ここから本文です

仕事は“コピー取り”でも、なぜあの人は「次のチャンス」を手にするのか

ITmedia ビジネスオンライン 7月8日(金)8時20分配信

 たくさんのビジネスパーソンに取材して話を聞くという仕事柄もあり、いろんな声に日々、接しているが、よく聞こえてくる声にこんなものがある。

【その他の画像を見る】

 「仕事のやり直し、差し戻しが多い」

 上司に仕事を命じられ、でき上がって持っていくが、なかなかすぐにはOKが出ない。何度もやり直しをすることになる。

 チームで割り振られた仕事を進めていると、「いやいやこんなじゃなくてさ」と厳しい指摘を受けてしまう。

 クライアントから提案を求められ、持ち帰って社内で協議して提案書にまとめていったら、「求めていたのは、こういうものじゃない」と差し戻されてしまった……。

 私は幸運なことに、いわゆる成功者と言われる人たちへの取材も、たくさんしてきた。起業家、大学教授、科学者、経営コンサルタント、建築家……。経営者はじめ、企業の上層部に出世していった人たちも少なくない。

 では、彼らはどんな仕事をすることで、そうした悩みをクリアにしてきたのか。私自身の経験も交えながら、その方法論をまとめたのが、書籍『やり直し・差し戻しをなくす できる人の準備力』(すばる舎)である。

 どうして、やり直しや差し戻しになってしまうのか。例えば、こんなことはよく起こらないだろうか。てっきり課長向けの書類だと思っていたら、実は部長に向けた書類だった、というケース。

 「こんな書き方をしていたら、部長には伝わらないじゃないか」と言われて差し戻しになってしまった。何に使われるのか、何のための仕事なのか、「目的」をきちんと確認できていなかったから、こういうことが起きてしまったのだ。

●仕事のやり戻しをなくすための第一ステップ

 仕事のやり戻し、差し戻しをなくすための第一ステップは、仕事の「目的」をしっかり確認することである。何のために、この仕事はあるのか。最終的なゴールは何なのか。これを怠ると、ピント外れな情報素材を集めてしまったり、役に立てない書類を作ってしまったりしかねない。

 そんなことは当たり前じゃないか、と思われるかもしれないが、これが意外にできていないのである。仕事を依頼する側も、抜け落ちてしまうことが多い。きっと分かっているに違いない、と思い込んで発注してしまうのだろう。

 実際、資料の作成をするとき、その資料は何に使うのか、目的を必ず確認しているだろうか。部内の会議で使うのか、データ保存用なのか、経営会議に出されるのか。

 意思決定の判断材料にされるのか、企画の参考になるのか、クライアントへの提出用資料として使うのか。一口に資料と行っても目的はさまざまなのだ。

 目的によって、同じ内容でも体裁や作り方が変わってくる。単純に社内向けとクライアント向けでは変わってくるし、読んでもらうためのものなのか、説得するためのものなのか、保存していくためのものなのか、でも作り方は変わる。

 目的をしっかり聞いておかなければ、依頼者の求めるものは作れない。すべての仕事には目的があるのだ。目的があるから、仕事は発生するのである。

 そして目的を理解していれば、仕事のやる気も俄然、変わってくる。目的が分からない仕事は、単なる作業になるのだ。

●嫌々やっている人と、楽しんでいる人

 外国で語られている有名な話がある。

 道を歩いていると、職人がつまらなそうにレンガを積み上げていた。1つ、また1つと、けだるそうにセメントをつけてレンガを置いていく。

 「何をしているのか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「レンガを積み上げているんですよ」

 少し離れた場所に目を向けると、同じ仕事をしているのとは思えないほど、いきいきしながらレンガを積み上げている職人がいた。

 重いレンガも楽しそうに運び、上に載せていく。「何をしているのか」と同じ質問をしてみると、こんな答えが返ってきた。

 「教会を造っているんです」

 目的を理解して仕事をするということの意味を、端的に表した逸話だ。外から見れば、やっていることは同じように見えても、嫌々やっている人と、楽しんでいる人がいる。目的が分かっているだけで、仕事は違うものになるのである。やる気だって、大きく変わっていくのだ。

 そして目的が分かって仕事をしているかどうかは、上司や先輩もしっかり見ていたりする。仕事のアウトプットが変わっていくからだ。

 ある大手IT企業を起業した経営者は、キャリアを大手銀行からスタートさせていた。配属が決まり、最初に先輩から命じられた仕事はコピー取りだった。見れば、フロアのあちこちで、同期の社員が同じようにコピーを頼まれている。

