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中国が「孤児」英国を引き込む

ニュースソクラ 7/7(木) 14:00配信

EU離脱でますます近づく英国と中国の距離

 国民投票で、英国の欧州(EU)離脱が決まったことへの動揺が続いている。離脱の手続きなどをめぐり、英国内の混乱は収まらず、英国と他のEU加盟国との対立も深まっている。このため、最近、蜜月関係となっている中国との関係強化がいっそう進むとの見方も出ている。EU離脱は、国際政治の世界にも、大きな変化をもたらす可能性がある。

 英国のEU離脱問題について中国の指導部はこれまで、内政干渉になりかねないとして直接の言及を避けてきた。

 ただ、昨年10月に英国を国賓訪問した習主席は、キャメロン首相に対し、「中国はEUが団結するよう希望しており、英国がEUの重要な一員として、わが国とEUとの関係強化に前向きで建設的な役割を果たすことを期待する」と述べ、英国のEU残留を間接的ながら支持した。

 この訪問では、中国の技術を使った原子力発電所の設計・建設を含む中国側からの400億ポンド(約7兆4800億円)にのぼる巨額投資も実現した。

 英政府は、習主席の訪英期間中、中国国内で起きている人権問題にはほとんど言及せず、バッキンガム宮殿での豪華な晩餐会を開いたほか、キャメロン首相がパブで習主席をもてなす最大限の歓待をした。

 今年5月、英国のエリザベス女王がバッキンガム宮殿で開いた園遊会で、習主席が国賓訪問した際の中国側の振る舞いが「非常に失礼だった」と発言し、大きな話題になった。それだけ英国側は中国側に気を使っていたということだろう。

 この訪問で行った会見で習氏は、「(両国は)グローバルな包括的戦略パートナーシップを構築し、黄金時代を開く」と述べ、「中英新蜜月の始まり」(中国紙)と報道された。中国側としては大成功といってよかった。

 中国にとって英国は特別な存在だ。EU国家の中で初めて、中国がメンツを掛けて主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加入意思を明らかにしてくれた。

 それだけではない。英国は、EUや世界貿易機構(WTO)が、中国を「市場経済国」として承認することも支持している。承認は今年末までに決定するが、実現すればEUは中国からの輸入に対し、反ダンピング(不当廉売)措置を取りにくくなるなど、中国に有利に働くとされる。英国は、EUと中国との投資協定締結も積極的に後押ししてきた。

 これはキャメロン首相と、オズボーン財務相らの保守党政権首脳が、中国の強大な経済力を活用し、大英帝国の復活を夢見たためだ。今回の国民投票で、自由で強い英国を目指し、EU離脱派が勝利した流れと相通じる動きだ。

 中国側もEUの中でも比較的開放されている英国市場を通じて、5億人の市場であるEUへの進出をもくろんでいた。双方の思惑は一致していた。

 英国のEU離脱は、短期的には中国の欧州投資戦略や、中国国内の金融市場に混乱をもたらす可能性がある。しかし、中国の専門家の多くは「長期的には中国に有利に働く」と見ている。

 例えば、王義ウ(木へんに危)中国人民大学国際関係学院外交学教授は、中国メディアに対して、「EUの規制が消えた英国は、中国とよりいっそう友好的な関係を作っていくだろう」と評価した。

 また、別の専門家は「ユーロとポンドが国際市場で弱くなり、中国の元の価値が相対的に高まる」と分析している。

 今回の英国の行動には、移民を敵視する急進的な排外主義がにじむため、EUや米国も反発している。強硬な主張で知られる人民日報系の中国紙、環球時報は社説で「英国は、米国と欧州の間にただよう大西洋の孤児のようだ」と比喩し、「EUに対しても米国に対しても、英国の戦略的主体性は低下する」と予想した。

 しかし、中国は南シナ海への強引な進出をめぐり、国際的な批判を浴びているだけに、この「国際社会の孤児」を、今後自分のサイドに引き込もうとするのは間違いない。次期首相が誰になっても、英国の中国傾斜に歯止めはかからないだろう。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

五味洋治 ジャーナリスト

最終更新:7/7(木) 14:00

ニュースソクラ

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