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トヨタVS. Google 自動運転の主導権を握るのは?

ITmedia ビジネスオンライン 7月8日(金)8時25分配信

 2010年、それまで自動車業界とは何の関連もなかったGoogleが自動運転車の研究を行っている――と表明した。それをきっかけに昨今の自動運転ブームが始まったことを前回の記事で伝えた。そのとき世界の自動車メーカー各社は自動化を肯定するか否か、対応を迫られた。

【Google Self-Driving Car】

 トヨタ自動車は当初、慎重な姿勢を見せていた。2014年9月に行った自動運転技術の開発状況の公表では、「高度運転支援システム」と称しており、障害物などを検知して減速、または停止などを行うという内容は、他メーカーでも実用化されている技術だった。このときトヨタは、高度運転支援システムにおいても“ドライバーが常に運転の主役”であるべきという考えを表明してもいる。

 ところがそのトヨタが昨年10月、態度を一変させる。首都高速道路で自動運転技術を報道陣へ公開したからだ。披露された技術は他社に遜色ないレベルであり、水面下で開発を進めていたことを示唆した。

 トヨタは同年春、今後10年間の五輪・パラリンピックにおけるグローバルスポンサー契約を結んでいる。これにはもちろん2020年の東京五輪も含まれる。一方、安倍晋三首相は同年10月、東京五輪・パラリンピックまでに自動運転の実用化を実現したいと表明した。こうした背景が、トヨタの体制転換につながったのではないかと想像している。

 その後のトヨタの行動は早かった。昨年11月には米国に、人工知能技術の研究・開発を行う新会社、TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)を設立すると発表し、今年1月からカリフォルニア州パロ・アルトとマサチューセッツ州ケンブリッジの2拠点で始動した。この2拠点はスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学に近い。トヨタはTRI設立に先立ち、両大学の研究所と人工知能に関する研究で連携していくとしている。

 TRIは5年間で約10億ドルの予算を投入し、安全性向上、幅広い層への運転機会の提供、屋内用ロボット開発、人工知能や機械学習の研究加速を目指すという。個々の項目を深読みすれば、自動運転が目的の1つにあることは明白だ。現にTRIは今年4月、ミシガン州アナーバーに3番目の拠点を設立すると発表したが、こちらは自動運転の研究に積極的なミシガン大学の近くに位置している。

 同じ4月、トヨタは社内カンパニー制を導入し、短中期の商品計画や製品企画を担当させるという組織改革を実施した。ここには「先進技術開発カンパニー」や「コネクティッドカンパニー」といった、次世代型技術を担当するカンパニーもある。

 また本社には「未来創生センター」を新設し、外部の研究機関などの力を取り込みながら、将来の技術やビジネスを長期視点、社会視点で創造していく役割を持たせている。

 こうした社内の体制から見ても、自動運転などの次世代型技術を重視していることが分かる。



●Googleが目指す自動運転車とは

 トヨタは今年5月、スマートフォンを使った配車サービス、ライドシェア最大手のUberと提携し、グループ会社から出資を行うと発表した。

 協業の内容は、ライドシェア用車両のリース。ただ、同年1月に米国の自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)が、“自動運転ライドシェア”を最終目標としてUberのライバルであるLyftと資本提携したように、トヨタが同様の考えを持っていることも十分に考えられる。

 一方のGoogleには、Google Mapsの地図データがあった。さらに近年は、ロボットベンチャーのSchaft(シャフト)や、米国のBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)など、ロボット研究開発企業の買収を進めてきており、この2つの技術を組み合わせれば自動運転ができると考え、自動車業界に参入したようだ。

 当初は既存の自動車を使い、同社が開発した自動運転用機器を搭載して研究開発を行っていた。トヨタのプリウスやレクサスRXなどが多く用いられたが、これらはGoogleが独自に購入したものであり、トヨタが提供したものではない。

 続いてGoogleは2014年5月、独自開発の自動運転車、Google Self-Driving Carを公開した。卵型の車体は既存の自動車と比べると全長が極端に短く、車体の上(ルーフ上)に自動運転用のセンサーが装着されていた。2人乗りの車内にはステアリングやペダルはない。つまり手動と自動の切り替えは想定していない。

 このGoogle Self-Driving Carは、翌年にはデザインを洗練させた改良版も公開されている。公開の場としてモーターショーではなくYouTubeを選んだのは同社らしい手法だが、そこでは目の不自由な人やお年寄り、子供など、既存のクルマを運転できない人たちの登場が多いことに気が付く。

 「既存の自動車利用者の都市間移動」が前提のトヨタに対して、Googleは「移動困難者や交通弱者を含めた都市生活者の移動」に主眼に置いているのだ。



●どちらが主導権を握るのか

 今年5月、Googleは欧州の自動車メーカー、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携を結んだ。グーグルが自動運転車の開発で自動車メーカーと提携するのは初めてである。グーグルは以前から、自動運転車を自社生産するつもりはないと公言しており、頭脳がグーグル、車体がFCAという分業で量産に発展する可能性がある。

 また、GoogleがFCAと組んだのは、同社にとってノウハウの乏しい「クルマ作りの技術」が自動運転車の開発を進める上で大事だと認識したからだろう。一方のトヨタも米大学とのパイプを築くことで、やはり経験の浅い「IT技術」を身に付けようとしている。

 お互いがこの時期に、ストレートに“相手側”の業界と手を結んだのは、自動運転社会が間近に迫っているという危機感の現れかもしれない。

 前回の記事で書いたように、自動運転のハードウェアは完成形に近い。だからこそ、今後はどこを走れるかが重要になってくる。

 Googleは公道で自動運転の実験走行を認可してもらうべく、まずネバダ州と交渉。その結果、同州は2012年に、米国で初めて自動運転走行を可能にする法律を施行した。Googleは他の州でも交渉を重ね、現在はフロリダ州やカリフォルニア州でも自動運転走行が可能になっている。

 こうしてGoogleは、国や州政府の後押しも受けて、自動運転の主導権も握ろうとしている。日本も首相が「2020年までに自動運転を実用化する」と宣言したのだから、世界で最初に一般人が自動運転で移動できる国を目指してほしい。

 自動車産業は日本経済を支えていると言っても過言ではない。その意味で、この異業種決戦は国の戦いでもあるのだ。

(森口 将之)

最終更新:7月8日(金)8時25分

ITmedia ビジネスオンライン

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