 みんな「なんだよ、コピー取りなんて」という表情である。コピー取りではなく、バリバリ仕事がしたいと思って銀行にやってきているのだ。「こんな作業のような仕事なんて」というわけである。

 同期の誰もがふてくされている中、後に日本有数のIT企業を立ち上げる彼は、仕事を楽しんでいた。なぜか。コピーを頼まれた先輩に、「何のためのコピーなのか」をいつも聞いていたからである。

 コピーの目的を聞くことで、それに最も合致させるコピーを取ることを心がけていた。両面コピーがいいか、縮小がいいか、ステープラーで綴じるのか……。丁寧さが重視なのか、スピードが重視なのか。

●コミュニケーションで重要なのは「聞く力」

 仕事の依頼者である先輩に聞くことで、自分なりの工夫を生み出していたのだ。そんな彼を先輩たちはよく見ていた。コピー機に並ぶ同期から真っ先に抜け出したのが彼だった。「こいつはちゃんと聞いて、自分で判断できる」という評価を受けたからだろう。信頼を得て、次のチャンスを手に入れることができたのである。

 ちゃんと上司や先輩が、目的を教えてくれなかったから、は言い訳にはならない。目的を理解する、とはつまり、仕事の依頼者にその仕事の意味をしっかり聞くことができるかどうか、が重要になる。

 コミュニケーション力というと、しゃべる力や伝える力が浮かぶが、実はインタビューを仕事にしている私は、むしろ重要なのは「聞く力」なのではないかと常々、思っている。実際、聞くことによってしか、相手が求めていることは分からないのである。

 聞くということが、いかに大事か。こんなエピソードを取材で聞いた。ある人はテニスが趣味でテニスコートの付いたリゾート施設の会員権に興味を持っていた。そこで、全国にリゾート施設を持つ会社に連絡を取り、営業マンに来てもらうことにした。

 営業マンはやって来るなり、自分たちのリゾート施設がいかに素晴らしいか、全国に展開していていろんなニーズに応えることができ、ゴルフやスキーなど、さまざまなスポーツも楽しめることを力説した。

 しかし、ある人が求めていたのは、テニスの楽しめる施設だったのである。全国展開していようが、スキーが楽しめようが、そんなことは興味の対象ではなかった。

 ところが営業マンは一言も「あなたが求めておられる施設はどのようなところでしょうか?」とは聞いてくれなかったのだ。

 結局、さっさと営業マンにお引き取り願い、そのリゾート施設との関わりは断ってしまった。営業マンは大きなチャンスを失ってしまった。

●仕事は「聞くこと」から始まる

 私の取材経験でも、優れた営業マンは聞く力が優れている印象が強い。饒舌(じょうぜつ)な人よりも、明らかに聞き上手な人が多かった。相手が求めていることを聞き続け、相手が欲しいものを提案すれば、売れる確率は間違いなく高まる。なぜなら、相手が欲しいものなのだから。そして、信頼も得られる。

 これは、どんな仕事も同じだと思う。しっかり聞くことである。仕事の依頼者に、「何のためにこの仕事はあるのか」「何のために自分は呼ばれたのか」、目的をしっかり確かめることだ。もし、目的がぼんやりしているなら、一緒に考え定めていく。

 ただ言われたことをやっているだけでは、得られることはたかがしれている。自ら身を乗り出し、聞く意識を持つことだ。

 仕事の目的は何なのかをしっかり尋ねる。その意識を持っていれば、次回以降、解説するターゲットやアウトプットイメージなども自然に聞けるようになる。

 仕事は、聞くことから始まるのである。

(上阪徹)

最終更新:7月8日(金)8時20分

ITmedia ビジネスオンライン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

暗闇で光るサメと驚くほど美しい海洋生物たち
波のほんの数メートル下で、海洋生物学者であり、ナショナルジオグラフィックのエクスプローラーかつ写真家のデビッド・グルーバーは、素晴らしいものを発見しました。海の薄暗い青い光の中で様々な色の蛍光を発する驚くべき新しい海洋生物たちです。彼と一緒に生体蛍光のサメ、タツノオトシゴ、ウミガメ、その他の海洋生物を探し求める旅に出て、この光る生物たちがどのように私たちの脳への新たな理解を明らかにしたのかを探りましょう。[new]