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経産次官レース、本命・嶋田氏が外れたのはなぜ?

ニュースソクラ 7/7(木) 12:00配信

「嶋田憎し」に凝り固まった東電の圧力か

 経済産業省の次期事務次官は間違いないと下馬評だった嶋田隆官房長が6月17日付で同省通商政策局長に異動した。

 横滑りの人事だが、他の1982年入省の同期と横一線に並んだ格好。背景には、「嶋田憎し」に凝り固まった東京電力の政治力があったというのが省内のもっぱらの噂である。

 嶋田氏は東大工学部を卒業して入省。通産相を務めた与謝野馨氏の秘書官に起用されたことをきっかけに気に入られ、与謝野氏が入閣するたびに秘書官の声がかかり、その数、5度に及んだことで知られる。入省同期には、安倍晋三首相の首席秘書官を務める今井尚哉、資源エネルギー庁長官の日下部聡、6月17日で通商政策局長から経産審議官に昇進した片瀬裕文の各氏らがいる。

 このうち今井氏は安倍官邸の「扇の要」役で、事務の官房副長官あたりを狙っているとされ、古巣の同省に戻って事務次官になりたいという気持ちはなさそうだ。経産審議官に就いた片瀬氏も、同ポストが同省にとって、ほぼ上がりのポストなだけに、次官への昇進はなさそう。

 となると次官人事は、嶋田、日下部両氏の争いということになる。あるいは81年入省の菅原郁郎現事務次官から83年入省組に飛ぶこともありうるだろう。

 次官候補の筆頭だった嶋田氏が横滑り人事で足踏みをすることになったのは、彼が手掛けてきた東電問題に関係がある。嶋田氏は原発事故後、仙谷由人元官房長官の要請を受け入れて、新設された原子力損害賠償支援機構の事務局長に就任した。

 同機構は東電の1兆円の増資を引き受ける形で東電の株式を取得し、事実上、東電を国家管理においた。嶋田氏は電力自由化の先兵とすべく東電改革を進めるため、JFEホールディングス出身の数土文夫氏を社外役員に招き(その後に会長)、自身も2012年に取締役として東電に入り込んだ。

 当然、東電の社内は急激な改革には抵抗するわけで、このときに数土・嶋田両氏コンビが思い切ってメスを入れたのが、東電のエリートコースである企画部と総務部の「人事秩序」を破壊したことである。勝俣恒久会長・西澤俊夫社長の嫡流である企画部長経験者である村松衛氏を社長含みで日本原子力発電に動かし、やはり同じ系譜を継ぐ元企画部長の青木信夫氏を福島の復興支援対策に回した。

 代わって起用したのが、勝俣氏と距離をおいていた南直哉元社長に近く、企画部人脈の中では傍流にいた壱岐素巳氏であった。総務部でも同様に那須翔、荒木浩両トップの系譜にある木村俊一氏を飛び越える形で、傍流の木村公一氏を常務執行役に抜擢した。

 よそ者による人事秩序の破壊は、OBを含む東電のエリート層を抵抗勢力へと変じさせた。数土氏のゴルフ場通いが写真週刊誌『フライデー』にスクープされ、さらにはスマートメーター導入をめぐって嶋田氏と業者の癒着を疑わせる怪文書が大量にばらまかれたが、どちらも週刊誌の編集者に人脈があり、怪文書作りもお手の物とする東電総務部系の人間による「犯行」とみられている。

 嶋田氏は、東電の広瀬直己社長が電力自由化や発送電分離などの思い切った改革に消極的とみなし、その背後には東電のドンだった勝俣氏と気脈を通じていることがあると疑っていた。勝俣氏と広瀬氏はともに都立新宿高校の卒業生で、同校の同窓会などの名目でひそかに会うことを繰り返していたらしい。東電改革について嶋田氏と二人三脚で歩んできた数土氏も、勝俣氏と通じているとされる広瀬氏の忠誠心に疑問符を投げかけ、自身に従順な佐野敏弘取締役を新社長に起用し、広瀬氏は副会長に棚上げする考えだった。

 東電では昨年10月、経産省出身の西山圭太取締役が「現執行部は今後、東電の旧経営陣と接触しない」とする緊急動議を提案したが、逆にそのことが「冠婚葬祭を含めてOBと会うことはありうる。いくらなんでも、あまりにもやりすぎ」(東電OB)と受け止められた。菅義偉官房長官自らが、官邸に赴いた数土氏に対して「あえて社長を代える必要があるのか」とたしなめる展開になったといい、今年6月の社長交代は幻に終わった。経産省のとある課長は「広瀬さんは、官邸の長谷川栄一首相補佐官(経産省出身)と親しい。広瀬さんが嶋田さんのやりすぎを長谷川さんに訴えたのではないか」とみる。

 こうして守勢に回った嶋田氏が、官房長から通商政策局長に異動となった。「どうも東電や政治家やいろんなところから嫌われたというのがもっぱらの噂です」と商務情報政策局の現職課長は評する。ところが別の経産省の課長はこう打ち明ける。「嶋田さんは5月ごろから通商政策局の各課の課長を呼んでは所管事項の説明を受けていた。それを皆が不思議がっていたが、人事が発令されて腑に落ちた。菅原次官から自分の人事も告げられていたということではないか」というのである。

 とはいえ、次期次官人事が混沌としてきている面は否めない。経済産業審議官の片瀬氏と通商政策局長の嶋田氏はともに同期。同期で上下のポストに就くのは珍しい。83年入省で次官候補と言われる安藤久佳商務情報政策局長が最近、とみに官邸に足を運び、安倍政権の目玉政策というべき「観光ビジョン」作成に熱心なのも、「花の82年入省組を飛び越えて次官人事が83年入省組に回ってくるかもと思い始めたからでは」(同課長)と省内では噂されている。

会澤 正視 (ジャーナリスト)

最終更新:7/7(木) 12:00

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