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イ草の香り「ほっ」 仮設全3469戸に県産畳・木材 熊本県

日本農業新聞 7月7日(木)12時30分配信

 熊本県が、熊本地震からの農業復興支援の一環として、県内の全仮設住宅に県産の畳表と木材を導入している。木材から畳までを県内産で賄うのは全国初の試み。主産地のJAやつしろは急きょ、管内のイ草農家らと連携し、1万3000畳分を確保した。畳を通して「仮設住宅でリラックスして過ごしてほしい」との思いを込めた。

 完成したばかりの仮設住宅のドアを開けると、新しい畳の香りがふわっと広がった。使うのは“正真正銘”の熊本産イ草。入居前の仮設住宅に県の検査員が立ち入り、県産畳を証明するQRコード(2次元コード)があるか、チェックするほどの念の入れようだ。

 根底にあるのは「熊本で畳は主産業。ここで安価な中国産を使うわけにはいかない」という県の心意気。現在、県は3469戸の応急仮設住宅の建設を県内16市町村で進めているが、全住宅に必ず畳のある和室を設けたのも特徴だ。

・生産大急ぎ 農家、JA

 地震発生後の4月下旬、県からの打診を受けてJAやつしろは畳表の調達に奔走。夏前は農家にとってイ草の収穫がピークを迎える時期だが、管内のイ草農家330戸に頼み込んだ。農家に畳表を織るペースを上げてもらい、優先的に約1万3000畳分の仮設用の畳表を確保した。

 イ草農家、坂井欣一さん(76)は「仮設住宅に入居する人に、香りと耐久性が自慢の熊本畳の良さを感じてもらいたい」と思いを託す。JAい業センターの谷川隆生センター長も「管内には地震で被災したイ草農家もいる。今こそみんなで協力し、農業復興と内需拡大につなげたい」と話す。

・被災者「落ち着く」

 入居者の反応は上々だ。6月中旬、益城町の仮設住宅に入居した福永マサエさん(86)は「足を伸ばすことができるけん、畳は落ち着く」とほっとした表情を見せた。

 仮設住宅に畳を設けることの効用について、北九州市立大学環境生命工学科の森田洋教授は「イ草の香りには精神面で鎮静効果のあるバニリンと、フィトンチッドという機能性成分が含まれている。畳は生活音も吸収するため、静かな環境が確保できる」と指摘する。(木原涼子)

日本農業新聞

最終更新:7月7日(木)12時30分

日本農業新聞