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オーストリア大統領選、 前代未聞の決選投票やり直し

ニュースソクラ 7/7(木) 18:00配信

EUに打撃となる可能性も

 7月1日、オーストリアの憲法裁判所は5月22日に行われた大統領選挙の決選投票のやり直しを命じた。

 この決定は、約3万票差で自党候補が敗れた自由党が、郵便投票の開票にあたり一部の選挙区で規則通り行われなかったとの理由で選挙結果に異議をとなえ、憲法裁判所に訴えため審査がなされ、その結果出されたものである。

 憲法裁判所は、前回の選挙を無効とした理由として次のことを挙げている。

 関係者を証人喚問した結果、明らかな不正の証拠は見つからなかった。 しかし開票に当たり、立会人による開票チェックが規則通り行われていなかった選挙区が14あった。不正の証拠は見当たらないものの、不正が行われた可能性は排除できない。

 該当選挙区の投票数は77,926票にのぼり、前回の選挙の票差3万票を超えている。77,926票の帰趨如何で選挙結果が逆転することも考えられるので、やり直し選挙とする。

 またオーストリア全体の開票締め切り時刻、午後5時前にすでに投票が終了し開票の終わった開票結果が、一部のマスコミに選挙管理員会によりリークされていた。これは10数年来の慣習だが、重大な選挙手続き違反のため今後禁止する。

 筆者はオーストリアに長く住んでいるが、このような決定は前代未聞である。 ただ裁判所の決定が触れているようなことは、easy-goingな人が多いオーストリアなので起こりうると考える。

 この決定に、現大統領、首相、各党幹部は敬意を払うと速やかに表明した。現大統領は7月8日に任期満了で退任する。そのあと次の大統領が決まるまで、下院の議長団(社民党、国民党、自由党がそれぞれ第1、第2、第3議長を出している)が、大統領職を継承する。やり直し選挙は、夏休み明けの9月後半か10月初めに実施される見込みである。

 不服審査に勝訴した自由党は必ずしも再選挙を歓迎はしていない。再選挙で自由党の候補が再び敗北した場合、自由党にとって手痛い打撃となるからである。ただ連邦ならびに各州の議会で議席数の多い同党は、対立する緑の党より政党交付金が多く、選挙戦を戦う軍資金は豊富である。

 緑の党は資金を前回の選挙でほぼ使い切っており、選挙資金の寄付を呼びかけるキャンペーンを実施する予定である。

 Brexitの直後だけに、Oexit(オーストリアのEU脱退)が、選挙戦の最大の課題なると緑の党は示唆している。これに対し自由党はいきなりOexitを国民に問うことはしないが、将来トルコのEU加盟などの問題が具体化した時などには国民投票を行うとの考えを表明している。

 いずれにしろBrexitの問題は、有権者心理に大きな影響をもたらすのは必須で、どちらに有利に働くかは最後まで予断を許さない。

 Brexit後フランスの国民戦線など反EU勢力の気勢は上がっている。オーストリアのやり直し選挙で自由党が勝利を収めた場合、英国に続きEUの中核をなすドイツの姉妹国で反EUの大統領が誕生することになり、EU全体に計り知れない影響を与えることは間違いない。

 要注目である。

■茶野道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験28年。英国、スペインにも勤務。

最終更新:7/7(木) 18:24

ニュースソクラ

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