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社説[米「地位協定」投稿]歪曲し筋違いの主張だ

沖縄タイムス 7/9(土) 5:00配信

 米軍人・軍属に特権的な地位を与えている日米地位協定に関連し、在日米軍司令部(東京)は7日、「地位協定は決して訴追に対する制約ではない」などとする見解をフェイスブックに投稿した。
 投稿には「日本で犯罪を犯した軍人・軍属に対して日本が司法権を有し、日本の法律の下で処罰することができると規定している」「容疑者が日本の警察に逮捕された場合、日本の当局が捜査を行い日本の法律の下で訴追するか否かを決定する」などとも書き込んでいる。
 現行の地位協定で何の支障もないような書きぶりである。「不都合な真実」には触れずに事実を歪(わい)曲(きょく)、意図的に問題を避けているというほかない。
 刑事裁判権については地位協定17条で、米軍人・軍属が起こした犯罪は「公務中」であれば第1次裁判権が米側にあり、「公務外」ならば日本側にあると規定している。
 だが公務外であっても米側が先に身柄を確保すれば、原則として、起訴されるまで日本側に引き渡されない。
 公務中かどうかの認定についても、米軍の部隊指揮官が公務証明書を出せば、日本側は十分な捜査ができないまま米側が言う通り公務中とせざるを得ず、第1次裁判権を放棄しなければならない。
 地位協定に関しては、日本に第1次裁判権があっても日本にとって著しく重要と考えられる犯罪のみ裁判権を行使する、との密約も明らかになっている。これらが訴追に対する「制約」でなくて、いったい何なのだろうか。
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 1995年の米兵による暴行事件を思い起こしてほしい。県警は3容疑者を逮捕するため身柄引き渡しを求めたが、米側は17条を盾に応じず、県民の強い反発を招いた。
 日米両政府は運用改善で対応し、その後「殺人と強姦(ごうかん)」について起訴前の身柄引き渡しに「好意的考慮を払う」ことで合意した。
 2004年には日米合同委員会で「日本政府が重大な関心を持ついかなる犯罪も排除されない」と殺人と強姦以外の犯罪への適用も確認したが、「好意的考慮」を払うかは米側の裁量次第である。
 宜野湾市内で03年に起きた強盗致傷事件では米側に拘束された米兵3人が基地内刑務所に収容されず、口裏合わせをしていたことを裁判所が認定している。米軍キャンプ瑞慶覧で06年に発生したタクシー強盗事件では米側に身柄を拘束された2米兵の供述から共犯の別の米兵が判明したが、帰国した後だった。
 地位協定が壁となって日本側の捜査に支障を来しているのは明らかだ。
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 在日米軍司令部は慰霊の日の6月23日から「今週の事実」と題してフェイスブックへの投稿を始めている。前回は沖縄に米軍専用施設が集中しているのは、真実ではなく、「実際には39%が沖縄に存在している」と矮(わい)小(しょう)化。批判を浴びたばかりである。
 一連の投稿の意図は何か。米軍基地の過重負担に苦しむ県民に向き合う米軍の姿勢を疑わせるものであり、沖縄の反発を強めるだけである。

最終更新:7/9(土) 19:22

沖縄タイムス