術がある中でも、コグニティブは非常に重要というのが同氏の見方だ。

 マイクロソフトのコグニティブサービスは、「知識」「言語」「音声」「視覚」「検索」の5つの領域をカバーしているのが特長で、さまざまな情報を認知し、認知した情報に対して適切な情報を出していくことができるという。画像認識では、誤認識の割合が3.5%に達しており、人間の5%を上回るほどだ。

 既に海外でも導入が始まっており、ブラジルのサンパウロで森林環境分析、メキシコで交通渋滞予測、米ワシントン大で患者の再入院予測や医師の配置の最適化の事例がある。日本でも大手金融機関が機械翻訳サービスの導入を検討しているという。

 同社では、要素技術をAPIで使える形で提供することで、コグニティブサービスを市場に出していく計画だ。

●4つのテーマと3つのシナリオでデジタルトランスフォーメーションを推進

 デジタルトランスフォーメーションのサポートは、同社のもう1つの大きな柱だ。「ある統計によると86%のCEOがデジタルを経営の最重要テーマに掲げている」と平野氏が説明する通り、企業にとってデジタル変革は競争力を高めるための重要な施策に位置付けられている。

 平野氏はデジタルトランスフォーメーションを「顧客とのつながりを深める」「人材・スキル・生産性確保」「業務の最適化」「製品の変革」の4つのテーマで考えるとし、その事例を紹介した。

 顧客体験は、デジタルを使った顧客との新たな関係構築を指す。日本の事例として挙がったのはソフトバンクロボティクスとの連携による小売り向け次世代店舗ソリューションだ。このソリューションはPepper(ロボット)、Azure(クラウド)、Surface Hub(マルチタッチデバイス)、Surface(2-in-1デバイス)を使った仕組みで、店舗でリアルタイムに来店者の行動データや売上データを収集、分析し、コグニティブ技術を使って顧客との接点を増やしていくという。

 人材・スキル・生産性確保の事例として挙がったのは、メガバンクとして初めてパブリッククラウドを全面採用した三井住友銀行。AzureやOffice 365の導入で、いつでもどこでも業務ができる環境を構築している。

 業務の最適化については、HoloLensを採用した日本航空の事例が挙げられた。実機やシミュレーターによる訓練機会の少なさを改善するもので、整備士用の訓練アプリとパイロットの訓練アプリを開発することで業務の効率化を図っている。

 製品の変革ではコネクテッドカーから情報を収集して分析し、その結果を商品開発に反映させているトヨタの例が紹介された。

 デジタルトランスフォーメーションの推進に当たっては、「顧客支援」「エンタープライズサービスを軸にした変革支援」「業種向けソリューション拡充」の3つの取り組みを進める考え。顧客支援は、米国本社のセキュリティ専門部隊である「エンタープライズセキュリティグループ」と連携する日本のビジネスユニットを立ち上げて、企業の技術コンサルやインシデント対応を支援。また、自社のグローバルオペレーションのノウハウをソリューション化して提供する計画だ。

 エンタープライズサービスを軸にした変革支援は、本社との連携による最新技術(コグニティブ、機械学習、HoloLens)の導入と展開を図るとし、コグニティブや機械学習、HoloLensの企業への浸透を目指す。そのための組織として、10人程度のスタッフから成るデジタルアドバイザーを立ち上げたという。

 デジタルトランスフォーメーションの取り組みは、製造/金融/流通・小売/政府・自治体/先端研究/医療の6つの業種に重点を置き、最適化したシナリオを出すことで企業の変革を促す。そのための専門部隊としてクラウドインダストリーソリューションユニットを立ち上げる計画だ。

●パートナーとの協力でデジタルトランスフォーメーションを推進

 平野氏は、その他の2017年の重点分野として「クラウド利用率の増加」「データカルチャーの醸成とデータプラットフォームの拡大」「法人分野でのWindows 10の普及」「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」「クラウド時代のパートナーシップ」を挙げている。

 データ利用の促進については、データの活用が業務効率化やリアルタイムの意志決定、事業の継続性の向上、ビジネスプロセスの改善、業績の可視化につながるなど、ビジネスを動かす原動力になるとし、データカルチャーの醸成に取り組む考え。AzureやSQLサーバを訴求し、ハイブリッドやオンプレミス、クラウドのいずれの環境でも使えることを訴求する。

 こうしたデジタルトランスフォーメーションの取り組みを形にするために重要なのが、パートナーシップ戦略だ。これまでマイクロソフトのパートナーはリセラーが中心だったが、2015年からはパートナーが持つソリューションやアプリケーションをマイクロソフトのクラウドと統合して提供するケースが増えているという。既に同社は、CSP(クラウド ソリューション プロバイダー)プログラムを立ち上げており、2017年度には現在の600社を倍に増やしたいとしている。

 ここでも12月までに新たな専門部隊の立ち上げを予定しており、「クラウドプラットフォーム」「データプラットフォーム」「クラウドアプリケーション」「セキュリティ」の4つのシナリオごとのパートナーの獲得と養成を目指す。

 2017年度の経営方針を聞くと、設立30周年を迎えたマイクロソフトがこれまでとは異なる大きな一歩を踏み出そうとしていることが分かる。新たに立ち上げるユニットはコンサルティング色が強く、顧客の課題に応えるための組織作りがなされようとしていることが分かる。人間で言えば壮年期に入るこの1年、マイクロソフトがどう変わっていくかに注目だ。

最終更新:7月7日(木)8時36分

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